『くるみ割り人形』新国立劇場バレエ団2017/2018シーズン 新制作(2)

2017年、新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』の新制作に込められた思いについて考えてみたいと思います。

◆新制作に込められた思い

新制作に込められた思いについて考えるにあたり、①全国公演、②新国立劇場バレエ団ダンサーへの期待、③ダンサーの卵たち、という3つのキーワード取り上げてみました。

①全国公演

新国のレパートリーにある『くるみ割り人形』は今回の新制作を含めると3作品あります。
小野絢子さんは3つのバージョンに関わったと言っています。

牧阿佐美版が2009年の初演以来、上演されてきましたが、まだ10年も経っていません。
個人的には非常に完成度の高い作品だと思っております。
それは、全体の構成、踊り、舞台装置、衣装のすべてにおいてです。
舞台装置、衣装の色合いがとても気に入っています。

「10年と経っていないのに、なぜ新しく制作することになったのか」この新制作のニュースを初めて聞いた時の私の感想です。

納得のいく説明は、2017/2018シーズン演目説明会における大原永子監督の口から聞くことができました。

ご存知の通り、新国は全国公演といって東京以外での公演も積極的に行っています。
しかしながら、地方公演では牧阿佐美版『くるみ割り人形』を上演したことがありません。
その理由は単純明快なものです。
牧阿佐美版『くるみ割り人形』は新国立劇場オペラパレスの大きな舞台に合わせて作られたため、そこまでの規模の舞台装置を持っていける劇場は、そうそうないからなのです。
全国公演の際に要望の多いであろう『くるみ』を持っていけないことに対して、劇場側としては、何とかしたいという思いがあったのでしょう。

かくして、新制作された舞台は新国立劇場オペラハウスでの公演が終わった翌週と翌々週には、はれて全国公演を行います。

日時 2017年11月12日(日) 14:00開演(13:15開場)
会場 サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール(長野県)
クララ:木村優里、王子:渡邊峻郁

詳細 → こちら

日時 2017年11月19日(日) 14:00開演(13:15開場)
会場 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール(滋賀県)
クララ:池田理沙子、王子:奥村康祐
詳細 → こちら

ただし、全国公演はオリジナルとは異なることもあるようです。
劇場の大きさや状況に合わせて別プランの装置や演出を考えているそうです。

全国公演の際には、新制作版を持っていくことになりますが、オペラパレスでは、牧阿佐美版も上演して欲しいと思っているのは私だけではないはずです。

②新国立劇場バレエ団ダンサーへの期待

主役公開リハーサルとインタビューの様子が公開されています。

新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」公開リハーサル&インタビュー

そのインタビューでは、奥村康祐さんが「リハーサルのたびに腕を取り換えたいと思うくらいハード」とコメントし、福岡雄大さんは「ダンサー側からしたら大変」とコメントし、米沢唯さんに至っては「あまりに難しい振りで、これができるのだろうかと何度も不安になった」とコメントしています。

これらのコメントからも分かるように、ウエイン・イーグリングさんの振付は非常にハードなものとなったようです。

イーグリングさんが最後に踊った王子役は、「最後のパ・ド・ドゥだけだった」とそうですが、今回の新制作では、「男性主演ダンサーのための大役」にしたそうです。

クララも王子も非常に難しい役となっているようですが、それはイーグリングさんが新国のダンサーの実力がそれに相応しいと認め、さらに成長させたい、という思いがあるようです。

また、コール・ド・バレエのレベルの高さ、統一感も認めており、「雪の精の場面」も満足のいく出来に仕上がっているようです。

③ダンサーの卵たち

新制作では、子どもをたくさん登場させるようです。
イーグリングさんは、子どもを舞台に登場させるのが好きだと言います。
それは、舞台を観た同世代の子どもが自分も踊ってみたいとバレエを習い始めることを期待してのことだそうです。

私は子どもを舞台に上げることについて、あまり好きではありませんでした。
それは、やはりプロの踊りを楽しみにしているからです。
しかし、イーグリングさんの考えには私も共感します。
このサイトを立ち上げようと思った理由のひとつは、バレエ界を盛り上げたいという思いだからです。

イーグリングさんの子どもの起用法に期待しながら新制作の開幕を待ちたいと思います。