【鑑賞レポ】NHKバレエの饗宴2018

2018年4月7日(土)、東京渋谷区のNHKホールにおいて『NHKバレエの饗宴2018』が開催されました。

日本を代表するバレエ団、団体等が同じ舞台でバレエ、コンテンポラリーダンスを披露しました。

この様子をレポートしたいと思います。

1.NHKバレエの饗宴

「NHKバレエの饗宴」は、2012年に最初の公演が開催され、今回が7回目の開催です。

日本を代表するバレエ団、バレエダンサー、コンテンポラリーダンサー等が団体等の枠を超えて同じ舞台に立つ夢の企画です。

例年、バレエが3団体前後、世界的に活躍するバレエダンサー、コンテンポラリーユニット等でプログラムが構成されています。

NHKバレエの饗宴2018 鑑賞の感想

◆ 新国立劇場バレエ団

最初の演目は、新国立劇場バレエ団による「くるみ割り人形」(第2幕)でした。

新国立劇場団は、2017/2018シーズンが開場20周年記念の特別なシーズンです。

特別なシーズンは新制作された『くるみ割り人形』で幕を開けました。

振付は、元英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパルのウエイン・イーグリング氏です。

NHKバレエの饗宴に足を運んだ観客の皆さまの中でも、このプロダクションを初めて観る方は少なくなかったのではないでしょうか。

見慣れた踊りが、かなり印象の異なる振付になっている場面もあることから、観客にどのように受け入れられるのか、少し興味深くもありましたが、盛大な拍手からは好意的に受け止められていたようです。

例えば、通常、「葦笛の踊り」は3人の実力ある女性ダンサーが踊りますが、イーグリング版では「蝶々」とタイトルと設定が変わり、女性ダンサーのソロがメインとなります。

今回は池田理沙子さんが、さらりと軽やかに踊られていましたが、この踊りは非常に難しいものだと思います。

一見、簡単に踊られているように見えますが、それゆえ池田さんの力量を物語っているようでした。

クララ/こんぺい糖の精を踊られた木村優里さんも、くるみ割り人形/王子を踊られた井澤駿さんも、もともとテクニックには定評がありますが、この日の安定感は抜群でした。

新国での舞台を数多く踏んだことにより、演技面でも舞台上での余裕すら感じるメンタリティーも大きく成長されたのではないでしょうか。

その他、スペイン、アラビア、中国、ロシア、花のワルツ等、もったいないくらいの踊りの連続でした。

最初の演目で『くるみ割り人形』第2幕を50分間も観ることができる贅沢な時間でした。

◆ 平山素子、小尻健太、鈴木竜、堀田千晶

最初の休憩をはさみ、コンテンポラリー作品の「Chimaira/キマイラ」です。

これは平山素子さん振付による新制作です。

◆ 吉田都&マティアス・ディングマン&スターダンサーズ・バレエ団

コンテンポラリー作品に続いては、吉田都&マティアス・ディングマン&スターダンサーズ・バレエ団による「Flowers of the Forest」です。

これは、現代英国を代表する振付家デヴィッド・ビントレー氏振付による作品で、使用されている音楽は、マルコム・アーノルドとベンジャミン・ブリテンによるものでした。

まず、4つのスコットランド舞曲を渡辺恭子さん、池田武志さん、荒蒔礼子さん、加藤大和さん、塩谷綾菜さん、髙谷遼さんが踊りました。

印象的だったのは池田さんのダイナミックで正確な踊りでした。

池田さんはスターダンサーズ・バレエ団入団後、様々な作品で主要な役を踊り、生き生きと活躍されています。

また、髙谷さんの踊りは目が覚めるような切れ味抜群で興奮しました。

『白鳥の湖』の道化や『ラ・バヤデール』のブロンズアイドルのように高度なテクニックが求められ、場をさらうような役柄がぴったりではないかと思いました。

今後、さらなる活躍が期待されるダンサーです。

その後、満を持して吉田都さんが登場します。

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルであるマティアス・ディングマンとの素晴らしい踊りでしたが、今一つ見せ場にかける印象を受けました。

初めて観る演目であり、音楽は馴染みがなく、構成も理解していなかったため、個人的には消化し切れない面があったことがそう感じた理由かもしれません。

個人的には吉田都さんの踊りを生で観るのが初めてでしたので、とても楽しみにしておりましたが、正直、吉田さんの踊りを堪能したとは言えませんでした。

次回は、吉田さんの踊りを堪能できる演目を選びたいと思いました。

◆ 東京バレエ団

最後を締めくくるのは、東京バレエ団の「ラ・バヤデール」から「影の王国」です。

印象的な音楽に乗せ、女性ダンサー達がアラベスクを繰り返しながらつづら折りに更新する様子は私の最も好きなシーンの一つですが、この日も素晴らしい出来栄えでした。

コールド・バレエの力量、バレエ団の資質が問われるところです。

後ろの席で鑑賞されていた方は、いたく感動している様子でした。

ニキヤは上野水香さんが、ソロルは柄本弾さんが踊られましたが、東京バレエ団を代表する二人の踊りは当然のことながら素晴らしいものでしたが、ヴァリエーションを踊られた中川美雪さん、三雲友里加さん、二瓶加奈子さんの踊りも素晴らしく、思わず見入ってしまう出来栄えでした。

当日は疲労もあり頭が少し痛かったのですが、『ラ・バヤデール』の音楽と踊りにより、いつのまにか頭痛が治っていました。

以前、ベルリン国立の『ラ・バヤデール』を観たときにも同じことがありましたし、他のバレエ団の『ラ・バヤデール』もあったような気がします。

『ラ・バヤデール』は頭痛に効くのでしょうか?!

◆ フィナーレ

フィナーレは、出演団体ごとにまた、その中でも主要なキャストのダンサーは踊りを披露しながら舞台に登場しました。

そのなかで一際大きな拍手を受けられていたのは吉田都さんです。

秘密兵器の登場には、なんだか反則ではないかと感じずにはいられません。

それぞれの演目で主役を踊られた方以外にも、普通であれば主役を踊られるような方が何人もおられ、なんと贅沢な空間なんだろうと感心します。

NHKバレエの饗宴2018 公演概要

日時 2018年4月7日(土)15:00開演

会場 NHKホール

◆ 新国立劇場バレエ団
「くるみ割り人形」第2幕から〈50分〉
クララ/こんぺい糖の精:木村優里
くるみ割り人形/王子:井澤駿
ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫
ねずみの王様:奥村康祐

(休憩20分)

◆ 平山素子、小尻健太、鈴木竜、堀田千晶
「Chimaira/キマイラ(新制作)」〈20分〉
振付・演出:平山素子

(舞台転換)

◆ 吉田都&マティアス・ディングマン&スターダンサーズ・バレエ団
「Flowers of the Forest」〈30分〉
4つのスコットランド舞曲:渡辺恭子、池田武志、荒蒔礼子、加藤大和、塩谷綾菜、髙谷遼
スコットランドのバラード:吉田都、マティアス・ディングマン

(休憩15分)

◆ 東京バレエ団
「ラ・バヤデール」から「影の王国」〈40分〉
ニキヤ:上野水香
ソロル:柄本弾
ヴァリエーション1:中川美雪
ヴァリエーション2:三雲友里加
ヴァリエーション3:二瓶加奈子

◆ フィナーレ 出演者全員

テレビ放送

『NHKバレエの饗宴2018』のテレビ放送予定が決まっています。

2018年5月20日(日)21:00~23:30NHK Eテレ『クラシック音楽館』で放送予定です。

これは、見逃せません!