【鑑賞レポ】バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)(その1)

2018年7月28日(土)、新国立劇場 オペラパレスにおいて『バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)』が開催されました。

海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎え、普段、日本の舞台で観る機会の少ないダンサー達が共演し、夢の舞台を展開しました。

『バレエ・アステラス2018』の感想を一言で表現すれば「存在感と表現力」。

公演の様子と感想を2回に分けてお届けしたいと思います。

『バレエ・アステラス2018 ~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて~』について

バレエアステラスは、文化庁と新国立劇場が主催し、新国立劇場が制作する舞台です。

「新国立劇場バレエ団」ではなく、「新国立劇場バレエ研修所」の制作です。

2009年から開催され、今年で9回目と順調に開催を積み重ねてきました。

会場で配布されていた無料パンフレットには、「世界各国のカンパニーで活躍する若手日本人ダンサーを応援したいという強い思いから開催されてきた」との説明があります。

出演者は公募により選ばれますが、その決定にはバレエ・アステラス委員による選考があります。

委員には、安達悦子(東京シティ・バレエ団理事長・芸術監督)、岡本佳津子(井上バレエ団理事長)、小山久美(スターダンサーズ・バレエ団代表・総監督)、小林紀子(小林紀子バレエ・シアター芸術監督)、牧 阿佐美(新国立劇場バレエ研修所長)、三谷恭三(牧阿佐美バレヱ団総監督)といった日本を代表するバレエ団の代表者などが名を連ねます。

公募により選ばれたダンサーのほかに、世界の一流バレエ学校の生徒も招待されますが、今年は、バレエ発祥の国イタリアから「ミラノ・スカラ座・バレエ・アカデミー」が出演されました。

もちろん、新国立劇場バレエ研修所の研修生も出演します。

公募以外では、ゲストダンサーとして新国立劇場バレエ団からは米沢唯さんと奥村康祐さんのペアが出演しました。

さらに、一番の目玉は、特別ゲストとして招待された英国ロイヤル・バレエのプリンシパルである高田茜さんと平野亮一さんです。

トリは高田/平野ペアが務め、会場は興奮に包まれました!

バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)の感想(第1部)

新国でもおなじみのポール・マーフィー氏指揮による演奏が始まり、開幕するとそこにはスクリーンが登場し、出演者の写真と演目が映し出されました。

昨年のアステラスでは、このような演出はなかったような気がしますが、記憶が定かでありません。

いずれにせよ、初めて拝見するダンサーが多いので、親切な取り組みだと感じました。

そして、最初の演目は、我らが新国立劇場バレエ研修所による『ケークウォーク』です。

真っ赤な衣装で踊る女性ダンサーの表情とフェミニンな雰囲気が幕開きを華やかに飾りました。

続いて、ノーザン・バレエのファースト・ソリスト 宮田彩未さんが、同じくノーザン・バレエのファースト・ソリストのジョセフ・テイラーさんをパートナーにD.ニクソン振り付けの『夏の夜の夢』第2幕よりパ・ド・ドゥを披露しました。

過去のアステラスで、パートナーとして出演された外人ダンサーに残念なダンサーが少なからずいたのが記憶に残っておりますが、ジョセフ・テイラーさんは見事に鍛え上げられた身体の持ち主で踊りも素晴らしいダンサーでした。

オベロンとタイターニアが和解する場面をダイナミックに踊り、今年の出演者に対する期待が一気に高まりました。

続いて、ジュネーヴ大劇場バレエ団プリンシパルの相澤優美さんが、ジュネーヴ・ダンス・イベントの監督兼ダンサーであるヴラディミール・イポリトフさんとペアを組み、サシャ・リヴァ振付によるコンテンポラリー作品『End of Eternity』を披露しました。

相澤さんは、ドイツのハンブルク・バレエ学校を卒業後、ドイツのドレスデン国立歌劇場バレエ団をはじめ欧州のバレエ団を中心に活躍され、現在はネオクラシック、コンテンポラリー作品を中心に踊っているそうです。

抜群の身体能力を生かし、日本ではあまり馴染みのないコンテンポラリーの世界を精力的に紹介されました。

続いては、バーミンガム・ロイヤル・バレエのファースト・ソリストである水谷実喜さんが、バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルであるツーチャオ・チョウさんと組んで『サタネラ』のパ・ド・ドゥを踊りました。

ツーチャオ・チョウさんはオールトラリア・バレエスクールを首席で卒業されただけあり、実力のあるダンサーでした。

グラン・パ・ド・シャやグラン・ジュテなどは180度を超える開脚です。( ゚Д゚)

マリウス・プティパの作品だそうですが、初めて観た演目でした。

プティパらしい作品でしたが、水谷実喜さんとツーチャオ・チョウさんは、盛り上がる場面をよく心得て端正に踊られました。

第1部のを締めくくったのは、マヤラ・マグリさんとアクリ瑠嘉さんの英国ロイヤル・バレエのソリストのペアによる『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥです。

幕が開くと舞台上には簡素なバルコニーのセットが用意されており、そこにはマヤラ・マグリさんが物憂げな表情で佇んでいました。

その佇まいだけで観客の意識をぐっと引き込む存在感がありました。

そこにプロコフィエフの感情を大きく揺さぶる音楽が流れてくると、観客は『ロメオとジュリエット』の世界にどっぷりと浸かりました。

マヤラ・マグリさんは、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ出身で2011年のローザンヌ国際バレエコンクールのグランプリおよびオーディエンス賞の受賞者で、同年のユース・アメリカ・グランプリではシニアの部でグランプリを受賞し、ロイヤル・バレエスクールに入学した経歴の持ち主でした。

ラテン系であれば、勝手な想像では激しい感情表出をされることを連想しますが、マヤラ・マグリさんのジュリエットは、抑えられた感情表現で観客の意識を引き付けているようでした。

アクリ瑠嘉さんのロメオの感情表出は溢れんばかりに感情が迸っていました。

この公演の趣旨は、世界で活躍する若手日本人ダンサーを応援することですが、アクリ瑠嘉さんと同じくらいマヤラ・マグリさんを応援したくなりました。(´▽`)

12年に英国ロイヤル・バレエに入団し、着実にステップアップしているマヤラ・マグリさんですが、経歴に恥じぬ実力の持ち主でした。

バレエの技術的な面はすでにしっかりと固められ、英国に渡ってからは演技力にさらに磨きをかけたのではないでしょうか。

ロイヤル仕込みの演技力に将来性を感じ、大いに期待したいダンサーだと感じました。

皆さんもマヤラ・マグリさんの今後の活躍に注目していただきたいと思います。

ちなみに、アクリ瑠嘉さんの父親はイタリア出身のマシモ・アクリさんで、欧州を中止に活躍し、日本でも新国立劇場バレエ団の公演に出演したことがあり、アクリ堀本バレエアカデミーを主宰しています。

アクリさんの前に『サタネラ』のパ・ド・ドゥを踊った水谷実喜さんもアクリ堀本バレエアカデミーの出身者です。

お二人は年齢も同じくらいかと思いますので、同時期にアクリ堀本バレエアカデミーで学んでいたのかもしれませんね。

(その2)につづきます。

【鑑賞レポ】バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)(その2)