牧阿佐美バレヱ団は、2018年9月29日(土)、30日(日)の二日間、文京シビックホール(東京)にて『白鳥の湖』を上演しました。
主演は、青山季可さんと菊地 研さんの看板ペア、今回が『白鳥』の主役デビューとなる阿部裕恵さんと清瀧千晴さんのペアによるダブルキャストです。
そのうち、阿部/清瀧ペアにより上演された30日の舞台を鑑賞しました。
舞台の感想などを報告します。
牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』(2018年9月30日)鑑賞の感想
非常に強い勢力の台風24号が接近するなか、日本各地ではイベントが中止されることも少なくありませんでしたが、9月30日(土)の公演は無事に開催されました!
せっかくの阿部/清瀧ペアの『白鳥の湖』主役デビューの舞台が台風で中止になるのではないかと、やきもきした人は少なくなかったでしょう!
牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』について
感想の前に、牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』についておさらいしてみます。
牧阿佐美バレヱ団が上演する『白鳥の湖』は、マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、テリー・ウェストモーランド新制作版に基づき三谷恭三が振付けた作品です。
テリー・ウェストモーランド版『白鳥の湖』は1980年に牧阿佐美バレヱ団により初演された作品で、マリインスキー劇場のオリジナル版からの伝統を引き継いだもののようです。
『白鳥の湖』はソビエト連邦時代にハッピーエンドとなり、現在上演される作品の多くはハッピーエンドになっていますが、牧阿佐美バレヱ団の『白鳥』はオリジナル通り悲劇です。
ちなみに、テリー・ウェストモーランドさんは、英国ロイヤル・バレエでダンサーとして活躍し、その後、ロイヤルの常任スタッフとして、マーゴ・フォンテイン、ルドルフ・ヌレエフの教師も務めた人だそうです!( ゚Д゚)
牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』の感想について
牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』を鑑賞したのは、今回が初めてでした。
前述のとおり、マリインスキー劇場のオリジナル版を踏まえており、筆者にとっては見慣れない作品でした。
道化が出演していない、知らない音楽が使用されているといったところは大きな違いとして感じました。
違和感はあるものの、純粋に楽しめたことは間違いありません。
とくに牧阿佐美バレヱ団の全幕バレエを鑑賞するのが初めてで、ダンサーを特定することが困難なこともあり、初心に戻り、じっくり鑑賞することができました。
また、ダンサーを特定できないからこそ、先入観なしに鑑賞できたこともとても良かったと感じます。
気になる踊りを披露されたダンサーを鑑賞後に調べてみてみました。
とくに、パ・ド・トロワを踊られた高橋万由梨さんは、非常に素晴らしいダンサーだと感じました。
また、ルースカヤを踊られた日髙有梨さんもクールでした。
筆者がバレエを鑑賞する際、見慣れている新国立劇場バレエ団の舞台との比較で観てしまいがちです。
あの踊りが違うなとか、この音楽は聞き慣れないなとか、あのダンサーは良いけど誰だろう?とかいった具合です。
余計なことを考えながら観ているなと思っているそのとき、盛大な拍手が沸き起こりました。
阿部裕恵さん演じるオデットが登場したことに気づき、今回の鑑賞の最大の目的が阿部裕恵さんのオデット/オディールデビューをこの目にしっかりと焼き付けることだったことを思い出した瞬間です。
阿部さんが踊る姿を舞台で拝見するのは、新国立劇場バレエ研修所公演以来のことです。
まず、印象的だったのは、足の甲がとてもきれいに出ていて、足の運びが非常に美しいことでした。
評判どおりに技術力は高く、とてもクリアでしなやかに踊られていると感じました。
また、重力を感じさせないようなバランスは驚異的ですらあります。( ゚Д゚)
阿部さんは、インタービューで「どうやって鳥のように見せるかというのが難しく、一番注意しているのは目線の使い方」と語っていましたが、本番ではどうだったでしょうか?
残念ながら筆者は後方の席だったためオペラグラス越しでもはっきりとは確認することはできませんでした。
観客の皆さま、プレス関係者の評価が気になりますね。(´▽`)
目線の使い方も大切ですが、「鳥のように見せる」という観点からは、清瀧さんのサポートが光っていたのではないかと筆者には感じられました。
清瀧さんといえば、王子が登場した際には客席から盛大な拍手が沸き起こり、多くのファンがこのジーグフリード王子デビューの瞬間を待ち望んでいたことが分かりました。
筆者にとって、阿部さんの全幕主役を初めて観る機会でしたが、正直、ここまで素晴らしいとは驚きでした。
阿部さんが登場した瞬間から気持ちを鷲掴みにされ、最期までその集中力が途切れることなく夢中にさせられました。
このダンサーは牧阿佐美バレヱ団の宝ではないかとさえ感じ、他の演目でも踊る姿を是非観たくなりました。
評論家のような素晴らしい表現ができないことが悔やまれますが、舞台を観ていただければ阿部さんがいかに素晴らしいダンサーなのか、すぐに分かるはずです。
また、『白鳥』といえばコールドの美しさですが、牧阿佐美バレヱ団のコールドは、驚くほど素晴らしい出来でした。
新国の素晴らしさに慣れてしまっている筆者にとっても特筆すべき美しさであったと感じます。
作品全体としての牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』の感想は、見慣れないせいもあるかと思いますが、筆者の気持ちの中に自然に入り込んでくるものではありませんでした。
新国立劇場バレエ団で上演される牧阿佐美版『白鳥の湖』の方が、展開、振りやフォーメーションの美しさ、流れが気持ちに入ってくる自然さなどの点において親しみやすい作品だと感じます。
牧阿佐美バレヱ団の公演を観に行って牧阿佐美版の作品の方が良いと感じるのも変な話ですね。
バレエ鑑賞歴を積んできて、同じ演目の異なる版を鑑賞する機会も少しずつ増えてきましたが、牧阿佐美先生の振付家としての偉大さに気づかされる機会が多くなってきた気がします。
牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』(2018年9月30日)公演概要
【公演名】 牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』
【日時】 2018年9月30日(日)15:00
【会場】 文京シビックホール 大ホール
【演出・振付】
三谷恭三(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、テリー・ウェストモーランド新制作版に基づく)
【音楽】 P.I.チャイコフスキー
【指揮】 アンドレイ・アニハーノフ
【演奏】 東京オーケストラMIRAI
【美術】 ボブ・リングウッド
【出演】
オデット/オディール:阿部裕恵
ジーグフリード王子:清瀧千晴
王妃:坂西麻美
フォン・ロットバルト:塚田 渉
パ・ド・トロワ:高橋万由梨、光永百花、田村幸弘
小さい4羽の白鳥:織山万梨子、米澤真弓、上中穂香、太田朱音
大きな4羽の白鳥:茂田絵美子、久保茉莉恵、佐藤かんな、三宅里奈
パ・ド・カトル:織山万梨子、米澤真弓、坂爪智来、濱田雄冴
ルースカヤ:日髙有梨
チャルダッシュ:岡本麻由、元吉優哉
スパニッシュ:田切眞純美、塩澤奈々、石田亮一、ラグワスレン・オトゴンニャム
ナポリターナ:須谷まきこ、山本達史
マズルカ:緒方結実、竹石玲奈、田辺 彩、武本真利亜、中島哲也、依田俊之、松田耕平、米倉大陽
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