2019年2月に開催された「第47回ローザンヌ国際バレエコンクール」において3位に入賞した佐々木須弥奈さんと8位に入賞した住山美桜さんに密着取材したNHK BS1スペシャル「ローザンヌでつかんだ未来~バレエダンサー 須弥奈と美桜」が、2021年1月21日(木)に再放送されます。
NHK BS1スペシャル「ローザンヌでつかんだ未来~バレエダンサー 須弥奈と美桜」
2020年に開催された「第48回 ローザンヌ国際バレエコンクール 2020」では、日本人の入賞は残念ながらありませんでしたが、一年前、2019年に開催された「第47回 ローザンヌ国際バレエコンクール 2019」では、第3位に佐々木須弥奈さん、第4位に脇塚 優さん、第8位に住山美桜さんが入賞する大活躍で日本のバレエファンを沸かせました。
NHK BS1スペシャル「ローザンヌでつかんだ未来~バレエダンサー 須弥奈と美桜」は、スイスのチューリヒ・ダンス・アカデミーに留学中の佐々木須弥奈さんと住山美桜さんの二人がローザンヌ国際バレエコンクールに挑戦する姿を密着取材した番組です。
2019年4月に初回放送され、大きな話題となりました。
佐々木須弥奈(ささき・すみな)さんは、大阪に生まれ、祖母、両親ともにバレエダンサーという環境に育ち4歳でバレエを始めました。
15歳のときにチューリヒ・ダンス・アカデミーのワークショップに参加したことがきっかけで留学を決意し、それから3年間、努力を重ねて小さい頃からの夢だったローザンヌ国際バレエコンクールの参加権を得ました。
住山美桜(すみやま・みお)さんは、東京に生まれ、2歳のときにバレエを始めました。
小さい頃から踊ること・演じることが好きだったという美桜さんは、14歳のとき、初めて国際バレエ・コンクールに参加し大きな刺激を受けたことがきっかけで世界を目指そうと心に決めたそうです。
第47回 ローザンヌ国際バレエコンクール 2019
「第47回 ローザンヌ国際バレエコンクール 2019」は、世界40か国から363人が応募し、ビデオ審査を経て74人がスイス・ローザンヌで開催される本戦に出場しました。
日本人は、89人が応募し、12人が本戦への出場を決めました。
ローザンヌ国際バレエコンクールでも通常のコンクールと同様、出場者が舞台で演目を踊り審査される
ローザンヌ国際バレエコンクールの大きな特徴は、一般的なコンクールのように舞台で演目を踊り審査を受ける前に、5日間にわたり一流のコーチ陣から指導を受けられることです。
そして、そのレッスン期間の成長ぶりも審査の対象となります。
クラシック・バレエのクラス・レッスンでは、パリ・オペラ座バレエ学校校長のエリザベット・プラテルさんの指導が行われていました。
そのレッスンの様子は、バレエ界で大きな足跡を残した人たちで構成される審査員が真剣な眼差しで見ており、その中には、吉田 都さんの姿もあります。
審査するのは「コーチの指示をどれだけ柔軟に受け止め自分の表現にしていけるかという点」であり、審査員長のカルロス・アコスタさん(英国ロイヤル・バレエ元プリンシパル)は、「コーチの指導に対する適応力を見ています。将来、バレエ団に入ったときに振付家の指導を理解する力があればダンサーとして成長していけるのです」と説明します。
コンテンポラリー・ダンスのクラス・レッスンでは、ドレスデン・パルッカ・ダンス大学教授のクリスティアン・カンチアーニさんが指導していました。
須弥奈さんは、打楽器の不規則なリズムに合わせた手拍子と足踏みに戸惑う場面がありました。
翌日のレッスンでは、夜遅くまでイメージトレーニングを繰り返した成果が出て、さらに複雑なリズムにも戸惑うことなく大胆な動きで反応できるようになっていました。
3日目には、音楽をその場で聴き、即興で踊る課題が与えられ、柔軟な適応力と独自の表現力が試されました。
須弥奈さんはリズムが静かになったときにも大きく動き回り、自らの個性を審査員に強く印象づけました。
須弥奈さんは「スローな音だからと言ってスローなムーヴメントをするという訳じゃなくて、自分の個性を出していくところだと思う。他のグループを見ていて、ゆっくりな音になるとゆっくりな動き、速い音なら速い動きになるのを見ていて、自分ならこんな動きをするのにな、と思いながら見ていた」と説明しました。
レッスン4日目からは、クラシック・バレエの課題演目に対する指導が始まりました。
コーチは、パリ・オペラ座バレエ団の元エトワール モニク・ルディエールさんです。
モニク・ルディエールさんは、『エスメラルダ』のバリエーションを選択した須弥奈さんを指導した後に番組の取材に対して「あの生徒は素晴らしかったです。彼女には足を滑らせるようには言いましたが、ほとんど注意することはなかったですね」とコメントしました。
踊りを見れば、その言葉が偽りではないことは明白ですが、モニク・ルディエールさんにそのように言われたなんて後で知った須弥奈さんにとっては信じられないくら大きな自信になったのではないでしょうか。
コンテンポラリー・ダンスの課題演目指導では、美桜さんがチャイコフスキーの白鳥の湖を現代風にアレンジした『ある白鳥の湖』の指導を受けていました。
コーチのスイス・バーゼルバレエ学校教師 シンティア・ラバロンヌさんの厳しい指導の後、舞台裏までコーチを追いかけ質問をしていました。
腑に落ちることが多かったようで、「理解できてすごく楽しい」と生き生きとしながら話す表情が印象的でした。
6日目の準決戦。
須弥奈さんと美桜さんの二人は、コンクール前日にローザンヌに向けて乗車した電車の中で、引率するロベルタ・マーティンズ先生からサプライズ・プレゼントされたスワロフスキーのネックレスを身につけて臨みます。
結果、二人揃って決戦への進出が決まり、インタビューが終わると二人は安堵したのか床に倒れ込んでしまいました。
採点のポイントを審査員を務めた吉田 都さんが説明します。
「最終的にはパッションだと思ってしまう。バレエに対する情熱がないと、どれだけ恵まれたプロポーションをして、どれだけ踊れても、バレエ団の中で続かない。全て揃った上でバレエに対する情熱を持った人というのがベストですね」
準決戦の動画
佐々木須弥奈(準決戦)
クラシック・バリエーション『エスメラルダ』
佐々木須弥奈(準決戦)
コンテンポラリー・バリエーション『クロマ』(ウェイン・マクレガー)
住山美桜(準決戦)
クラシック・バリエーション『ラ・バヤデール』ガムザッティ
住山美桜(準決戦)
コンテンポラリー・バリエーション『ある白鳥の湖』(リチャード・ワーロック)
課題を乗り越えて手にした栄冠
『エスメラルダ』での確かな技術とエレガントな演技が印象的な佐々木須弥奈さんと『ある白鳥の湖』での豊かな表情と緩急を生かした動きが印象的な住山美桜さんでしたが、二人が栄冠を手にするまでの道のりは平坦ではなかったようです。
須弥奈さんは、小学校6年生のときに「起立性調節障害」という自律神経系の病を患い、バレエの練習を長期間休むことを余儀なくされ、スイス留学中には、出場するはずだった別の国際コンクールの直前に怪我してしまったそうです。
このような辛い状況のとき、須弥奈さんはシュテフィ・シェルツァー先生に言われた「あなたが舞台で踊っているところが見たい」という言葉に、「このまま落ち込んではいられない、ちゃんと進まないとな」と思い奮起したそうです。
ローザンヌ国際バレエコンクールを前に、先生たちは美桜さんに対して心配していることがあったそうです。
「他人と比べてしまい自信をなくしてしまうタイプ」の美桜さんに対し、ロベルタ・マーティンズ先生は、「自分を信じないとだめよ。みんなそれぞれ違うの。だから面白いの。他人と比較してはダメ。他の人のダンスを見て学ぶことは大切よ。でも、それは自分の将来のためなの。だから自分を信じるの。あなたにしかできない踊りがあるでしょう。そこがポイント。それをローザンヌで見せるのよ」とアドバイスしました。
二人とも周囲の人々の支援を得て、自らの強い意志により成し遂げた成果のように思います。
そして、吉田 都さんが指摘する「バレエに対する情熱」が感じられ、思わず見ている方の胸が熱くなる素晴らしい番組です。
決戦の動画
佐々木須弥奈(決戦)
クラシック・バリエーション『エスメラルダ』
佐々木須弥奈(決戦)
コンテンポラリー・バリエーション『クロマ』(ウェイン・マクレガー)
住山美桜(決戦)
クラシック・バリエーション『ラ・バヤデール』ガムザッティ
住山美桜(決戦)
コンテンポラリー・バリエーション『ある白鳥の湖』(リチャード・ワーロック)
二人の進路
決戦では佐々木須弥奈さんが3位、住山美桜さんが8位に入賞しました。
入賞した二人には世界の著名なバレエ団で一年間の研修を受ける権利が与えられます。
佐々木須弥奈さんは英国ロイヤル・バレエで研修を受け、マリアネラ・ヌニェスさんが大好きな彼女は英国のカンパニーで踊りたいそうです。
住山美桜さんはバーミンガム・ロイヤル・バレエで研修を受け、ヨーロッパのカンパニーで記憶に残るダンサーを目指したいそうです。
佐々木須弥奈さんは、ローザンヌ国際バレエコンクールで得たプロ研修賞により2019/20 シーズンに英国ロイヤル・バレエで研修を受け、2020年にアーティストに昇格しています。
放送概要
■日程:2021年1月21日(木)18:00〜18:50(50分)
■チャンネル:NHK BS1
■公式チャンネル:https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/