新国立劇場 『バレエ・アステラス2018 ~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて~』の鑑賞レポの続き(その2)です。
第2部の感想と公演概要についてお届けします。
バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)の感想(第2部)
第2部は、新国立劇場バレエ研修所による『シンフォニエッタ』で始まりました。
第14期生と第15期生が出演しましたが、第15期生のうち予科を経て研修生になられた方以外は初めて観るため、名前と顔がまだ一致しません。
そのなかでも第15期生の男性は一人だけのため、井上興紀さんはすぐに分かりました。
小柄な方ですが、技術がしっかりしている印象を受けました。
研修生の中では、過去の研修所公演の感想でも絶賛したとおり、髙井惠里さんの華のある存在感が一際輝いていました。
今回も音楽性豊かな踊りと華やかな表情に視線を奪われてしまい、正直、他の方をあまり観ることができず、申し訳ない気分です。<m(__)m>
続いては、ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー生による『ジムノペディ』でした。
大勢で出演されるのと思いきや、男性二人と女性一人の出演でした。
マルコ・パデルニさんが演奏する静謐な印象のピアノに合わせて踊るコンテンポラリー作品です。
エリック・サティの音楽にローラン・プティによる振付ですが、作品以上にダンサーの存在感と踊りに注意を奪われ、初めて観る演目にもかかわらず、我を忘れて舞台に引き込まれました。
女性のレティシア・マシーニさんはすでにトップ・ダンサーのオーラを身に纏っていました。
このダンサーにも注目していきたいと思います。
アカデミー生の演技は続き、リンダ・ジェベッリさんが『エスメラルダ』を一人で踊られました。
イタリア出身のダンサーはあまり観る機会がありませんでしたが、アカデミー生による今回の2作品を拝見し、イタリア人ダンサーにももっと関心を持つべきだと感じました。
続く出演者は非常に見慣れたお二人です。
新国立劇場バレエの米沢唯さんと奥村康祐さんのプリンシパル・ペアによる『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』です。
もちろん出演されるのは知っておりましたが、お二人が姿を現すや「あれ、どうしたの?あっ、そうか、そうか」という感じでした。
米沢さんは新国を代表するテクニシャンであることは間違いありませんが、最近、さらに磨きがかかり、体のコントロール力にも磨きがかかっている気がします。
この日も抜群の安定感で、寸分の狂いもないコントロールで、観ていても体が踊りやすそうだと感じました。
もちろん日頃の精進の賜物でしょうが、何か、従来とは異なる取り組みを始められたのでしょうか。
奥村さんもこの日は絶好調の様子で、持ち味である溌剌としたジャンプが冴えていました。
そんな二人でしたから、表情が非常に明るく、この舞台を楽しんでいる様子がうかがえました。
続くのは、昨年(2017年)モスクワ国際バレエコンクール・ジュニア・ソロ部門で1位となった千野円句さんの登場です。
パートナーは千野さんと同じボリショイ劇場バレエのスタニスラヴァ・ポストノーヴァさんです。
二人が演じたのはグリゴローヴィチ版『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥです。
これまた、スタニスラヴァ・ポストノーヴァさんの表情だけで目が釘付けにされました。
同じ地球上の生物とは思えない存在感の持ち主だったからです。
思えば、ジゼルはアルブレヒトに裏切られて息絶え、死後、ウィリ(精霊)となった訳ですから、同じ地球上の生物とは思えなかったのにも頷けます。
それにしても驚くべき表現力でした。
2017年にボリショイバレエ学校を卒業後、ボリショイ劇場バレエに入団したばかりですが、すでに多くの主要な役を任され、『ドン・キホーテ』ではキトリを踊っているようです。
彼女の存在感には本当に圧倒されました。
インパクトの強さでは、今回の出演者のなかでも一番です。
彼女も今後の活躍を楽しみに注目したいダンサーです。
続いて、ペンシルベニアバレエのソリスト伊勢田由香さんが元バレエカルメン・ロッチェのエドガー・チャンさんと組んで『海賊』より寝室のパ・ド・ドゥを踊りました。
なんと振付は、あのアンヘル・コレーラさんです。
最近、あまり見かけないなと思っていましたが、ペンシルベニアバレエの芸術監督に就任されていたのですね。
続いては、トゥールーズ・キャピトル・バレエ団の小笠原由紀さんとルスラン・サブデノフさんによる『ノクターン』でした。
衣装を見てビックリ( ゚Д゚)
肌色のため・・・
トゥールーズ・キャピトル・バレエ団といえば新国の渡邊峻郁さんもかつて所属していたフランスのカンパニーですが、お二人は最近入団されたようですので、同時期に在籍していたことはないようです。
トリを務めたのはもちろん日本が誇るお二人です。
英国ロイヤル・バレエのプリンシパル・ぺアである高田茜さんと平野亮一さんです。
お二人を拝見するのは初めてです。
いくら評判の良いダンサーでも、実際に観てみると残念に思うことが少なくありませんが、この二人は登場するだけで本物だと分かる圧倒的な存在感がありました。
出た瞬間に勝負は決まった。
そんな印象すら受けました。
踊ったのは英国ロイヤル・バレエが誇る若き天才振付家リアム・スカーレットによる『ジュビリー・バ・ド・ドゥ』です。
この作品は、2012年10月にエリザベス女王の在位60周年記念のガラ公演で初演された作品とのことです。
事前に調べてみたものの、ほとんど情報がなく、動画は見つかりませんでした。
予習なしに踊りを拝見しましたが、二人の表現力と存在感に本当に感動しました。
繊細なパートナリングを求められる難しさが素人にも分かりますが、加えてダイナミックなリフトなども軽々と、しかも危うげなくこなし、お二人の実力を如何なく披露されました。
フィナーレの全出演者が登場するカーテンコールにおいて、センターは高田茜さんと平野亮一さんが務めました。
ここでも圧倒的な存在感を示されていましたが、とくに高田さんは自然に舞台を支配してしまう貫禄の持ち主でした。
終演後、「高田半端ないって!!!」とツイートした人が大勢いたのではないでしょうか?!
私はツイッターをしていないので、できませんでした。(>_<)残念。
感想のまとめ
バレエ・アステラス2018の感想を登場順に書いてまいりましたが、今回の公演では、とくに表現力と存在感のあるダンサーが何名もいらっしゃいました。
特別ゲストの高田茜さんと平野亮一さんは別格としても素晴らしいダンサーがたくさんいらっしゃいました。
その中でもとくに次の三名の存在感と表現力に強く感銘を受けました。
◆『ロメオとジュリエット』を踊った英国ロイヤル・バレエのマヤラ・マグリさん
◆『ジムノペディ』を踊ったミラノ・スカラ座バレエ・アカデミーのレティシア・マシーニさん
◆『ジゼル』を踊ったボリショイ劇場バレエのスタニスラヴァ・ポストノーヴァさん
「世界各国のカンパニーで活躍する若手日本人ダンサーを応援したい」というバレエアステラスの開催趣旨からは外れてしまいますが、これほどの素晴らしいダンサーに出会えたことは本当に嬉しいことでした。
出演者自身も大いに刺激を受けたことと思います。
かつて同じバレエ教室に通っていたダンサーが再会を果たすこともあったかもしれません。
ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミーと新国立劇場バレエ研修所は、今年の6月にロシアのボリショイ劇場本館および国立クレムリン宮殿で開催された「ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミー280周年記念ガラ・コンサートに参加していますので、約1カ月ぶりの再会となっていたかもしれません。(ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミーは生徒数も多いため、アステラス出演者が参加していたかは不明です)
こうして、多くの才能が刺激し合う機会はとても有益であると感じました。
満足感120%の大興奮の舞台鑑賞でした!!!
来年(2019年)は記念すべき第10回を迎えます!
この節目の公演では、特別な演出があるかもしれません。
今から『バレエ・アステラス2019』の開催が待ち遠しくなります!
新国立劇場バレエ研修所のサイトでは、すでに写真付きの報告が掲載されています。
踊り終えた後の爽やかな笑顔の数々をどうぞご覧ください。
⇒ 研修所ニュース 「バレエ・アステラス 2018」が開催されました
バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)開催概要
Ballet Asteras 2018 バレエ・アステラス ~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて~
2018年7月28日(土)15:00開演
新国立劇場 オペラパレス
第1部
『ケークウォーク』
- 音楽:ハーシー・ケイ/ルイス・モロー・ゴットシャルク
- 振付:牧 阿佐美
- 新国立劇場バレエ研修所 研修生・予科生
『夏の夜の夢』第2幕より パ・ド・ドゥ
- 音楽:フェリックス・メンデルスゾーン
- 振付:デヴィッド・ニクソン
- 宮田彩未 with ジョセフ・テイラー(ノーザン・バレエ)
『End of Eternity』
- 音楽:フィリップ・グラス「ピアノと管弦楽のためのチロル協奏曲」より 第2楽章
- 振付:サシャ・リヴァ
- 相澤優美(ジュネーヴ大劇場バレエ団) with ヴラディミール・イポリトフ(ジュネーヴ・ダンス・イベント)
『サタネラ』のパ・ド・ドゥ
- 音楽:チェーザレ・プーニ
- 振付:マリウス・プティパ
- 水谷実喜 with ツーチャオ・チョウ(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)
『ロメオとジュリエット』より バルコニーのパ・ド・ドゥ
- 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
- 振付:ケネス・マクミラン
- アクリ瑠嘉 with マヤラ・マグリ(英国ロイヤル・バレエ)
――休憩――
第2部
『シンフォニエッタ』
- 音楽:シャルル・グノー
- 振付:牧 阿佐美
- 新国立劇場バレエ研修所(多田そのか、仲村 啓、岡田百音、髙井惠里、パーキンソン赤城 季亜楽、山根くるみ、阿部純花、山内優奈、井上興紀、加藤里佳、服部由依、吉田朱里)
『ジムノペディ』
- 音楽:エリック・サティ
- 振付:ローラン・プティ
- 再演振付:ルイジ・ボニーノ
- ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー生(レティシア・マシーニ、ダニエル・ボネッリ、サミュエル・ガンバ)
『エスメラルダ』より ヴァリエーション
- 音楽:チェーザレ・プーニ
- 原振付:マリウス・プティパ
- 再演振付:パオラ・ヴィスマラ
- ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー生(リンダ・ジュベッリ)
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
- 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
- 振付:ジョージ・バランシン
- 米沢 唯 & 奥村康祐(新国立劇場バレエ団)
『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ
- 音楽:アドルフ・アダン
- 振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ
- 改訂振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
- 千野円句 with スタニスラヴァ・ポストノーヴァ(ボリショイ劇場バレエ)
『海賊』より 寝室のパ・ド・ドゥ
- 音楽:アドルフ・アダン
- 振付:アンヘル・コレーラ
- 伊勢田由香(ペンシルベニアバレエ) with エドガー・チャン(フリー/元バレエカルメン・ロッチェ)
『ノクターン』
- 音楽:レオニード・デシャトニコフ
- 振付:アレクセイ・ミロシニシェンコ
- 小笠原由紀 with ルスラン・サブデノフ(トゥールーズ・キャピトル・バレエ団)
『ジュビリー・パ・ド・ドゥ』
- 音楽:アレクサンドル・グラズノフ
- 振付:リアム・スカーレット
- 高田 茜 & 平野亮一(英国ロイヤル・バレエ)
フィナーレ
- 音楽:A.グラズノフ『バレエの情景』作品52より第8曲『ポロネーズ』
- 出演者全員
この記事には前半(その1)があります。
【鑑賞レポ】バレエ・アステラス2018(Ballet Asteras 2018)(その1)