【公演情報】牧阿佐美バレヱ団『飛鳥 ASUKA』(2018)

2018年8月25日(土)、26日(日)、牧阿佐美バレヱ団の重要なレパートリーである『飛鳥 ASUKA』が再演されます。

『飛鳥 ASUKA』は、日本のバレエを求めて橘秋子先生により創作され、牧阿佐美先生がその遺志を受け継ぎ、進化させている作品と言えるのではないでしょうか。

日本を代表する洋画家 絹谷幸二氏による絵画作品をクリエイティブ集団ZERO-TENが最新の映像技術である「プロジェクションマッピング」を駆使して映像を演出した意欲作です。

ゲストダンサーには、スベトラーナ・ルンキナさん(カナダ国立バレエ・プリンシパル)、ルスラン・スクヴォルツォフさん(ボリショイ劇場バレエ団・プリンシパル)、大川航矢さん(タタールスタン国立ロシアカザン歌劇場)が出演します。

【8/2】大川さんがコンクールで踊る動画追加

『飛鳥 ASUKA』 日本のバレエを求めて

1957年4月29日、『飛鳥 ASUKA』の元となるバレエ『飛鳥物語』は、「牧阿佐美バレヱ団結成第二回公演」として上演されました。

二幕もので雅楽により上演された作品でした。

牧阿佐美先生の母である橘秋子先生により「日本の全幕バレエを作らなければならないという意欲」のもとに創作されました。

しかし、「雅楽特有の音の出の難しさがバレエの動きには向かないと判断され」、成功にはいたらなかったようです。

1962年、音楽をオーケストラでの作曲によるものへと変更され、三幕およびエピローグからなるグランド・バレエに生まれ変わりました。

新版は評価され、芸術祭奨励賞を受賞しました。

1986年、バレエ団30周年記念に改訂

改訂振付の牧阿佐美先生は、「日本のバレエという問題がさらに直接的に問われた」と述べています。

2016年、バレエ団創立60周年記念に改訂

この際、想像が限定されることを嫌い、演目名の『飛鳥物語』から「物語」を省き、『飛鳥 ASUKA』に改める。

2018年、再演に当たり、納得しやすくなるように結末に手を入れ、また、映像にも新たな構想を模索中とのこと。

この演目は、日本のバレエを求めることがその出発点にあり、試行錯誤を繰り返しながら進化し続けています。

改訂振付の牧阿佐美先生も、初演時にはダンサーとして出演していますが、日本のバレエ界の発展を常に考慮しながらコリオグラファーとして試行錯誤を繰り返されています。

この作品は、牧阿佐美先生にとって、いわくつきの作品です。

エピソードの一つをご紹介します。

1962年に二幕ものから三幕もののグランド・バレエへと大きく変更されていますが、この新版初演のリハーサル中、公演の三日前に大事故が起こります。

なんと、主演予定の牧阿佐美さんはアキレス腱を切る大けがをし、降板を余儀なくされます。

公演を中止する訳にはいかず、急遽、配役を変更し、牧阿佐美さんの役は大原永子さんが、大原永子さんの役は森下洋子さんが、森下洋子さんの役は川口ゆり子さんがやり、というように全部ずらして上演にこぎ着け、舞台を成功させることができました。

ちなみに、大原永子さんは新国立劇場バレエ団芸術監督、森下洋子さんは松山バレエ団現役プリマ、川口ゆり子さんはバレエシャンブルウエスト芸術監督です。

ご存じのとおり、現在の日本のバレエ界を牽引する方々です。

牧先生はこの怪我により復帰までに2年間を要しています。

後に、「日本のバレエとは何か、振付とは何か、ということをこの間にずいぶん考えた」と回顧されています。

参考文献:『バレエに育てられて 牧 阿佐美 自伝』(新書館)

『飛鳥 ASUKA』の見どころ

この作品の最大の特徴は、大きく二つあるのではないでしょうか。

ひとつは、日本のバレエを求めて橘秋子先生により創作され、その遺志を引き継いだ牧阿佐美先生が普遍性を求め試行錯誤を繰り返し進化させている作品であること。

もう一つが、「プロジェクションマッピング」という最新の映像技術を駆使した未体験の表現方法の試みです。

日本のバレエを求めた作品で外国人ダンサーが踊るのは・・・

すでに紹介したように、日本のバレエを求めることがこの作品の発端にありました。

ならば、なぜ、主役である春日野すがるおとめを外国人ダンサーであるスヴェトラーナ・ルンキナが踊り、岩足(いわたり)をルスラン・スクヴォルツォフが踊るのでしょうか?

スヴェトラーナ・ルンキナさんは、元ボリショイのプリンシパルであり、パリ・オペラ座、シュツットガルト・バレエなどにも客演する国際的にも認められているダンサーであり、ルスラン・スクヴォルツォフさんは現役のボリショイのプリンシパルです。

優れたダンサーを招聘することはおかしなことではありませんが、素人考えでは、日本のバレエを求めるのであれば主役も日本人と考えてしまいます。

その答は毎日新聞夕刊記事(2018年6月12日付)にありました。

「ロシアで生まれた『白鳥の湖』が世界中で愛されているように、外国人に踊られてこそ不滅」

「日本のバレエ」のその先の展開までをも考慮してのことだったのです。

2017年には富山オーバード・ホールにおいて再演されていますが、主役の「春日野すがる乙女」は世界のプリマ ニーナ・アナニアシヴィリさんが踊られています。

さらに、2019年1月には、マリインスキー劇場におけるロシア公演も決定しています!

「日本で生まれた『飛鳥 ASUKA』が世界中で愛される」ようになりつつあります。

最新の映像技術を駆使

この作品の演出上の特徴として、舞台には装置ではなくパネルを設置しプロジェクションマッピングにより映写していることが挙げられます。

毎日新聞夕刊記事(2018年6月12日付)によると、牧先生も当初は危惧していいたものの「舞台に宇宙的な広がりがあった」と成功を喜んでいます。

プロジェクションマッピングによる演出については、百聞は一見に如かず、ほんの少しですが、プロモーションビデオが公開されていますので、ご確認ください。

牧阿佐美バレヱ団2018年8月公演「ASUKA」P.V.

(YouTube / 牧阿佐美バレヱ団公式チャンネル Asami Maki Ballet Tokyo)

もう一人のゲスト(大川航矢さん)

今回の公演でゲスト出演するのは、スヴェトラーナ・ルンキナさんとルスラン・スクヴォルツォフだけではありません。

海外のバレエ団で活躍する日本人ダンサーもゲスト出演します。

昨年(2017年)、世界3大バレエコンクールの一つである「モスクワ国際バレエコンクール」において日本人ダンサーが金賞を受賞されたニュースを覚えているバレエファンの方も多いかと思います。

その金賞を受賞されたタタールスタン国立ロシアカザン歌劇場の大川航矢さんが、牧阿佐美バレヱ団『飛鳥 ASUKA』にゲスト出演します。

タタールスタン国立ロシアカザン歌劇場がシーズンオフの期間、日本に帰国され、舞台に立つことも多い大川さんですが、ほとんどがガラ公演です。

私も昨年は、新国立劇場の『バレエアステラス2017』で大川さんの雄姿を拝見しました。

ガラは名場面を選りすぐった良いとこどりの良さはありますが、やはり舞台全体を通して一つの物語を表現する全幕ものにしか表現できないこともあります。

大川さんが、牧阿佐美バレヱ団の『飛鳥 ASUKA』にどのような彩を添えるのか、こちらも楽しみです!

【8/2追加】7月31日に大川さんがコンクールで踊る動画が公開されていました。

牧阿佐美バレヱ団 2018年8月公演「ASUKA」ゲスト出演・大川航矢

(YouTube / 牧阿佐美バレヱ団公式チャンネル Asami Maki Ballet Tokyo)

牧阿佐美バレヱ団『飛鳥 ASUKA』公演概要

【日時】 2018年8月25日(土)15:00、26日(日)15:00

【場所】 新国立劇場 オペラパレス

【チケット料金(税込・全席指定)】

S席14,000円、A席12,000円、B席8,000円、C席6,000円、D席3,000円(未就学児の入場不可)

【主要キャスト】

  • 春日野すがるおとめ:スヴェトラーナ・ルンキナ(カナダ国立バレエ団 プリンシパル)
  • 岩足(いわたり):ルスラン・スクヴォルツォフ(ボリショイバレエ団 プリンシパル)
  • 竜神:菊地 研(牧阿佐美バレヱ団)

牧阿佐美バレヱ団『飛鳥 ASUKA』公式サイト ⇒ http://www.ambt.jp/perform2.html