2018年11月17日(土)・18日(日)の二日間、新国立劇場バレエ研修所公演『オータムコンサート2018』が開催されました。
第14期・第15期研修生、第9期・第10期予科生が、クラシック作品からコンテンポラー作品までヴァラエティに富んだプログラムで日頃の研修の成果を披露しました。
公演の様子や感想などを報告します。
新国立劇場バレエ研修所公演『バレエ・オータムコンサート2018』
開幕の際、司会進行の川飛舞花さん(新国立劇場演劇研修所第12期生)から、第15期研修生の奈良岡美海さんが怪我のため出演できなくなったことが報告されました。
残念なことですが、しっかりと怪我を治し、次回の公演で元気な姿で舞台に戻って来ることを期待したいと思います。
公演は、2部構成となっており、第1部では古典からコンテンポラリーまで、幅広い6演目が上演に加えて研修の様子をまとめた映像が公開されました。
続く第2部では『ドン・キホーテ』第3幕から抜粋版が上演され、研修所修了生も賛助出演し舞台に華を添えました。
第1部
最初の演目は『ワルツ』です。
1862年にシュルル・グノーの作曲により上演されたオペラ『シバの女王』に含まれていたバレエシーンからの演目で、牧阿佐美さんの振付による演目です。
下級生を中心にキャスティングされ、オープニングを飾るにふさわしい作品でした。
2番目の演目は『海賊』より パ・ド・ドゥが上演され、ゲストの輪島さんを相手に岡田さんが二日間とも踊りました。
3番目の演目は『エスメラルダ』より パ・ド・シスが上演され、エスメラルダ役は17日が髙井さん、18日が多田さんのダブルキャストでした。
相手役の詩人は、研修生の仲村さんが二日間をも務め、研修生同士がペアを組みました。
4番目の演目は『パリの炎』より ヴァリエーションが上演され、第15期の井上さんが出演し、1年次ながらも超絶技巧を決めていました。
5番目の演目は『ハレルキナーダ』より パ・ド・ドゥが上演され、ゲスト出演したアルカン役の山本さんを相手に山根さんが両日ともにコロンビーヌ役を踊りました。
コミカルな演目でしたが、おどながら高度な技を決める山本さんに対してお茶目な表情ではぐらかす山根さんのペアが牧歌的な雰囲気に包まれました。
その後、研修所の日々を約10分間にまとめた映像が上映されました。
映像では、日々の研修風景から、年4月~5月に上演された新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』での舞台実習の様子、6月にロシアで開催された「A.Y.ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミー創立 280 周年記念ガラ公演」での様子や7月に世界で活躍するバレエダンサーを招聘して開催された「バレエ・アステラス2018」の映像が含まれていました。
「A.Y.ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミー創立 280 周年記念ガラ公演」に出演されたときの映像では、ボリショイ劇場での終演後に卒業生として出演したザハロワさんと一緒に舞台上で記念撮影された映像がありました。
憧れの世界のプリマと憧れのボリショイ劇場の舞台で撮影した記念写真は研修生にとって一生の宝物になったに違いありません。
「バレエ・アステラス2018」の際には、世界で活躍する日本人ダンサー、パートナーの外国人ダンサー、イタリア ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー生らと一緒にクラスレッスンを受ける様子が映っていました。
観ているこちらも興奮しましたが、一緒にレッスンを受けた研修生にとってはそれ以上の刺激になったのではないでしょうか。
日頃の研修風景には、「歌唱』の研修を受ける様子が映されていました。
伊藤和美先生の指導を受け、声を出しながら、あるいは、歌いながら表現することを実習されていました。
バレエではまず行わないことですが、こういった関係ないと思われることなども表現者としての資質を高めるのに役立つのだろうと感じました。
この研修の映像では、パーキンソン赤城さんの表現力に目を見張りました!
この研修所の日々をまとめた映像は、後日、YouTubeで公開されるものと思います。
その後、貝川鐵夫さん振付作品『ロマンス』を上演し、第1部を締めくくりました。
この作品は、新国立劇場『DANCE to the Future 2016 Autumn』で初演されたコンテンポラリー作品ですが、その祭には、小野絢子さん、玉井るいさん、益田裕子さん、木村優子さん、中沢恵理子さんにより踊られました。
今回の上演に当たり、貝川さんから指導を受けたそうですが、この作品に出演した研修生たちは多くの刺激を受けたようです。
終演後に今年入所した第15研修生がコメントを述べましたが、「研修生であっても妥協しない貝川さんの指導にプロとしての意識を感じた」という内容のコメントもありました。
鑑賞した側の感想としては、上級生のパーキンソン赤城さんをはじめ非常に完成度が高く、正直驚きました。
作品もコンテンポラリー作品としては奇をてらったところがない素直に美しい作品で、研修にもぴったりな作品だったのではないかと感じました。
第2部
第2部は『ドン・キホーテ』第3幕より抜粋での上演です。
キトリは、17日が多田さん、18日が髙井さんとエスメラルダとは逆日程のキャスティングでした。
相手役のバジルは研修所公演へのゲスト出演も多い芳賀 望さんでした。
第1ヴァリエーションは阿部さんと奈良岡さんがキャスティングされましたが、冒頭での報告のとおり怪我のために残念ながら降板され、二日間ともに阿部さんが踊りました。
第3幕からの抜粋上演でしたが、『ドン・キホーテ』の持つ魅力を最大限表現した素晴らしい舞台でした。
もともと超絶技巧が求められ、しかも、ガラ公演ではないので前後の流れもあるなかでの演技であることを考えると、研修生には自信に繋がった舞台だと思います。
松宮さん、山内さんのキューピッドが率いる日本ジュニアバレヱのちびっ子キューピッドの演技も見事でした。
まだ小学校低学年ではないかと思しき出演者もいましたが、恐ろしいほど揃っていました。
筆者の方がバレエ経験年数は長いと思いますが、あっさりと完敗を認めるほどでした。(^_^;)
『バレエ・オータムコンサート2018』を鑑賞して
今回の公演は、新国立劇場バレエ研修所の日頃の研修成果を発表することが第一の目的であろうと思いますが、観客の立場からは、バレエ公演として非常に見応えのある舞台だったと感じました。
研修生の個性や特性に応じて演目が決められたようですが、その演目に挑戦する中でさまざまな課題に直面したことと思います。
観客としては非常に素晴らしい出来栄えであったと思いますが、プロを目指す研修生にとっては反省することも多かったようです。
1年次の第15期生が終演後にコメントを述べましたが、「課題を発見し改善すること」についても述べていました。
また、個性の面では、ダブルキャストを見比べると、やはり個性の違いがより際立ったように思います。
エスメラルダとキトリを踊った髙井さんと多田さんもやはり個性の異なるダンサーで、髙井さんはキトリの方が、多田さんはエスメラルダの方が合っていたように感じられました。(あくまでも個人の感想です)
第14期生は、公演を終て安堵する暇もなく、11月下旬からは海外研修へと出発するそうです。
今年からANA(全日本空輸株式会社)様のご支援により奨学制度「ANAスカラシップ」がバレエ研修所にも適用されました。
今年度はロシアの名門「ワガノワ・バレエ・アカデミー」での3週間に及ぶ研修を受けるそうです。
第14期生を代表してパーキンソン赤城さんの挨拶がありました。
海外研修への意気込みとして、ワガノワ・バレエ・アカデミーでのレッスン、マリインスキー劇場での鑑賞などから多くのことを吸収し、卒業公演でその成果を披露することを述べました。
長いように思われた研修期間も残り半年を切っています。
悔いのないように研鑽に励み、卒業公演で輝く姿を披露されることを願ってやみません。
新国立劇場バレエ研修所公演『バレエ・オータムコンサート2018』概要
公演概要
■日時 2018年11月17日(土)・18日(日)15:00開演(両日とも)
■会場 新国立劇場 中劇場
■主催 新国立劇場
■協賛 ANA(全日本空輸株式会社)
■司会進行
川飛舞花(かわとび・まいか)(新国立劇場演劇研修所第12期生)
■賛助出演
今村 恵(第1期修了)
丸澤芙由子(第4期修了/新国立劇場バレエ研修所ジャイロキネシス講師)
岡本麻由(第6期修了/牧阿佐美バレヱ団)
三宅里奈(第7期修了/牧阿佐美バレヱ団)
■ゲスト出演
芳賀 望(フリー/元アルバータバレエカンパニー/元Kバレエカンパニー/元新国立劇場バレエ団)
輪島拓也(新国立劇場バレエ団 登録ソリスト/元カナダ・ナショナル・バレエ・カンパニー/元Kバレエカンパニー)
山本達史(第10期修了/牧阿佐美バレヱ団/元東京バレエ団)
研修生・予科生
■第14期研修生(2年次)
岡田百音(おかだ・もね)(埼玉県/伊藤京子バレエスタジオ)
髙井惠里(たかい・えり)(埼玉県/新国立劇場バレエ研修所予科/金田・こうのバレエアカデミー)
多田そのか(ただ・そのか)(東京都/新国立劇場バレエ研修所予科/エチュードバレエアカデミー)
パーキンソン・赤城・季亜楽(ぱーきんそん・あかぎ・きあら)(オーストラリア/東京都/新国立劇場バレエ研修所予科/ケイナカノクラシックバレエアカデミー)
山根くるみ(やまね・くるみ)(大阪府/法村友井バレエ学校)
仲村 啓(なかむら・さとし)(埼玉県/新国立劇場バレエ研修所予科/KRMバレエ)
■第15期研修生(1年次)
阿部純花(あべ・すみか)(神奈川県/新国立劇場バレエ研修所予科/エコールヨコハマ牧阿佐美バレエスタジオ)
岸谷沙七優(きしや・しゃなや)(東京都/コンテンポラリーバレエスタジオダンスナッツ)
奈良岡美海(ならおか・みう)(青森県/新国立劇場バレエ研修所予科/アカネバレエ教室/池亀典保バレエスタジオ)
松宮里々子(まつみや・りりこ)(東京都/片山満子バレエスクール)
山内優奈(やまうち・ゆな)(福岡県/新国立劇場バレエ研修所予科/マリ・バレエスタジオ)
井上興紀(いのうえ・ともき)(愛媛県/美佳バレエスクール)
■第9期予科生(2年次)
加藤里佳(かとう・りか)(東京都/YARITA BALLET STUDIO)
服部由依(はっとり・ゆい)(兵庫県/ISA BALLET SCHOOL)
吉田朱里(よしだ・あかり)(千葉県/スタジオ アン ドゥ トロワ)
■第10期予科生(1年次)
安達美苑(あだち・みその)(神奈川県/小倉佐知子バレエスタジオ)
菅沼咲希(すがぬま・さき)(神奈川県/小倉佐知子バレエスタジオ)
根本真菜美(ねもと・まなみ)(宮城県/橘バレエ学校仙台教室)
新国立劇場バレエ研修所 次回公演
文化庁委託事業「平成30年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
『エトワールへの道程2019 新国立劇場バレエ研修所の成果』
■日時 2019年3月16日(土)18:00・17日(日)15:00
■会場 新国立劇場 中劇場
■チケット料金 全席指定/3,240円
■アトレ会員先行販売期間 2019年1月11日(金)10:00~
■一般発売日 2019年1月21日(月)10:00~