『くるみ割り人形』新国立劇場バレエ団2017/2018シーズン 新制作

新国立劇場バレエ団の2017/2018シーズンが2017年10月28日(土)に開幕します。

新国立劇場開場20周年を記念するシーズンでもあり、バレエ団ではいつにも増して熱のこもったリハーサルが繰り広げられているようです。

シーズン開幕を飾るのは『くるみ割り人形』です。

新国における『くるみ割り人形』は、2009年から牧阿佐美改訂振付による作品が上演されてきましたが、今シーズン、新国立劇場開場20周年を記念して新制作されます。

振付は、英国ロイヤル・バレエでプリンシパルも務められたウエイン・イーグリング氏です。

個人的には、牧阿佐美版がお気に入りだっただけに、非常に寂しい思いがあります。

その一方で、新製作には様々な思いが込められていることもあり、ウエイン・イーグリング版の新しい作品に対する期待も膨らんできています。

また、私に限らず、牧阿佐美版に慣れ親しんできた新国ファンにとっても、どのような舞台に仕上がるのか、注目が集まっているようです。

そこで、新製作に込められた思い、舞台の概要等について、様々なメディアから得られた情報を整理し、開幕に向けて鑑賞の事前準備をしてみたいと思います。

◆新制作における3つのポイント

①女性主役ダンサーの見せ場(クララ)

②男性主役ダンサーの見せ場(ドロッセルマイヤーの甥、くるみ割り人形、王子の一人三役)

③主役ダンサー以外の見せ場(それぞれ見せ場が多くなっているのでは?)

それ以外にも新製作に込められた思いも考察してみたいと思います。

順番に見ていきたいと思います。

①女性主役ダンサー(クララ)

『くるみ』にはいろいろな版がありますが、直近の新国で上演されていたのは牧阿佐美版です。
牧阿佐美版では、クララにはソリストクラスのダンサーを当て、金平糖の精に主役級のダンサーを当てています。
他の版では、クララにはバレエ学校の生徒を当てているものもあり、この場合、主役級ダンサーが終盤まで登場せずに不満の原因にもなるようです。

新制作では、クリスマスパーティーのシーンでは子役を使い、クララが夢を見始める頃に主役級ダンサーに入れ替わる演出を採用しているそうです。
ここで、金平糖の精(あるいは女王)はどうなるのかという疑問が出てきます。牧阿佐美版では、金平糖の精に主役ダンサーを当てていましたが、新制作では金平糖の精がどうなるのか、その答えは分かりません。
キャストにも金平糖の精(あるいは女王)が見当たらず、正解は開幕を楽しみに待ちたいと思います。

②男性主役ダンサー(ドロッセルマイヤーの甥、くるみ割り人形、王子の一人三役)

牧阿佐美版の男性主役ダンサーは王子として登場しますが、その登場はくるみ割り人形がねずみの王様との闘いに勝利し、王子に変身するまで待たなければなりません。
つまり、くるみ割り人形と王子は別のダンサーが割り当てられています。
新制作では、くるみ割り人形と王子を一人のダンサーが踊ります。さらに、クララが恋する相手として登場するドロッセルマイヤーの甥も同じ主役ダンサーが担当します。つまり、男性主役ダンサーは一人三役をこなさなければなりません。これはかなりの挑戦のようです。

リハーサル映像が公開されていますが、その中で、王子役を務める奥村康祐さんは、「リハーサルのたびに腕を取り換えたいと思うほどハード」であるとコメントしています。

③主役ダンサー以外の見せ場

主役ダンサー以外の見せ場が増えているようです。

いくつか分かっていますが、まず、ねずみの王様の活躍です。
作品の原題が『くるみ割り人形とネズミの王様』ということもあり、ウエイン・イーグリングさんは、ねずみには大活躍してもらうことを考えているようです。

次に、子役です。パーティーの場面では子どもをたくさん登場させるそうです。
子どもを登場させることにより、同年代の観客が自分も踊ってみたいと思わせるのがその意図です。

そして、雪の女王ですが、牧阿佐美版では一人のダンサーが踊りますが、新制作では二人のソリストが「雪の結晶」として踊るようです。
この役には、飯野萌子さんと広瀬 碧さんのコンビ、柴山紗帆さんと渡辺与布さんのコンビが発表されています。

その他、新制作に込められた思いについては、機会をあらためたいと思います。