新国立劇場は、新国理劇場バレエ研修所公演『エトワールへの道程2018 新国立劇場バレエ研修所の成果』を3月24日（土）、25日（日）に上演しました。
25日（日）に鑑賞した内容について第13期生を中心にレポートしたいと思います。
『エトワールへの道程』について
まず、『エトワールへの道程』について説明します。
新国立劇場バレエ研修所は、プロダンサーを目指す方の研修機関であり、研修期間は2年間です。
修了生の多くは新国立劇場バレエ団をはじめ、さまざまな バレエ団でプロのバレエダンサーとして活躍しています。
新国立劇場バレエ団の現役プリンシパルのうち、本島美和さん（第1期生）、小野絢子さん（第3期生）も研修所の終了生です。
『エトワールへの道程』は例年3月に開催され、研修の成果を披露する場ですが、2年次生にとっては修了公演であり、この舞台を最後に研修を終え、それぞれの道を歩み始めることになります。
公演の感想
第1部は、4つの作品の上演と研修生活をまとめた約10分間の映像の上演でした。
『シェヘラザード』は、ミハイル・フォーキン原振付によるアラビアンナイトの世界を表現した艶っぽい演目でした。
原衣梨佳（はら・えりか）さんは、この艶っぽい世界を見事に演じていました。
研修所入所前はこのような演目を踊ることはまず、なかったと思いますが、このような演技力を身につけられたのも研修の成果でしょう。
『パリの炎』は、伊東真梨乃さんと山本達史さん（牧阿佐美バレヱ団/新国立劇場バレエ研修所第10期生）のペアを拝見しました。
この作品は、技術的に非常に難しく、正直、少し心配していましたが、立派に踊り切りました。
伊東さんの踊りはとても素直で、非常に丁寧に踊っているという印象を受け、好感を持ちました。
山本さんは、第10期生で、2018年に東京バレエ団から牧阿佐美バレヱ団に移籍したそうです。
東京バレエ団在籍時には『白鳥』で道化を踊られているようですが、それもうなずけるテクニックの持ち主でした。
『シンフォニエッタ』は、昨年の『バレエ・アステラス 2017』でも同じ出演者で拝見しました。
振付も皆さんの踊りも素晴らしく、非常に気に入っていた作品なので、素直に楽しむことができました。
第2部は、『眠れる森の美女』プロローグと第３幕からの抜粋です。
主演の二人は、両日ともにオーロラ姫は中島春菜さん、デジレ王子は渡邊峻郁（新国立劇場バレエ団/ファースト・ソリスト）です。
新国で大人気の渡邊さんですから、登場した瞬間に会場は大きな拍手に包まれました。
渡邊さんは期待通りの踊りを披露され、ソロでの大技に会場の熱気は最高潮に達しました。
渡邊さんが舞台袖に下がり、その熱が冷めやらぬうちに中島さんはソロを踊り始めることになります。
彼女の心中を察するとこちらまで心臓が飛び出すほど緊張してきます。
しかし、その緊張からはすぐに開放されました。
中島さんが踊り始めるや、渡邊さんの好演により満たされて熱を帯びた空気が一気に入れ替わり、彼女の踊りに観客は引き込まれました。
何事もなかったかのように冷静に自分の踊りをされていたように見えます。
踊りも舞台度胸も、もうプロ級ではないでしょうか。
こういった感覚は、いくらリハーサル室でのリハーサルを積んでも感じられるものではないと思います。
「舞台がダンサーを育てる」とはよく聞きますが、これもそういうことの一つなのかな、と感じました。
修了を迎えて
公演の最後には、この春、研修所での研修を修了する第13期生の6人から終了にあたっての挨拶がありました。
（伊東真梨乃さん、中島春菜さん、長澤マリーヤさん、原衣梨佳さん、荒木研史朗さん、佐藤鴻さん）
皆さん、先生方、関係者の皆さま、家族等への感謝の気持ちを述べていらっしゃいました。
また、当然のことですが、これからのプロダンサーとしての抱負も語られています。
全員が新国立劇場バレエ団に入団する訳ではないでしょうが、それぞれの道を着実に進んで行かれることを期待したいと思います。
第13期生の進路について公式な発表はありませんが、その動向に注視し、この場でシェアする予定です。
公演概要
日時 2018年3月24日（土）15:00開演、25日（日）15:00開演
場所 新国立劇場 中劇場（PLAYHOUSE）
【プログラム・出演者】
◆第1部 15:00～15:50
『ボーイズ・アンシェヌマン』
荒木研史朗、佐藤鴻、仲村啓、渡邊拓朗
『シェヘラザード』よりゾベイダと金の奴隷のアダジオ
原衣梨佳、輪島拓也
『パリの炎』より グラン・パ・ド・ドゥ
長澤マリーヤ(24日) 、伊東真梨乃(25日)、山本達史
『シンフォニエッタ』
中島春菜、多田そのか、渡邊拓朗ほか第14期生、予科生
（休憩 20分）
◆第2部 16:10～17:05
『眠れる森の美女』プロローグ・第３幕より
国王：輪島拓也、王妃：関晶帆
リラの精：原 衣梨佳(24日) 、パーキンソン赤城季亜楽(25日)
＊プロローグ＊
優しさの精：岡田百音(24日)、吉田朱里(25日)
元気の精：山根くるみ
鷹揚の精：山内優奈(24日)、服部由依(25日)
呑気の精：加藤里佳(24日)、山内優奈(25日)
勇気の精：阿部純花
＊第3幕＊
オーロラ姫：中島春菜
デジレ王子：渡邊峻郁
宝石のパ・ド・トロワ：髙井惠里、多田そのか、荒木研史朗(24日)、佐藤鴻(25日)
青い鳥とフロリナ王女のパ・ド・ドゥ：伊東真梨乃・小野寺 雄（24日）/長澤マリーヤ・木下嘉人（25日）