新国立劇場バレエ団は、2019年3月2日(土)~10日(日)、古典の名作『ラ・バヤデール』を東京・初台の新国立劇場にて上演します。
古代インドを舞台とした愛憎劇野主要キャストには、小野絢子さん、米沢 唯さん、福岡雄大さんらベテラン組と柴山沙帆さん、木村優里さん、渡辺与布さん、井澤 駿さん、渡邊峻郁さんらが初役組が挑みます。
今回は、エキゾティックでドラマティックな新国立劇場『ラ・バヤデール』の鑑賞に役立ちそうな情報をお知らせします。
バレエ『ラ・バヤデール』について
舞台は古代インド。
寺院に仕える舞姫・ニキヤと戦士・ソロルは聖なる火の前で愛を誓います。
ソロルは、仕官するラジャ(王侯)から自分の娘ガムザッティとの婚約を命じられ、断ることができずに了承し、ニキヤを裏切ることになります。
ニキヤは、ソロルとガムザッティの婚約披露宴で舞を披露している最中にラジャとガムザッティの陰謀により、花かごに隠されていた毒蛇に噛まれて倒れます。
自分の愛を受け入れることを条件にハイ・ブラーミン(大僧正)は解毒剤を差し出しますが、ソロルの不実に絶望し、死を選びます。
ニキヤを裏切ることになり自責の念に苛まれるソロルは現実から逃避するために水たばこを吸うと、ニキヤの幻想を見ます…
バレエ『ラ・バヤデール』は、1877年にマリウス・プティパによりマリインスキー劇場にて初演されました。
プティパの作品のなかでは、チャイコフスキー作曲による三大バレエには及ばないかも知れませんが、踊りのみどころが豊富なうえにドラマティックな展開を味わうことができる古典の名作で根強い人気があります。
バレエ鑑賞初心者にも是非ご覧頂きたい演目です。
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』(2018/2019シーズン)について
牧阿佐美版『ラ・バヤデール』について
新国立劇場バレエ団がレパートリーとしているのは、当時の芸術監督であった牧阿佐美さんが改訂振付を行い2000年11月に初演された作品です。
新国立劇場バレエ団・前芸術監督デヴィッド・ビントレーさんは「世界で最も美しい『ラ・バヤデール』」と、牧阿佐美版を称賛しています。
2000年に初演して以来、2003、2008、2011、2015年と再演を重ね、今回(2019年)が6回めの上演です。
牧阿佐美版『ラ・バヤデール』の特徴・みどころ
牧阿佐美版『ラ・バヤデール』の特徴・みどころは現代的な感覚のスピーディーな舞台展開とエンディングにあります。
プティパによる初演後に改訂振付が施されていますが、牧阿佐美版ではオリジナル版以降に付け加えられた踊りなどがカットされ、現代人の感覚に合ったスピーディーな展開になっています。
音楽についてはマカロワ版やヌレエフ版『ラ・バヤデール』でも編曲を手がけたジョン・ランチベリー氏が編曲を担当し、このスピーディーな舞台展開の実現に大きく貢献しています。
なお、2000年の初演時にはジョン・ランチベリー氏自らが指揮をしています。
また、『ラ・バヤデール』といえば誰もが思い浮かべる「影の王国」のコール・ド・バレエも大きな見どころです。
ニキヤを裏切り死に至らしめてしまった苦悩から逃れるため、ソロルが水たばこを吸いニキヤの幻想を見るシーンです。
32名の白いチュチュを身にまとった女性ダンサーが列をなし、アラベスク・パンシェを繰り返しながらスロープを降りてくるバレエ・ブランを代表する名場面です。
牧阿佐美版では、広く奥行きのある新国立劇場・オペラパレスの舞台を最大限活用し、このスロープが三段のつづら折りになっていることも特筆すべき点です。
世界に誇る新国立劇場バレエ団の一糸乱れぬコール・ド・バレエからは目が離せません。
『ラ・バヤデール』の結末は、神の怒りにより寺院が崩壊しソロルはニキヤに導かれあの世で結ばれるものと、寺院崩壊の場面をカットし「影の王国」の場面で終わるものの二種類に大別されます。
新国立劇場で上演される牧阿佐美版では、寺院崩壊の場面も上演しますが、ニキヤとソロルはどうなるのでしょうか?
このエンディグが最大の特徴であるといえますが、公式サイトの「ものがたり」を紹介するページでは、崩壊後については触れていません。
是非、劇場で確認し、このドラマの余韻を味わっていただきたいと思います。
2018/2019シーズンのキャスティングについて
『ラ・バヤデール」は、愛憎劇の中心となるニキヤ、ソロル、ガムザッティの三人の演技が舞台の印象を大きく左右します。
小野絢子さんのことばを借りて今回のキャスティングを表現すれば「ベテラン組とフレッシュ組」とのことですが、中間の「折衷組」も加えて三組のキャストといえそうです。
◆ベテラン組:小野絢子(ニキヤ)、福岡雄大(ソロル)、米沢 唯(ガムザッティ)
◆折衷組:米沢 唯(ニキヤ)、井澤 駿(ソロル)、木村優里(ガムザッティ)
◆フレッシュ組:柴山沙帆(ニキヤ)、渡邊峻郁(ソロル)、渡辺与布(ガムザッティ)
福岡さん演じるソロルを小野さん演じるニキヤと米沢さん演じるガムザッティの争いが円熟した演技で魅了するのは、過去の実績から見ても間違いなさそうです。
これに対して、初役の柴山さん、木村さん、渡辺さん、井澤さん、渡邊さんがどのような演技を見せてくれるのでしょうか。
このキャスティングも今回の『ラ・バヤデール』の大きなみどころとなりそうです。
できれば複数のキャストで鑑賞し、印象の異なる舞台を味わいたいですね!
『ラ・バヤデール』の出演状況について
気になったので、新国立劇場における『ラ・バヤデール』の出演状況を整理してみました。
◆小野絢子(2007年入団)
2008年:パ・ダクション ピンク・チュチュ、ワルツ、影たち
2011年:ニキヤ
2015年:ニキヤ
2019年:ニキヤ
◆米沢 唯(2010年入団)
2011年:ジャンペの踊り、パ・ダクション ピンク・チュチュ、影の王国 第3ヴァリエーション
2015年:ニキヤ、ガムザッティ
2019年:ニキヤ、ガムザッティ
◆柴山紗帆(2014年入団)
2015年:パ・ダクション ピンク・チュチュ、影の王国 第1ヴァリエーション
2019年:ニキヤ
◆福岡雄大(2009年入団)
2011年:ソロル、黄金の神像(ブロンズ・アイドル)
2015年:ソロル
2019年:ソロル
◆井澤 駿(2014年入団)
2015年:アダジオ(ソロルの友人)
2019年:ソロル
◆渡邊峻郁(2016年入団)
2019年:ソロル
◆木村優里(2015年入団)
2008年:つぼの踊り・子役
2019年:ガムザッティ
◆渡辺与布(2017年入団)
2019年:ガムザッティ
こうして過去の出演状況をみてみると、小野さんが2008、2011、2015年の公演に出演し、今回が4度目の出演と最多出演を誇ります。
初出演となるのは、渡辺峻郁さん、渡辺与布さんの二人です。
「木村優里さんも初出演では?」と思う方も多いかと思いますが、2008年の公演に子役で出演しています!(´▽`)
ということは、木村さんの新国『ラ・バヤデール』デビューは小野絢子さんと同じ2008年の公演ですね!
ちなみに、このとき「つぼの踊り」で子役として一緒に出演していたのは、牧阿佐美バレヱ団で活躍中の阿部裕恵さんです。
「つぼの踊り」の子役は、将来、スターへの道が開かれているということでしょうか!?
踊りとともにドラマティックな展開も味わうことができる『ラ・バヤデール』で古典名作の醍醐味を堪能してください!
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』(2018/2019シーズン)公演概要
■日程:2019年3月2日(土)~10日(日)
■会場:新国立劇場 オペラパレス(京王新線・都営新宿線「初台駅」中央口直結)
■スタッフ
音楽:レオン・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧 阿佐美
装置・衣装:アリステア・リヴィングストン
照明:アリステア・リヴィングストン/磯野 睦
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京交響楽団
■キャスト
3/2(土)14:00 ニキヤ:小野絢子、ソロル:福岡雄大、ガムザッティ:米沢 唯
3/3(日)14:00 ニキヤ:米沢 唯、ソロル:井澤 駿、ガムザッティ:木村優里
3/9(土)13:00 ニキヤ:柴山紗帆、ソロル:渡邊峻郁、ガムザッティ:渡辺与布
3/9(土)18:00 ニキヤ:小野絢子、ソロル:福岡雄大、ガムザッティ:米沢 唯
3/10(日)14:00 ニキヤ:米沢 唯、ソロル:井澤 駿、ガムザッティ:木村優里
■チケット
S席\12,960/A席\10,800/B席\7,560/C席\4,320/D席\3,240
公演の詳細は新国立劇場公式サイトをご確認ください。
>>> 新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』