英国ロイヤル・バレエのプリンシパル フランチェスカ・ヘイワードが主演した話題のミュージカル映画『CATS キャッツ』が2020年1月24日(金)に公開されました。
この映画は大物俳優・歌手など大勢の豪華キャストが出演していますが、フランチェスカ・ヘイワードが主演しているということもあり、バレエファンの間でも注目を集めています。
フランチェスカ・ヘイワード以外にもニューヨーク・シティ・バレエの元プリンシパル ロビー・フェアチャイルド、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル スティーヴン・マックレーも出演しており、バレエファンにとっては必見の映画です。
今回は、バレエファンが映画『キャッツ』を楽しむための情報をお伝えします!
映画『キャッツ』
映画『キャッツ』について
最初に映画『キャッツ』について簡単に触れたいと思います。
映画『キャッツ』の元になったのは、アンドリュー・ロイド=ウェバーがイギリスの詩人T.S.エリオットの詩集をもとに制作したミュージカルで、1981年にロンドンで初演されて以来、世界中で愛され続けています。
日本では劇団四季が上演しており、通算公演回数は10,000回を超えて現在もロングランを続ける不朽の名作です。
映画『キャッツ』は、ミュージカル版をそのまま映画化した訳ではなく、演出も振付も一新されています。
ミュージカル版では主要な役ではなかったヴィクトリアを主役に据え、彼女の視点から見たジェリクルキャッツという猫の世界を描いています。
そのため、観客は彼女とともにジェリクルキャッツの世界を探検していくことになります。
映画『キャッツ』のストーリーでとても重要だと思われるのが、ジェニファー・ハドソン演じる誰からも愛されない孤独な猫クリザベラの存在です。
どうして彼女は愛されないのか、そのように至った経緯こそが、この映画から受ける感動の大きさを左右するように思われたのですが、一回見ただけでは、はっきりとは分かりませんでした。
それでも『キャッツ』といえば曲名を知らずとも誰もが聞いたことのある名曲『メモリー』の偉大な力で見る人の感情を大きく揺さぶるのですが、ミュージカル版の解説などを読んでクリザベラについて知っておくと、この映画をより楽しめるのではないかと思います。
映画では当たり前のように語られる「ジェリクルキャッツ(jellicle cats)」という言葉の意味は、ミュージカルでもはっきりと説明されていないそうで、諸説あるようです。
ニューヨーク・シティ・バレエでプリンシパルとして活躍し、ミュジージカル『キャッツ』にも英国、米国、日本の公演に出演した経験をお持ちの堀内 元さんならではの解釈をインタビューなどで説明されています。
ミュージカル版の解説や堀内 元さんのインタビュー記事など、映画『キャッツ』を鑑賞する際に役立つリンク集をこの記事の終わりの方で紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
『キャッツ』世界待望の新予告
(YouTube / ユニバーサル・ピクチャーズ公式チャンネル)
バレエファンにとっての映画『キャッツ』の魅力とは?
バレエファンにとり、映画『キャッツ』の魅力は、フランチェスカ・ヘイワード(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)、ロビー・フェアチャイルド(元ニューヨーク・シティ・バレエ プリンシパル)、スティーヴン・マックレー(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)といった世界的なバレエダンサーが3名も出演していることではないでしょうか。
また、日本語吹替版ではバレエをはじめ様々なジャンルのダンスを踊りこなす、ダンサー出身の大貫勇輔さんがスティーヴン・マックレー演じる鉄道猫スキンブルシャンクス役の声優を務めています。
ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードはもちろん、彼女を導くマンカストラップ役のロビー・フェアチャイルドはストーリーの展開に関わり、全編を通して出演しています。
見事なバレエのみならず、他のジャンルのダンスや演技さらには歌声まで披露しており、バレエの舞台とは異なる様々な表情を見ることができます。
鉄道猫スキンブルシャンクスの最大の見せ場はタップダンスであり、フランチェスカ・ヘイワードに至っては圧巻のバレエはもちろんのこと、予想だにしなかった美しい歌声も観客を魅了しています!
次は、映画『キャッツ』に出演している世界的バレエダンサー3名についてご紹介します。
映画『キャッツ』に出演している世界的バレエダンサー
映画『キャッツ』には、人間に捨てられ「ジェリクルキャッツ」の世界に迷い込んだ若く臆病な子猫ヴィクトリアを演じるフランチェスカ・ヘイワード(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)、ヴィクトリアに「ジェリクルキャッツ」の社会を案内するマンカストラップ役のロビー・フェアチャイルド(元ニューヨーク・シティ・バレエ プリンシパル)、鉄道猫のスキンブルシャンクス役のスティーヴン・マックレー(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)といった世界的なバレエ団の現役・元プリンシパルダンサーが3人も出演しています。
さすがに、主役のヴィクトリアは多くのメディアに取り上げられていますが、出番も多い割にロビー・フェアチャイルドはあまりメディアに取り上げられていないのか、映画を観て初めて出演していることを知りました。
スティーヴン・マックレーに至っては、パンフレットを念入りに確認しましたが名前を見つけることができませんでした。
鉄道猫のスキンブルシャンクスがタップダンスを踊っている姿を見て、もしかするとスティーヴン・マックレーではないかと勘づきましたが、見事なまでに猫に成り切っており、確信にまでは至らず、鑑賞後にいろいろ調べてみてやっとスティーヴン・マックレーが演じていることを知ったほどです。
バレエファンにとってはおなじみの3人ですが、映画『キャッツ』を見て興味を持った方も少なくないのではないでしょうか。
ここで、あらためて3人について簡単に紹介したいと思います。
フランチェスカ・ヘイワード
フランチェスカ・ヘイワード/Francesca Hayward【ヴィクトリア役】
英国ロイヤル・バレエ プリンシパル
2003–11 英国ロイヤル・バレエ・スクールで学ぶ
2010/11シーズンから英国ロイヤル・バレエ入団
2013年 ファースト・アーティストに昇格
2014年 ソリストに昇格
2015年 ファースト・ソリストに昇格
2016年 プリンシパルに昇格
フランチェスカ・ヘイワードは子どもの頃にビデオでミュージカル版『キャッツ』を見ていて、ヴィクトリアの踊りを真似していたほど大好きだったそうです。
2003年から2011年まで、名門英国ロイヤル・バレエ・スクールで学び、英国ロイヤル・バレエ入団後は順調にキャリアを積み、短期間で最高位であるプリンシパルに昇格しています。
フランチェスカ・ヘイワードは、映画『キャッツ』に出演した経験から多くのことを学び、女優としても活動の幅を広げたいと考えているようです。
映画をご覧になった方は、フランチェスカ・ヘイワードの才能を持ってすれば女優としても大成功できることを疑わないと思いますが、バレエファンとしては少し複雑な心境です。
しかし、ご安心を。
「本業であるバレエをおろそかにしない程度」に挑戦したいと、あくまでもバレエを優先することを明言しています。
『キャッツ』 <ヴィクトリア>キャラクター映像
(YouTube / ユニバーサル・ピクチャーズ公式チャンネル)
Francesca Hayward on Ballet, Cats & Taylor Swift
(YouTube / Jimmy Kimmel Live 公式チャンネル)
アメリカのテレビ番組「ジミー・キンメル・ライブ! (Jimmy Kimmel Live!) 」にフランチェスカ・ヘイワードがゲスト出演したときの映像が公開されています。
ハリウッド・スター顔負けの華やかさと美しさです!
また、フランチェスカ・ヘイワードは、バレエ映画『ロミオとジュリエット(原題:ROMEO AND JULIET: Beyond Words)』にもジュリエット役で主演しています。
この映画は、日本では2020年3月6日(金)からTOHOシネマズシャンテ 他で、全国ロードショーされることが決まっています。
16世紀のヴェローナの街並みを再現して撮影された画期的なバレエ映画『ロミオとジュリエット』は、フランチェスカ・ヘイワードとウィリアム・ブレイスウェルが主演し、英国ロイヤル・バレエの新世代ダンサーが出演しているバレエファン注目の映画です。
英国ロイヤル・バレエ団の元ダンサーで、コンテンポラリー・ダンス・カンパニー、ドキュメンタリー映像制作などでも活躍しているバレエ・ボーイズ(BalletBoyz)のウィリアム・トレヴィットとマイケル・ナンが制作・監督を務めており、予告編映像を見る限り、バレエとしても映画としても十二分に楽しめることが期待できる作品です。
フランチェスカ・ヘイワードは英国ロイヤル・バレエのプリンシパルとして様々な公演に主演していますが、NHK プレミアムシアターで放送された英国ロイヤル・バレエのリアム・スカーレット版『白鳥の湖』では、高田 茜、アレクサンダー・キャンベルとともにパ・ド・トロワを踊っており、ご覧になった方も多いのでは。
この映像はDVD/Blu-rayとしても発売されています。
DVD/Blu-rayでは、その他に主要な役で出演しているものに『くるみ割り人形』があります。
フランチェスカ・ヘイワードのクラシック・バレエを踊る姿を見たい方にはオススメです。
(残念ながら、2020年1月時点では主演している舞台映像は発売されていません)
ロビー・フェアチャイルド
ロビー・フェアチャイルド/Robbie Fairchild【マンカストラップ役】
元ニューヨーク・シティ・バレエ プリンシパル
ロバート・フェアチャイルド(Robert Fairchild)とも。
アメリカ合衆国 ユタ州 ソルトレークシティー出身
2006年 ニューヨーク・シティ・バレエ入団
2009年 プリンシパルに昇格
2017年 ニューヨーク・シティ・バレエ退団
ニューヨーク・シティ・バレエ在籍中からミュージカルにも出演し、2015年のトニー賞では、クリストファー・ウィールドン振付『パリのアメリカ人』に主演し、主演男優賞にノミネートされました。
映画『キャッツ』では、「ジェリクルキャッツ」の世界に迷い込んだフランチェスカ・ヘイワード演じる主人公ヴィクトリアを導く兄貴肌のマンカストラップを演じ、映画全編を通して登場します。
『キャッツ』 <マンカストラップ>キャラクター映像
(YouTube / ユニバーサル・ピクチャーズ公式チャンネル)
スティーヴン・マックレー
スティーヴン・マックレー/Steven McRae【鉄道猫のスキンブルシャンクス役】
英国ロイヤル・バレエ プリンシパル
オーストラリアのシドニー出身
2002年にアデリン・ジェニー国際バレエコンクール金賞を受賞。
2003年にはローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを受賞し、英国ロイヤル・バレエ・スクールに留学しています。
2004年にロイヤル・バレエ・スクールを卒業し、英国ロイヤル・バレエ団に入団。
2005年にファースト・アーティスト、2006年にソリスト、2008年にファースト・ソリスト、2009年にプリンシパルに昇格
『ダンスマガジン』(新書館)による「ダンサー・ベストテン2019」(最新)では、男性4位に入るなど、日本でも人気の高いダンサーで、技術力の高さと演技力に定評があります。
最近は怪我に見舞われる不運が続いていますが、その都度、不屈の精神で舞台復帰を果たしています。
映画『キャッツ』では鉄道猫のスキンブルシャンクス役で出演し、見事なタップダンスを披露していますが、英国ロイヤル・バレエでもクリストファー・ウィールドン振付の『不思議の国のアリス』でもマッド・ハッタ―役としてタップダンスを踊り、唯一無二の存在感を放っています。
『キャッツ』 <スキンブルシャンクス>キャラクター映像
(YouTube / ユニバーサル・ピクチャーズ公式チャンネル)
どの版で観る?
IMAX・字幕版 / Dolby-ATMOS字幕版 / 字幕版 / 吹替版
映画『キャッツ』といってもシアター数の多い映画館では、いくつかの版が公開されています。
例えば、TOHOシネマズ日比谷では、IMAX・字幕版、Dolby-ATMOS・字幕版、字幕版、吹替版の4種類の版があります。
映画鑑賞に慣れている方には説明不要ですが、あまり映画館に行かない方は戸惑ってしまうかと思います。筆者は戸惑いました(;’∀’)
日本語吹替版で鑑賞する方には選択の余地はありませんが、字幕版の場合には、通常の字幕版に加えて音響や映像などにハイテクを駆使してより臨場感を高める工夫がなされているIMAX版とDolby-ATMOS版も選択することができます。
臨場感は高いに越したことはありませんが、その分、追加料金が必要となりますので、お財布と相談しながら、お好みに合わせて選んでみてください。
■IMAX・字幕版(シアター全体がIMAX仕様にカスタマイズされ、リアルな臨場感を体感できます。追加料金:500円)
■Dolby-ATMOS・字幕版(ドルビー社の音響システムを使用。追加料金は劇場によって異なります。100~200円)
■字幕版
■吹替版
詳細は、ご覧になる映画館のサイトなどでご確認ください。
映画『キャッツ』関連情報
映画『キャッツ』に対する理解を深めるための関連情報をお知らせします。
映画『キャッツ』オリジナル・サウンドトラック
バレエダンサーの歌声を聴くことができる!
ミュージカル版『キャッツ』で使用される曲には、ミュージカルを見たことのない方でもよく知っている楽曲が数多くあります。
当然ですが、映画『キャッツ』の中では本業がダンサーの方も実際に歌っています。
中でも注目すべきは、フランチェスカ・ヘイワードのピュアな歌声です!!!
フランチェスカ・ヘイワードの踊りを見たいがために映画『キャッツ』を鑑賞した訳ですが、あまりの美美しい声にダンス同様、いやそれ以上に酔いしれたかもしれません!!!
ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードが歌っているのは、アンドリュー・ロイド=ウェバーとテイラー・スウィフトが映画のために書き下ろし、ヴィクトリアズ・ソングとも呼ばれている新曲『ビューティフル・ゴースト』です。
フランチェスカ・ヘイワードは、「マンゴジェリー・アンド・ランペルティーザ」や「ミスター・ミストフェリーズ」「メモリー」などの楽曲にもfeat.されています。
【DVD/Blu-ray】ミュージカル『キャッツ』
映画の元となったミュージカルを映像で!
映画『キャッツ』を鑑賞し、その元となったミュージカル版『キャッツ』を見てみたいと思った方も多いかと思います。
ミュージカル版を見たことがある方はもちろん、見たことがない方にとっては作品の理解を深めるためにもとても有益であると思います。
【詩集】T.S.エリオット『キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法』
ミュージカル『キャッツ』の原作となったT.S.エリオットの詩集!
ミュージカル『キャッツ』の原作は、ノーベル賞作家のThomas Stearns Eliot(T.S.エリオット)の詩集『The Old Possum’s Book of Practical Cats(キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法)』です。
原作に関心を持たれた方のみならず、猫好きの方など、猫とのつき合い方を学びたい方にとっても興味深いのではないでしょうか。
また、『キャッツ』の原作(ちくま文庫)の訳者でもある早稲田大学の池田雅之教授の著書『猫たちの舞踏会―エリオットとミュージカル「キャッツ」』(角川ソフィア文庫)も作品の理解を手助けしてくれそうです。
映画『キャッツ』関連リンク
映画『キャッツ』は多くのメディアで取り上げられていますが、とても参考になったサイトのリンクを紹介します。
■映画『キャッツ』公式サイト:映画『キャッツ』公式サイト
■ミュージカル『キャッツ』のサイト:劇団四季 CATS キャッツ
■エンタメ特化型情報メディア スパイス:
【映画公開記念ビッグ対談】安倍寧&堀内元~語り尽くせぬ『キャッツ』の魅力
■Chacott DANCE CUBE WEB MAGAZINE:ミュージカル『キャッツ』のミストフェリーズをブロードウェイとウエストエンド、そして日本の3カ国で2000回以上も踊った、堀内元=インタビュー
■フランチェスカ・ヘイワードのインタビュー:
テイラー・スウィフトが目前で…『キャッツ』主演女優の鳥肌が立ったワケ(an・an web)
最後に
バレエファンが映画『キャッツ』を楽しむために有益な情報をお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。
とにかく、全編を通してフランチェスカ・ヘイワードの魅力にあふれた映画で、この映画鑑賞をきっかけに彼女に興味を持った方も多いようです。
『ダンスマガジン』(新書館)による「ダンサー・ベストテン2019」(最新)では残念ながら圏外でしたが、フランチェスカ・ヘイワードが主演し、英国ロイヤル・バレエのダンサーが出演しているバレエ映画『ロミオとジュリエット』も3月に公開されることから、2020年は日本でもフランチェスカ・ヘイワードの人気が一気に高まるのではないでしょうか。
映画を見たらミュージカル版に興味を持った方も多いかと思います。
逆にミュージカル版が好きな方が映画を見た場合には、踊りも演出も異なっており、戸惑った方も少なくないかもしれません。
映画をミュージカル版の映画化とは考えずに新鮮な気持ちで鑑賞すると、新たな感動を経験するかもしれません。
筆者はミュージカル版『キャッツ』を見た経験がないこともあり、映画を見ただけでは理解できなことがたくさんありました。
ミュージカルを見ればその疑問の全てが解けるのかどうかは分かりませんが、元となったミュージカルはどのようなものなんだろうと、大いに関心を持ちました。
バレエファンがこの映画を見てミュージカルに関心を持ったように、ミュージカルファンもこの映画を見てバレエに関心を持っていただけたら嬉しく思います。