新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』(2017/2018シーズン)鑑賞レポートです。
お約束どおり、3回連載の第2回レポートです。
(その1)では、主役(オデット/オディール、ジークフリード王子)を中心に感想を述べましたが、今回は主役以外の主要な配役についての感想が中心になります。
それでは、早速、役ごとに感想を述べていきたいと思います。
主役以外の主要な配役
ロートバルト
ロートバルトは、貝川鐵夫さんと小柴富久修さんのダブルキャストでした。
貝川さんは、過去の公演でもこの役を何回も踊っており、ロートバルトの何たるかを熟知されているように思います。
長身から繰り出される、鳥の動きを思い起こさせる動きが板についており、「これぞロートバルトだ」という存在感を示されました。
小柴さんも長身で、端正な佇まいのダンサーですが、ロートバルトは初役ではないでしょうか。(2015年の公演ではキャスティングされていません)
なかなかお似合いでした。
道化
道化は、井澤諒さん、福田圭吾さん、小野寺雄さんのトリプルキャストです。
道化といえば、八幡顕光さんのイメージがありますが、八幡さんが登録ダンサーに移行された今、筆頭に上がってくるのは福田圭吾さんではないでしょうか。
そのイメージ通り、超絶技巧を繰り出し、会場を大いに沸かせました。
また、木下嘉人さんもテクニックに定評があり、道化のイメージがありますが、今回はキャスティングされていません。
その代わりに2017年にK-BALLET COMPANYから移籍された井澤諒さんが、新たにキャスティングされました。
新国移籍後の起用方法を思い起こすと、昨年末(2017年12月)の『シンデレラ』でも道化にキャスティングされ、『『白鳥』では道化に配役されそうな雰囲気がありましたが、やはりその通りでした。
切れのある動きは期待通りで、着地の際に音をさせない爪先を丁寧に使った踊りには脱帽します。
また、小野寺さんも道化のような技術が求められる配役が定着化してきており、今回も期待を裏切らない踊りに客席からは拍手と声援が贈られていました。
パ・ド・トロワ
パ・ド・トロワは、「寺田亜沙子、細田千晶、奥村康祐」、「池田理沙子、柴山紗帆、木下嘉人」、「奥田花純、飯野萌子、渡邊峻郁」のトリプルキャストです。
このメンツを見れば、素晴らしい踊りであろうことは想像に難くありませんが、飯野さんにとっては少しプレッシャーだったかもしれません。
着実にステップアップし、重要な役を任されてきていますが、『白鳥』のパ・ド・トロワは初役ではないでしょうか。
5月3日(木・祝)のソワレ公演のときは、硬くなっていたのか、少し調子が悪かったように見受けられました。
5月5日(土・祝)の際、リベンジを期待しましたが、期待通りの素晴らしい踊りを披露していただきました。
小さい4羽の白鳥
「小さい4羽の白鳥」といえば、4人のダンサーが手を組み踊る一糸乱れぬ揃った動きが一番の見せ場ではないでしょうか。
今回は、池田理沙子さん、奥田花純さん、五月女遥さん、広瀬碧さんというなんとも贅沢なキャスティングです。
シングルキャストで、全ての公演をこの4人で踊りました。
7回の公演のうち5公演を拝見しましたが、その全ての公演で圧巻の揃い方でした!
脚の動きだけに注目して観れば8本の脚が恐ろしいくらいに協調された動きを見せ、耳を澄ませば連続するパ・ド・シャの着地音は一人で踊っているのでははないかと錯覚するほどです!!!
五月女さんと広瀬さんの二人がジャンプしながら片脚をうねらせる動き(動きの名前が分からず申し訳ございません。きちんと調べます)も二人の動きが同調し、とくにジャンプに繋げる予備動作でのアームスと上半身の美しいことといったらこの世のものとは思えません!!!
バレエのレッスンを受けると、「肩甲骨から腕だと思って動かして~」といった指導を受けることが少なくないと思います。
なんとなく分かったつもりでいますが、五月女さんと広瀬さんの動きを観て、初めて真実を目の当たりにした気がしました!
こういうことか~!ガッテン!できるかどうかは別ですが・・・(;’∀’)
帰り際にすれ違った観客からも「小さい4羽の白鳥、凄かったね~!」という会話が聞こえてきましたが、見知らぬ人にも関わらず「でしょ!凄かったですよね~!」と言ってしまいそうになりました。(笑)
小さな4羽の白鳥の素晴らしさは特筆ものです!!!
大きい4羽の白鳥
大きな4羽の白鳥は、寺田亜沙子さん、細田千晶さん、渡辺与布さん、玉井るいさんの4名のシングルキャストです。
それぞれの動きは素晴らしいのですが、一緒になると異質な感じを受けました。
バックグラウンドの違いなのか、しっくりくるまでには、もう少し時間が必要なのかもしれません。
スペインの踊り
スペインの踊りです。
女性は、本島美和さんと渡辺与布さんの組、川口藍さんと益田裕子さんの組の計2組がキャスティングされました。
男性は、小柴富久修さんと中島駿野さんの組、木下嘉人さんと清水裕三郎さんの計2組がキャスティングされました。
女性と男性の組み合わせは固定ではなく日によって変わることにより、計3パターンの組み合わせとなっていました。
本島美和さんはルースカヤを踊ることも多かったかと思いますが、今回はスペインのみで残念でしたが、やはり圧倒的な存在感で魅せてくれました。
益田さんもスペインの踊りのスペシャリストとして、多くの公演で踊ることが多いかと思いますが、渡辺さんと川口さんも最近はスペインの踊りを任せられる機会が増え、新たなスペインのスペシャリストになってきているのだと感じます。
脚はずるっと滑るような動きをして、上半身を思いっきり反る動き(これもまた名前が分かりません)では益田さんの切れが抜群で、体は大丈夫なのかと心配してしまうほどです。(笑)
男性陣ですが、スペインの踊りを左右するのは、踊りの上手さはもちろん、いかに暑苦しいくらいの濃さを出すか、という点に注目して拝見しました。
この点では登録プリンシパルのマイレン・トレウバエフさんの右に出る者はいません。
今回の4人のなかでは、木下さんと清水さんはかなりの濃さを出すことに成功していたように感じます。
もちろんそれだけではないのですが、あくまでも個人の視点です。(笑)
ナポリの踊り
ナポリの踊りは、女性が奥田花純さんと五月女遥さんの組に男性の井澤諒さんもしくは小野寺雄さんが組むという組み合わせと、池田理沙子さん、広瀬碧さん、原健太さんの組み合わせで合計3組になりました。
女性は、小さい4羽の白鳥を踊った4人が2組に分かれた格好ですが、ここでも息の合った踊りを披露されました。
軽やかで愛らしい踊りなので、ほっこりとした気分で観ていますが、早いテンポで動きを合わせるのはかなり大変なはずです。
それが合っているのですから気分爽快です!!!
ルースカヤ
ルースカヤは、寺田亜沙子さん、細田千晶さん、木村優里さんの3名です。
図らずも、全員、新国立劇場バレエ研修所OGです。
一番先輩の寺田さんが初役というのが意外ですが、この3人はやはり踊りは上手いうえに表情が素晴らしいですね。
新国『白鳥』鑑賞レポートのつづきについて
今回は「その1」主役中心の感想につづき、「その2」として主役以外の主要な役柄を中心に感想を綴りました。
「その3」は「番外編」として舞台以外にも着目したいと思います。
今回も最期までお読みいただき、有り難うございます。
続編もよろしくお願いいたします。
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