【鑑賞レポ】新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』(2017/2018シーズン)(その1)

新国立劇場バレエ団は、2018年4月30日(月・祝)から5月6日(日)の期間に『白鳥の湖』を上演しました。

6日間、7公演を4組のキャストで上演し、観客を魅了しました。

7公演のうち5公演、4組のキャストで鑑賞した感想を記します。

ブログは3回に分けることとし、日にちごとではなく、役柄ごとに記します。

まず、「その1」として主役の感想を中心に、「その2」では主役以外の主要な役柄を中心に、「その3」は「番外編」として舞台以外にも着目して、それぞれ記したいと思います。

新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』(2017/2018シーズン)

新国立劇場の2017/2018シーズンは、チャイコフスキー3大バレエを同じシーズンに上演するとても贅沢なシーズンです。

シーズン開幕を『くるみ割り人形』の新制作(ウエイン・イーグリング版)で飾りましたが、今回は『白鳥の湖』です。

さて、主役であるオデット/オディールを踊るのは、プリンシパルである小野絢子さん、米沢唯さん、ソリストである柴山紗帆さん、木村優里さんの4人です。

このうち、柴山さんと木村さんはオデット/オディールデビューの舞台となりました。

一方の主役であるジークフリード王子は、プリンシパルの福岡雄大さん、奥村康祐さん、井澤駿さん、ファースト・ソリストの渡邊峻郁さんの4人が配役されましたが、唯一、渡邊さんだけが初役でした。

また、新国が『白鳥』を上演した直近の公演は、2015年6月ですが、それから約3年が過ぎ、ダンサーの入退団も比較的多かったことから、主役以外の主要な役についても新鮮なキャスティングが注目されたのではないでしょうか。

新国立劇場バレエ団の公演を鑑賞するようになって約10年経ち、その間、『白鳥』も何度も鑑賞しましたが、今回は、いままでの新国の魅力はそのままに、さらに新たな魅力も感じることができた公演でした。

新国の舞台で鑑賞した『白鳥』は牧阿佐美版のみのため同じ内容ですが、キャストにより舞台から受ける印象は異なり、また、同じキャストでも、当然のことながら日によっては出来栄えも違ってきます。

何度観ても飽きるどころか、ますます作品の魅力に引き込まれます。

鑑賞の感想(主役を中心に)

今回は、主役であるオデット/オディールとジークフリード王子を中心に記します。

オデット/オディール

今シーズンのオデット/オディールは、今や円熟期に差し掛かったといえる小野さんと米沢さんの舞台に対し、今回が初役の柴山さんと木村さんの挑戦という大きな見どころがありました。

劇場側でそのような意図があったのかは分かりませんが、多くの観客を楽しませる意味でも、ダンサーを育てる意味でもとてもバランスが良かったように感じます。

小野さんも米沢さんはダンサーとしての力量、経験ともに申し分ありません。

お二人の舞台は何度も拝見しているので、ある程度、想像はできるのですが、やはり、実際に観てみると予想通りの素晴らしい舞台なのですが、それ以上に進化している姿に驚かされました。

柴山さんと木村さんは、他の演目での主役の経験はお持ちとはいえ、オデット/オディールは別格ではないでしょうか。

オデットとオディールの演じ分け、物語が進むにつれて変化するこころの移ろうさまを如何に表現するのか、役柄をどのように解釈するのか、などなど。

また、舞台を作り上げていくうえで他の演目に比べて格段に主役の重要性が増します。

体力面では、かなりの運動量であり、しかも、疲労が蓄積されてきた終盤に大きな見せ場の32回転グランフェッテが待ち受けています。

主役のキャスティングが発表されたときの二人の緊張感たるや、相当なものだったでしょう。

その大役をお二人は見事に演じ切りました。

四者四様のそれぞれのオデット/オディールを踊られました。

細かいことを文字で伝えられるだけの表現力がありませんが、四人とも異なる方向性のように感じられ、どれもがそれぞれの魅力を持った素晴らしい舞台でした。

なかでも個人的には、柴山さんのオデットの演技に心を鷲掴みにされたようで、最も印象的でした。

派手さや驚異的な技術というものではなく、私には説明できない何かによって舞台にぐんぐん引き寄せられた、という感覚です。

内に秘めた思いを繊細に表現することにより、それゆえ、観る者のうちにある感情を呼び覚ましたのかもしれません。

今思えば、これは感情を露骨に表出することを良しとしない日本人ならではでのオデットだったようにも思います。

あのときの感動を無理やり言語化しようと試みるも、いまだにできないことが残念です。

柴山さんと木村さんのオデット/オディールデビューについては2018年5月5日の記事をご覧ください ⇒ こちら

ジークフリード王子

ジークフリード王子のトップバッターは井澤駿さんです。

技術、演技、パートナーリングの全ての面で順調に成長されている気がします。

今回のお相手は米沢さんでしたが、その米沢さんは新国に移籍後は現バレエ・マスター兼プリンシパルの菅野英男さんと組むことが多かったように思います。

米沢さんは、また、シーズン・ゲスト・プリンシパルであるワディム・ムンタギロフさんと組むことも多く、舞台経験とパートナーリングの面では、井澤駿さんに比べて大先輩です。

そういった面で、井澤さんが米沢さんに追いつくにはもう少し経験が必要ではないかと思います。

もともと実力のあるダンサーですが、それでも観るたびに成長しているのが分かるほど、吸収力があるように感じ、成長の余地がまだまだ残っているのかと驚かされます。

まだ、若いプリンシパルですので、これからまだまだ成長が期待できると思う舞台でした。

福岡雄大さんは、説明がまったく不要なくらい、全ての面において完成度の高いダンサーではないでしょうか。

一つの完成形として、唸るしかありません。「う~ん、素晴らしい」

コメントできずに申し訳ございません。

小野さんとのパートナーリングは鉄壁で、小野さんがどのような演技をされても、例えば、アドリブが飛び出したとしても、全く動じずに完璧に応じる、そんな風に感じさせる抜群の安定感を持っているように思います。

渡邊峻郁さんにとってジークフリード王子は初役です。

厳密にいえば、こどものためのバレエ劇場で2016年にジークフリード王子を踊られていますが、お子様にも無理なく鑑賞できるようにアレンジされているものですので、全幕の『白鳥』ではという意味です。

このときも木村さんと組まれていますので、木村さんのオデット/オディールデビューというのも厳密には、全幕の『白鳥』ではということです。

そういった意味でも、もっとも初々しいジークフリード王子ではないでしょうか。

第3幕のロートバルトとオディールにだまされるとき、「なんでだまされるかなぁ、バカ王子!」と思う観客も多いかと思いますが(笑)。

しかし、渡邊さん演じるジークフリード王子であれば、「もう、だめなんだからぁ。でも、とても純粋だから仕方ないのね」と萌え、第4幕の木村さん演じるオデットに許しを請うところでは「もう、許しちゃう♡」となる女子が大量発生したのではないでしょうか!?

そんな母性をくすぐるような王子でした。

しかし、なよなよした王子という訳ではなく、オデット/オディール演じる木村さんとの作品の解釈、役作りが奏功し、二人の『白鳥の湖』を作り上げたという印象を受けました。

それは、ともに『白鳥』の主役デビューの舞台であったことが大きかったのかもしれません。

奥村さんは、溌剌とした踊りが魅力で、パートナーリングでも抜群の信頼を得ているプリンシパルですが、今回は、柴山さんの演じるオデット/オディールが観客を引き付ける力に押されてしまい、少々影が薄かった印象です。

柴山さんのオデット/オディールが前面に出過ぎている訳ではなく、むしろ控えめに感じるのですが、そこに柴山さんの表現の特徴があったのかもしれません。

奥村さんは、王子として、オデット/オディールのそんな繊細な表現を引き立たせるように振る舞ったのかもしれません。

こう書いてくると、これは深読みだと思いますが、そんな表現も、観客の気持ちを舞台に引き込むことに成功した要因にさえ思えてきました。

新国『白鳥』鑑賞レポートのつづきについて

今回は主役を中心に感想を綴りましたが、『白鳥の湖』という演目は、見どころが豊富であり、また、『白鳥』の世界観を作り上げるためにはバレエ団全体の質の高さが必要不可欠です。

次回は、「その2」を、さらにその次は「その3(番外編)」をお届けします。

「その2」では主役以外の主要な役柄を中心に、「その3」は「番外編」として舞台以外にも着目して、それぞれ記す予定です。

かなり、個人的な意味不明の感想ですが、最期までお読みいただき、有り難うございます。

よろしければ続編も楽しみにしてください。

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