【鑑賞レポ】新国立劇場 オペラ『魔笛』舞台稽古見学会 《英語字幕も好評!》(2018年10月)

新国立劇場 オペラ 2018/2019シーズンは、いよいよ2018年10月3日(水)18:30に開幕します!

2018/2019シーズン開幕公演は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの『魔笛』(新制作)です。

大野和士さんが新国立劇場オペラ部門の芸術監督就任後に上演する最初の作品でもあります。

舞台の本公演に先立ち、10月1日(月)に舞台稽古見学会が開催されました。

今シーズンから英語字幕も表示され、観客に好評のようでした。

幸運にもこの記念すべき公演の舞台稽古を拝見することができましたので、その様子を報告したいと思います。

舞台稽古見学会

劇場関係者のご挨拶

舞台稽古見学会の開催に際して劇場関係者からのご挨拶がありました。

新国立劇場における『魔笛』は、1998年5月新国立劇場初演以来のレパートリーであったミヒャエル・ハンペ演出によるプロダクションでしたが、今回上演されるのは、ウィリアム・ケントリッジ演出による新制作です。

なお、今シーズンから芸術監督に就任された大野和士さんは、1998年に初演された『魔笛』で新国立劇場での指揮者デビューを果たしたそうです。

また、従来は日本語字幕のみの表示でしたが、今シーズンから一部の演目においては日本語字幕表示に加えて英語字幕も表示し、国際発信力強化に努めるとのことでした。

大野和士芸術監督の就任

今シーズンから新芸術監督が就任しています。

トップが代われば、いろいろなことにも変化があるかと思います。

感想の前に2018/2019シーズンから芸術監督に就任された大野和士さんの方針についておさらいをしてみたいと思います。

大野監督は、ヨーロッパの3つの歌劇場でキャリアを積み、満を持しての新国立劇場 オペラ 芸術監督に就任しました。

就任にあたり「5つの柱」を掲げて方向性を明確に示されました。

【大野監督が掲げる5つの柱】

レパートリーの拡充
日本人作曲家委嘱作品シリーズの開始
2つの1幕物オペラ(ダブルビル)の新制作と、バロック・オペラの新制作を1年おきに行う
旬の演出家・歌手の招聘
海外の歌劇場との積極的な共同制作
(引用元:https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/interview_01.html)

このような基本的な考え方のもとに、1シーズン3演目だった新制作を4演目に増やすこととし、その理由・意義を次のように説明しています。

これまで主に20世紀作品の上演の際、プロダクションを海外の歌劇場からレンタルしていましたが、一回上演したら装置も衣裳も全部返却しますので新国立劇場に何も残りません。これでは経済効果が悪いので、今後レンタル上演を少なくしたいと考えています。
(引用元:https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/interview_01.html)

新国立劇場に財産の残すこと、また、経済性も考慮した運営を目指されていることを知り、とても素晴らしいことだと感心しました。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『魔笛』の新制作

2018/2019シーズン開幕公演は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの『魔笛』の新制作ですが、この新制作は、上記の基本的な考え方に基づいています。

これはまた、大野芸術監督のヨーロッパでのキャリアを生かしたことにより実現できたことでもあります。

『魔笛』の新制作に際し、舞台装置、衣裳、上演権の購入について、エピソードをインタビューで披露されています。

新制作最初の演目『魔笛』ですが、私が働いていたモネ劇場で2005年に初演し、その後、世界の十数の劇場で上演している大ヒット作でして、この舞台装置と衣裳を上演権も含めて購入しました。初演から年月が経ち、いろいろな劇場をひと巡りしたので、譲っていただけたのです。
(引用元:https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/interview_01.html)

舞台稽古の感想

オペラについてど素人ですが、ど素人なりの感想を記したいと思います。

今回、『魔笛』を鑑賞して印象深かったのは、英語字幕による効果、レトロ調の映像美術の効果、歌手の超絶技巧です。

まずは「英語字幕」ですが、これは前述のとおり、今シーズンからの取り組みで国際発信力強化が主な目的のようです。

筆者が個人的に感じたのは、日本語字幕に比べて、極めてシンプルな表現で、非常に理解しやすかったことです。

日本語は芸術性を高めるための工夫だとは思いますが、あまりにも意訳し過ぎているのではないかと感じます。

原語のドイツ語が分かりませんので意訳になっているのかは不明ですが、理解しにくいことは素直な感想です。

この意見が筆者個人のみのものかと思いきや、休憩時間には同様の意見を話されている観客もおられ、「英語字幕表示」は好評のようでした。

次に「映像美術」ですが、フィルム映写のような効果をねらったレトロ調のアニメーションはヨーロッパ的な世界観を表現し、観ていて時空を超えて『魔笛』の世界に誘われた感覚に包まれました。

幼いころに観て感じた絵本の世界のような感覚です。

これがウィリアム・ケントリッジさんの力によるものなのでしょうか。

最後にパンフレットにも「夜の女王の超絶技巧アリア」と表現されていましたが、こんなテクニックがあるのかと思い、人間が発する声の可能性を最大限に発揮する歌手の表現力には素直に感動しました。

音楽に明るい方であれば、もっといろいろと聴くべきところがあるのでしょうが、ど素人である筆者にもこの超絶技巧の素晴らしさは十分過ぎるほど心に染み入りました。

「英語字幕表示」は、観客の理解を手助けしてくれ、オペラに対して感じる敷居の高さを下げてくれたように思います。

言い換えれば、「日本語訳」がオペラを難解でとっつきにくいものにしていたとも言えるのではないでしょうか。

国際発信力強化を目指した結果、日本人に対しても新たなファン層の開拓にも繋がることになるかもしれない、とさえ思える経験でした。

「英語字幕表示」についてはパンフレットにも記載されていますが、ひっそりと、まるで気づかれたくないかのように小さく書かれています。

こういった聴衆の利便性に配慮した素晴らしい試みはもっと大々的に宣伝すれば良い気がするのですが、奥ゆかしいですね。

代わりに筆者がこのブログで宣伝します!(´▽`)

新国立劇場 ウェルカムフラワー 2018年10月

大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』

大野和士新オペラ芸術監督が『魔笛』の魅力を紹介する特別イベント「大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』」が2018年9月10日(火)に開催されています。

そのときの様子(ダイジェスト版)がYouTubeで公開されています。

大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』 (ダイジェスト版)

大野和士のオペラ玉手箱 with Singers Vol.1『魔笛』 (ダイジェスト版)

(YouTube / 新国立劇場 New National Theatre Tokyo 公式チャンネル)

新国立劇場 オペラ『魔笛』(2018/2019シーズン)公演概要

【新制作】ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『魔笛』

(全2幕 / ドイツ語上演 / 字幕付《一部日程で日本語と英語の字幕表示》)

大野和士 芸術監督就任第一作 2018/2019シーズン開幕公演

【日程】 2018年

■10/3(水)18:30
■10/6(土)14:00
■10/8(月・祝)14:00
■10/10(水)14:00
■10/13(土)14:00 《日本語字幕に加え、英語字幕を表示予定》
■10/14(日)14:00 《日本語字幕に加え、英語字幕を表示予定》

【予定上演時間】 約3時間(休憩含む)

(参考:舞台稽古見学会の際のタイムテーブル)
14:00~15:05 第1幕
15:05~15:30 休憩(25分)
15:30~16:50 第2幕

【会場】 新国立劇場 オペラパレス

【スタッフ】

■台本:エマヌエル・シカネーダー
■作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
■指揮:ローラント・ベーア
■演出:ウィリアム・ケントリッジ

【キャスト】

■ザストロ:サヴァ・ヴェミッチ
■タミーノ:スティーブ・ダヴィスリム
■夜の女王:安井陽子(やすい・ようこ)
■パミーナ:林 正子(はやし・まさこ)
■パパゲーノ:アンドレ・シュエン
■パパゲーナ:九嶋香奈枝(くしま・かなえ)
■モノスタトス:升島唯博(ますじま・ただひろ)
■弁者・僧侶I・武士II:成田 眞(なりた・まこと)
■僧侶II・武士I:秋谷直之(あきたに・なおゆき)
■侍女I:増田のり子(ますだ・のりこ)
■侍女II:小泉詠子(こいずみ・えいこ)
■侍女III:山下牧子(やました・まきこ)
■童子I:前川依子(まえかわ・よりこ)
■童子II:野田 千恵子(のだ・ちえこ)
■童子III:花房英里子(はなふさ・えりこ)

【合唱】 新国立劇場合唱団

【管弦楽】 東京フィルハーモニー交響楽団

【芸術監督】 大野和士

詳細は、新国立劇場 オペラ 公式サイトをご確認ください。

魔笛
新国立劇場のオペラ公演「魔笛」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。