【シネマ】『ラ・バヤデール』英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19(2019年1月)

「英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19」のバレエは12月に『うたかたの恋』で開幕しましたが、2019年1月には早くも第二弾として『ラ・バヤデール』が上映されます。

インドを舞台とした異国情緒あふれる世界とバレエ・ブラン(白いバレエ)の魅力を堪能できるこの作品について、鑑賞が待ち切れなくなること間違いなしの映像とともに紹介します。

英国ロイヤル・バレエ『ラ・バヤデール』の魅力

『ラ・バヤデール』は、古代インドを舞台にした異国情緒あふれる舞台で展開される愛憎劇です。

神殿の舞姫ニキヤ戦士ソロルは恋仲にありますが、国王ラジャはソロルに対して自分の娘ガムザッティとの結婚を命じ、ソロルはニキヤを裏切ることになります。

それぞれの登場人物の心理描写をいかに表現するのかが、この作品の大きな魅力の一つだと思います。

また、ニキヤを裏切ってしまい自責の念に苛まれるソロルが見る幻想である「影の王国」のシーンは、『ジゼル』『白鳥の湖』において大勢のダンサーが白い衣装を身にまとい踊る「バレエ・ブラン(白いバレエ)」の代表として挙げられる名シーンであり、感動なしに観ることはできません!

主要な役であるニキヤにはマリアネラ・ヌニェスさんが、ソロルにはワディム・ムンタギロフ
さんが、ガムザッティにはナタリア・オシポワさんがキャスティングされています。

いずれも人気・実力ともにトップダンサーであり、それぞれがどのように役柄を演じるのか、期待しましょう。

ワディム・ムンタギロフさんは、新国立劇場バレエ団の『ラ・バヤデール』にゲスト・プリンシパルとして出演したこともあり鑑賞された方も多いかと思います。

残念なことにゲスト・プリンシパルの契約は昨シーズン(2017/18シーズン)で修了していますので、日本でワディム・ムンタギロフさんのソロルを観る機会が今後どれくらいあるか分かりません。

そういった意味では貴重な機会ですね!

テクニックが求められるブロンズ・アイドルには、プリンシパルのアレクサンダー・キャンベルさんがキャスティングされています。

出演時間は短いものの、超絶技巧を駆使した踊りで場をさらうこの役に憧れる男性ダンサーは少なくないと思います。

筆者が初めて鑑賞したバレエのDVDは英国ロイヤル・バレエの『ラ・バヤデール』(1991年収録)でしたが、ブロンズ・アイドルを踊っていたのは、現在はK-BALLET COMPANYの芸術監督である熊川哲也さんでした。

全身をまばゆい黄金色に塗り、まるで精巧なロボットが踊っているかのような錯覚を覚えるほどの人間離れした超絶技巧に驚いたことを覚えています!

英国ロイヤル・バレエで上演されるマカロワ版では、第3幕冒頭に登場します。

アレクサンダー・キャンベルさんが踊るブロンズ・アイドルにも大いに期待したいと思います。

また、嬉しいことに日本出身のダンサーが多く出演しています。

マグダヴェーヤ役のアクリ瑠嘉さん、パ・ダクシオンの金子扶生さん、影の王国ではヴァリエーション1で崔 由姫さん、ヴァリエーション3では高田 茜さんが出演しており、日本のファンにとってはとても楽しみですね。

主要な役だけでもこれだけ登場しますが、影の王国のコール・ド・バレエの中にも日本人ダンサーが出演するかもしれませんね。

そして、先に少し触れたように『ラ・バヤデール』の大きな魅力の一つである24人のコール・ド・バレエによる一糸乱れぬ「影の王国」での群舞は圧巻です。

月に照らされた暗いステージ上のスロープを延々とアラベスク・パンシェを繰り返して降りてくる様はこの世のものとは思えない美しさです。

このシーンは、ソロルが見た幻影なので、この世のものとは思えないのは当然なのですが、それを演じるコール・ド・バレエの実力がなければ成り立ちません。

また、レオン・ミンクスによる音楽は全編を通して素晴らしいのですが、とくに「影の王国」の音楽はとても印象的であり、この名シーンを引き立たせています。

このシーンは下の動画にも何回か出てきますので、確認してみてください。

英国ロイヤル・バレエ『ラ・バヤデール』関連動画で作品の魅力を確認

英国ロイヤル・バレエが公開している映像から『ラ・バヤデール』関連の5本の動画を紹介します。

「ワールド・バレエ・デー2018」で配信されたリハーサル映像から、ロイヤルのレパートリーとなっている『ラ・バヤデール』の改訂振付をした生きる伝説のバレリーナ《ナタリア・マカロワ》さんの最新映像まであります!

これらの映像を観た後には、「英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19『ラ・バヤデール』」の鑑賞が待ちきれなくなること間違いありません!

La Bayadère trailer (The Royal Ballet) 予告編映像

まずは、定番の予告編映像です。

『ラ・バヤデール』といえばこのシーンというほど有名な「影の王国」から始まる予告編映像で、各名場面が映し出されますが、主要な役であるニキヤ、ソロル、ガムザッティの姿はほとんど映っていません!

La Bayadère trailer (The Royal Ballet)

La Bayadère trailer (The Royal Ballet)

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

クラシックバレエの中でも最も厳しいコール・ド・バレエの一つ

バレエ・ミストレスのサマンサ・レイン、ファースト・アーティストのロマニー・ パジャック、アーティストのレティシア・ディアスが、『ラ・バヤデール』のハイライトの一つでありコール・ド・バレエにとって、もっともハードで厳しくチャレンジングな「影の王国」のシーンについて述べています。

What it takes to perform classical dance’s most demanding corps de ballet number

What it takes to perform classical dance's most demanding corps de ballet number

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

『ラ・バヤデール』から「影の王国」のリハーサル(ワールド・バレエ・デー2018)

「ワールド・バレエ・デー2018」で配信された『ラ・バヤデール』第二幕から「影の王国」の場面のリハーサル映像です。

24人のコール・ド・バレエが月に照らされたステージを延々とアラベスク・パンシェをしながら行進するシーンです。

映像で「39 arabesques」と言っているように、最初に登場するダンサーはアラベスク・パンシェを39回連続して行います。(登場順が遅いほど回数は減ります)

この作品のもっとも印象的なシーンだと思いますが、ダンサーの苦労は並大抵のものではないと思います。

映像では、ダンサーの足元がアップで映し出されているところもありますが、ぐらつきながらも懸命にバランスを保とうとしている様子が映し出されています。

「何が何でも絶対に倒れない!」という心意気や緊迫感が、ひしひしと伝わってきます。

バレエを習っている方であればこの様子を見て自分が踊っているかのように感情移入してしまい、手に汗握ること間違いありません!

この「39 arabesques」は、実際の上演時には、月に照らされた仄暗い演出で、ステージ上に設置されたスロープを移動しながら降りてきます。

リハーサルよりも困難な状況で踊らなければならず、リハーサルにも熱が入ります。

そんなダンサーたちを励ますかのようなバレエ・ミストレスのサマンサ・レインさんの大きな声での指導が感動的ですらあります。

The Royal Ballet rehearse the Kingdom of the Shades scene from La Bayadère – World Ballet Day 2018

The Royal Ballet rehearse the Kingdom of the Shades scene from La Bayadère – World Ballet Day 2018

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

『ラ・バヤデール』主要キャスト(高田 茜、オシポワ、ムンタギロフ)のリハーサル(ワールド・バレエ・デー2018)

同じく「ワールド・バレエ・デー2018」で配信された『ラ・バヤデール』のリハーサル映像です。

こちらでは、プリンシパル・ゲスト・ティーチャーのOlga Evreinoff(オルガ・エヴレイノフ?)さんによる主要キャストによる「婚約式」のリハーサルです。

Olga Evreinoffさんは、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)でも指導経験があり、日本では東京バレエ団の『ラ・バヤデール』公演で振付指導をされたことがあるそうです。

ニキヤ役の高田 茜さんが、婚約式でソロルに裏切られた悲しみのなかで踊るシーンのリハーサルを行っています。

同じく婚約式ですが、ナタリア・オシポワさんとワディム・ムンタギロフさんはガムザッティとソロルのパ・ド・ドゥのリハーサルを行っています。

ソロルに裏切られて失意のなかにあるニキヤの踊りとガムザッティとソロルによる歓びにあふれて踊るパ・ド・ドゥが対照的です。

The Royal Ballet rehearse La Bayadère – World Ballet Day 2018 (Takada, Osipova, Muntagirov)

The Royal Ballet rehearse La Bayadère – World Ballet Day 2018 (Takada, Osipova, Muntagirov)

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

主要メンバー(オヘア監督、ヌニェス、ムンタギロフ、オシポワそしてマカロワ)が語る『ラ・バヤデール』

最後の動画は、2018年11月13日に公開された映像です。

この映像では、「英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19」の『ラ・バヤデール』で主要キャストを演じるマリアネラ・ヌニェスさん(ニキヤ)、ワディム・ムンタギロフさん(ソロル)、ナタリア・オシポワさん(ガムザッティ)の3名に加えて芸術監督のケヴィン・オヘアさんが『ラ・バヤデール』について語ります。

そして、驚くことにこの作品の改訂振付をしたナタリア・マカロワさんも出演しており、演技指導する風景を見ることができます!!!

既にバレエの歴史に名前を残している生きる伝説のバレリーナが、今でもこうして指導している姿を拝めるとは思ってもみませんでしたので、この映像を見たときには飛び上がって驚きました!

オシポワさんも、「小さかった頃にマカロワさんの映像は全て観ていて、それが今はこうして同じ部屋で一緒にリハーサルをし、話していることが信じられない」と語っています。

マカロワさんから直々に指導されたことを知ったら、ますます舞台が楽しみになってきますよね!

それにしても、今でも、マカロワさんの美しさは健在です!

Why The Royal Ballet love performing La Bayadère

Why The Royal Ballet love performing La Bayadère

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

英国ロイヤル・バレエ『ラ・バヤデール』関連動画を観て

英国ロイヤル・バレエが公開している『ラ・バヤデール』関連の映像をご紹介しましたが、関連動画を観て、いかがでしたか?

主要な役のニキヤ、ソロル、ガムザッティのリハーサルやコール・ド・バレエによる「影の王国」での緊張感あふれるリハーサルなどが映し出され、作品に対する興味が高まってきますね!

2019年のバレエ鑑賞初めが決まっていない方は、候補の一つとしていかがでしょうか!

『ラ・バヤデール』英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19 概要

■日程 2019年1月18日(金)~2019年1月24日(木)

■時間 上演日程が近づいてきたら各劇場に確認してください。

■会場
【北海道】ディノスシネマズ札幌
【宮城】フォーラム仙台
【東京】TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ日本橋、イオンシネマ シアタス調布
【千葉】TOHOシネマズ流山おおたかの森
【神奈川】TOHOシネマズららぽーと横浜
【愛知】TOHOシネマズ名古屋ベイシティ
【京都】イオンシネマ京都桂川
【大阪】大阪ステーションシティシネマ
【兵庫】TOHOシネマズ西宮OS
【福岡】中洲大洋映画劇場

■スタッフ
・ 振付:マリウス・プティパ
・ 追加振付:ナタリア・マカロワ
・ 音楽:レオン・ミンクス
・ 指揮:ボリス・グルージン

■主要キャスト
・ ニキヤ(神殿の舞姫):マリアネラ・ヌニェス
・ ソロル(戦士):ワディム・ムンタギロフ
・ ガムザッティ(ラジャの娘):ナタリア・オシポワ
・ ハイ・ブラーミン(大僧正):ギャリー・エイヴィス
・ ラジャ(国王):トーマス・ホワイトヘッド
・ マグダヴェーヤ(苦行僧の長):アクリ瑠嘉
・ アヤ(ガムザッティの召使):クリステン・マクナリー
・ ソロルの友人:ニコル・エドモンズ
・ 影の王国(ヴァリエーション1): 崔 由姫
・ 影の王国(ヴァリエーション2): ヤスミン・ナグディ
・ 影の王国(ヴァリエーション3): 高田 茜
・ ブロンズ・アイドル:アレクサンダー・キャンベル

■収録日 2018年11月13日

『ラ・バヤデール』(英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19)の詳細については公式サイトをご確認ください。みどころ、あらすじなどを読むことができます。

>>> 英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン2018/19 英国ロイヤル・バレエ『ラ・バヤデール』