2019年5月12日(日)、東京・文京シビックホールにて「トヨタコミュニティコンサート in 東京 俊友会管弦楽団 特別演奏会『ロメオとジュリエット』全幕」が開催されました。
バレエには牧阿佐美バレヱ団が出演し、阿部裕恵さんと清瀧千晴さんが主演しました。
トヨタと全国のトヨタ販売会社グループのご支援により、リーズナブルな料金で鑑賞することができるコンサートです。
トヨタコミュニティコンサート in 東京 俊友会管弦楽団 特別演奏会 プロコフィエフ:バレエ『ロメオとジュリエット』全3幕
「トヨタコミュニティコンサート」について
「トヨタコミュニティコンサート」は、トヨタと全国のトヨタ販売会社グループが公益社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟と連携して、アマチュアオーケストラの公演を支援するものです。
今回上演された「俊友会管弦楽団 特別公演」は、その中でも「アマチュアオーケストラにとってチャレンジングな企画内容の『チャレンジ公演型コンサート』」という位置づけで、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』にチャレンジし、バレエ上演にはプロの牧阿佐美バレヱ団が出演するというものでした。
鑑賞レポート・感想
プレトーク&ナレーション
アマチュアオーケストラを支援するというコンサートの趣旨から、観客は必ずしもバレエ鑑賞に慣れてはいないことに配慮して内容を企画されていたように思います。
開演前には、プレトークとして音楽監督の三枝成彰さんとナレーターの細川ふみえさんが登場しました。
三枝成彰さんからは、シェイクスピアの原作が書かれた時代について、プロコフィエフが作曲した時代について、非常に興味深い話を聞くことができ、今までとは少し異なった気持ちで『ロメオとジュリエット』という作品を鑑賞することができました。
原作が書かれた当時のキリスト教といった社会・文化的な背景を知ることにより、登場人物の行動や心理について、今までよりも理解できた気がします。
また、各幕が開く前には、細川ふみえさんが、あらすじが朗読し、バレエ『ロメオとジュリエット』の鑑賞がはじめての方にも無理なく舞台の流れが理解できたようです。
バレエ『ロメオとジュリエット』の感想
主演は阿部裕恵さんと清瀧千晴さんです。
今や、牧阿佐美バレヱ団を代表する主役ペアとなったお二人ですので、楽しみにしていた方は多いのではないでしょうか。
演出・振付はアザーリ・M・プリセツキー/牧 阿佐美です。
牧阿佐美バレヱ団が『ロメオとジュリエット』を全幕で上演するのも7年ぶりということですから、初役のダンサーも少なくなかったかもしれません。
バレエ『ロメオとジュリエット』といえば、マクミラン版が有名ですが、筆者はマクミラン版以外の作品を鑑賞するのは、今回が初めてでした。
冒頭のジュリエットは乳母と戯れ、幼さの残る少女としてよく表現され、ロメオと出会って恋に落ちてからの大人の女性へと成長する姿と好対照をなしています。
対するロメオは、ジュリエットと出会ってからの溢れんばかりの愛情を高速の回転技を中心に情熱的に表現していたように感じました。
菊地 研さん演じるティボルトは、モンタギュー家に対する憎しみが溢れ出る鬼気迫る表情と演技で、見る者を圧倒します。
山本達史さん演じるマーキュシオは、キャピュレット家の舞踏会に紛れ込みティボルトに怪しまれたところを楽しげな踊りでその場の注意を引きつけたり、ヴェローナの広場でティボルトの挑発からロメオをかばったり、と全体を見ながら先読みし孤軍奮闘していました。
山本さんの丁寧な踊りにはさらに磨きがかかり、これからの活躍がますます期待できることを確信しました。
作品は、全体的に、マクミラン版が感情的に訴えてくる印象であるのに対し、アザーリ・M・プリセツキー/牧 阿佐美版はドラマティックな演出・振付というよりも分かりやすいドラマ展開という印象を持ちました。
頭で理解しやすい反面、激しい感情体験には少し物足りなさを感じる印象で、ロメオとジュリエットの狂おしいほどの恋心、愛する人を失った気が狂うほどの悲しみを、もう少し情熱的に描き出しても良かったのではないかと感じました。
バレエ『ロメオとジュリエット』のモチーフは筆者には重すぎて、鑑賞後しばらくの間、重苦しい気分から逃れることができません。
しかし、筆者がこんな気分になっているということは、俊友会管弦楽団のチャレンジングな公演は見事に成功し、牧阿佐美バレヱ団の演技が素晴らしかったことの証でしょう。
このような機会を提供してくださったトヨタと全国のトヨタ販売会社グループにも謝意を評します。
今後もこのようなバレエ上演を伴うコンサートの開催を期待しています。
公演概要
トヨタコミュニティコンサート in 東京
俊友会管弦楽団 特別演奏会
プロコフィエフ:バレエ『ロメオとジュリエット』全3幕
■日時:2019年5月12日(日)14:00開演
■会場:文京シビックホール 大ホール
指揮:冨田実里
演奏:俊友会管弦楽団
ゲストコンサートマスター:近藤 薫
お話・音楽監督:三枝成彰
ナレーション:細川ふみえ
芸術監督:三谷恭三
演出・振付:アザーリ・M・プリセツキー、牧 阿佐美
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
バレエ出演者
ジュリエット:阿部裕恵
ロメオ:清瀧千晴
ティボルト:菊地 研
マーキュシオ:山本達史
ベンヴォーリオ:ラグワスレン・オトゴンニャム
パリス:石田 亮一
ほか 牧阿佐美バレヱ団
次回公演
俊友会管弦楽団 第61回定期演奏会
■日程:2019年9月16日(月・祝)14時開演
■会場:サントリーホール 大ホール
■演目:
R.Strauss:四つの最後の歌
R.Strauss:アルプス交響曲
■ソプラノ:石橋 栄実
■指揮: 山下 一史
牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚~ラ・フィーユ・マル・ガルデ~』
■日程:2019年6月8日(土)15:00/6月9日(日)14:30(全2回公演)
■上演時間:約2時間(休憩含む)
■会場:文京シビックホール 大ホール
『ロメオとジュリエット』とは趣向がガラリと変わり、分かりやすく楽しいバレエです♪