【鑑賞レポ】新国立劇場バレエ研修所「バレエ・アステラス 2019」盛り上がりを見せた第10回公演の感想!

海外で活躍する若手日本人ダンサーを応援する公演「新国立劇場バレエ研修所『バレエ・アステラス 2019』」が8月3日(土)・4日(日)に新国立劇場 オペラパレスにて上演されました。

2009年から開催されているこの公演も今回が第10回目となる節目を迎え、全2回の公演が上演されました。
一部の出演者は日程により異なる演目を用意し、多面的な表現を披露することができたようです。

今回は2回公演のうち、筆者が鑑賞した8月3日(土)の公演について報告します。

【2020/1/1追加】「バレエ・アステラス2019」フィナーレの動画を追加しました。

新国立劇場バレエ研修所「バレエ・アステラス 2019」(8/3)の感想

バレエ・アステラスは海外で活躍している若手日本人ダンサーを応援することが第一義的にありますが、新国立劇場バレエ研修所の公演であることから、研修所の研修生や海外の有力バレエ学校の生徒たちも出演し、若手ダンサーが交流を深めて切磋琢磨する目的もあるようです。

今回も新国立劇場バレエ研修所の研修生と予科生も出演し、海外からはカナダ国立バレエ学校から二組の精鋭が出演しました。
プロダンサーを目指している
同じ年頃の生徒たちがこのような場を通して交流し、刺激し合うことには大きな意義があったように思います。

最初の演目『ワルツ』では大勢のダンサーが華やかな衣装で出演し、とても素晴らしい踊りを披露しましたが、出演者が新国立劇場バレエ研修所の研修生と予科生であることに気づくまではプロダンサーが踊っているのかと思うほどの高いレベルでした。

海外で活躍している若手日本人ダンサーたちにとって、「バレエ・アステラス」のような公演は、故郷に錦を飾ることのできるまたとない機会です。
それために披露する演目選びにもかなり熟慮したのではないでしょうか。
鑑賞する側の観客にとっても、普段、日本で見る機会のない演目あるいは知っている演目であっても振付家の異なる作品に触れることのできる機会でもあります。

ポーランド国立歌劇場バレエ団海老原由佳さんは、同僚のクリストフ・シャボさんとともにロベルト・ボンダラ振付のネオクラシック作品『Take Me With You』を披露しました。
コンテンポラリーやネオクラシック作品には珍しく、ロックバンドであるレディオヘッドの楽曲を使用していることが興味深い作品でした。
欧州では音楽にロックを使用することも多いのでしょうか?

ハンガリー国立バレエ団石崎双葉さんとダービット・モルナーさんは、の「『ロメオとジュリエット』より 寝室のパ・ド・ドゥ」を披露しました。
『ロメオとジュリエット』といえばマクミラン版が有名ですが、今回上演したんは、
ジョバンニ・ディ・パルマ振付作品です。
ジョバンニ・ディ・パルマさんは、ウヴェ・ショルツさんが芸術監督を務めるライプツィヒ・バレエ団でプリンシパルを務めたダンサーです。
翌日、8月4日(日)の公演を見ることはできませんでしたが、ウヴェ・ショルツ振付作品の「『天地創造』よりパ・ド・ドゥ」を披露しています。
パンフレットには、石崎さんのレパートリーにノース『トロイゲーム』が記載されていました。
『トロイゲーム』は男性ダンサーだけで上演されるマッチョでユーモラスな作品だったと思いますが、女性が出演するバージョンもあるのでしょうか?気になります!

ポーランド国立歌劇場バレエ団影山茉以さんは、同僚のマルコ・エスポジトさんをパートナーに、リアム・スカーレットがショパンのピアノ協奏曲に振り付けた『Notre Chopin』を披露しました。
現在、最も注目されている若手振付家リアム・スカーレットの作品を選んでくれたことを喜んだ観客は少なくないはずです。
金子三勇士さんによるピアノの調べに乗せた静謐な作品で、とても心地良い空気を感じる作品でした。

今回の公演で最も印象深かった海外で活躍する若手日本人ダンサーは、ニーナ・アナニアシヴィリ芸術監督率いるジョージア国立バレエ横山瑠華(よこやま・るいか)さんです。
「『ラ・シルフィード』第2幕より パ・ド・ドゥ」を
ディエゴ・ブッティリオーネさんとともに演じました
横山さんの空気が漂うかのような身のこなしと軽やかなポワント・ワークは、まるで幻想を見せられているかのような錯覚に陥りました!
パンフレットのプロフィール紹介によれば、横山さんはコールド・バレエ時代の20歳で主役を任され、その年にソリストに昇格しています。
ソリストは最高位のリーディング・ソリストに次ぐ階級であり、団員に占める割合も少なく、一般的なカンパニーのファースト・ソリストと同等の階級ではないでしょうか。
今後の動向が気になるダンサーです!!!
ブルノンヴィル作品を鑑賞する機会がほとんどなかった筆者にとっては良い勉強にもなりました。

トリを飾ったのは新国立劇場バレエ団米沢 唯さんと渡邊峻郁さんが主演した「『ドン・キホーテ』第3幕より」でした。
米沢さんはこの日も抜群の安定感を誇り、渡邊さんは個人技とサポートの両方が光り、二人の踊りはあっという間に観客の心を鷲掴みにしたことが分かりました。
米沢さんの表情からは、何かしてくれそうな雰囲気がヒシヒシと感じられ、これがガラ公演の醍醐味の一つではないかと感じました。
圧巻だったのは、最大の見せ場である32回転グランフェッテです。
米沢さんがトリプルを織り交ぜがら回転するのはいつものことですが、さらに今回は、回転しながら頭上で扇を広げ、そして閉じながら下してくるではありませんか!( ゚Д゚)
美技の連続に酔いしれていた観客でしたが、この超絶技巧を披露するや、会場の興奮は一気に最高潮に達しました!
私が鑑賞したバレエ公演の中で最も盛り上がった場面の一つです!!!
ビデオでは決して味わうことのできない、生の舞台鑑賞ならではの感動でした!
海外で活躍する若手日本人ダンサーを応援する公演というのがバレエ・アステラスの位置づけではありますが、思いがけず、日本で活躍する日本人ダンサーの底力を見せつけられ、嬉しく、また、誇らしくも思いました。

なお、この公演の翌週には吉田都さんの引退公演があり、米沢さんは東京バレエ団プリンシパルの‎秋元康臣さんとペアを組んで、同じプティパ/ゴルスキー版「『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ」を踊っています。
吉田都さんの引退公演は、テレビ放送が予定されていますので、米沢さんの踊りにも注目してください!

新国立劇場バレエ研修所「バレエ・アステラス 2019」/8月3日(土)プログラム

第1部

『ワルツ』
音楽:シャルル・グノー
振付:牧 阿佐美
新国立劇場バレエ研修所 第15期生、第16期生、予科生

『ダイアナとアクティオン』
音楽:リッカルド・ドリゴ
振付:アグリッピナ・ワガノワ
高森美結 & 森本亮介(ハンガリー国立バレエ団)

『ラ・シルフィード』第2幕より パ・ド・ドゥ
音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
横山瑠華 with ディエゴ・ブッティリオーネ(ジョージア国立バレエ)

『Take Me With You』*
音楽:レディオヘッド(Reckoner)
振付:ロベルト・ボンダラ
海老原由佳 with クリストフ・シャボ(ポーランド国立歌劇場バレエ団)

『ロメオとジュリエット』より 寝室のパ・ド・ドゥ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:ジョバンニ・ディ・パルマ
石崎双葉 with ダービット・モルナー(ハンガリー国立バレエ団)

『海賊』第2幕より パ・ド・ドゥ
音楽:アドルフ・アダン
振付:マリウス・プティパ
直塚美穂 with アリシェイ・カリヴァイ(国立モスクワ音楽劇場バレエ)

『Notre Chopin』
音楽:フレデリック・ショパン(「ピアノ協奏曲第1番第2楽章」)
振付:リアム・スカーレット
影山茉以 with マルコ・エスポジト(ポーランド国立歌劇場バレエ団)
[ピアノ演奏:金子三勇士]

第2部

『ヴァリエーション for 4』
音楽:ウィリアム・ウォルトン
振付:三谷恭三
新国立バレエ研修所 井上興紀、石山 蓮
小野寺雄(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト/研修所第7期修了)
山本達史(牧阿佐美バレヱ団/研修所第10期修了)

『ラ・バヤデール』第3幕 影の王国より パ・ド・ドゥ
音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ
カナダ国立バレエ学校
プラウダ・トランフィールド、ベンジャミン・アレキサンダー

『Three Images of Hope』より デュエット*
音楽:オーウェン・パレット 振付:ロバート・ビネー
カナダ国立バレエ学校
イザベラ・キンチ マッキンリー・ベイナード

『タランテラ』
音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク/ハーシー・ケイ
振付:ジョージ・バランシン
宮崎たま子 & 滝口勝巧(ワシントン バレエ)©The George Balanchine Trust

『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ
音楽:アドルフ・アダン
振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ
永井綾香(シビウ劇場バレエ団)with ロベルト・エナケ(ブカレスト国立歌劇場バレエ団)

『グラン・パ・クラシック』より パ・ド・ドゥ
音楽:フランソワ・オーベール
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
菊地桃花 with パブロ・オクタビオ (カールスルーエ州立バレエ団)

『ドン・キホーテ』第3幕より
音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー
改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
新国立劇場バレエ団 米沢 唯、渡邊峻郁
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 廣川みくり
赤井綾乃、中島春菜、土方萌花、関 晶帆、廣田奈々、横山柊子

フィナーレ

『バレエの情景』Op.52 より第8曲 “ポロネーズ”
音楽:A.グラズノフ
出演者全員

*印:録音音源使用

「バレエ・アステラス2019」フィナーレ【2020/1/1追加】
(YouTube / 新国立劇場 New National Theatre Tokyo 公式チャンネル)

「バレエ・アステラス2019」フィナーレ

次回開催情報(バレエ・アステラス 2020)

次回の「バレエ・アステラス」は、拡大企画として「世界バレエ学校フェスティバル&アステラス・ガラ(仮)」と題し、2020年9月12日(土)・13日(日)の二日間、新国立劇場 オペラパレスにて開催されます。

通常は8月上旬に開催していますが、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間を外して9月に開催するようです。

また、「世界バレエ学校フェスティバル」と銘打つことから、「バレエ・アステラス 2020」 では、複数の学校を招待するのではないでしょうか。
楽しみですね!(´▽`)

「バレエ・アステラス 2020」 開催概要
バレエ研修所 バレエ・アステラス・スペシャル 2020
世界バレエ学校フェスティバル&アステラス・ガラ(仮)
■日程:2020年9月12日(土)・13日(日)(全2回公演)
■会場:新国立劇場 オペラパレス

「バレエ・アステラス 2019」の開催レポートと次回公演情報は、新国立劇場バレエ研修所公式サイトの研修所ニュースで読むことができます。
→ 「バレエ・アステラス 2019」が開催されました