2020年7月24日(金)、新国立劇場バレエ団が世界初演・新作バレエ公演となる「『竜宮 りゅうぐう』〜亀の姫と季の庭〜」を上演し、5か月ぶりにバレエ公演の上演が再開されました!
「浦島太郎」をモチーフとし、ユニークな海の生物たちがたくさん登場する、大人も子どもも楽しめる舞台についてレポートします!
【7/29追記】7月30、31日公演の中止
新国立劇場に勤務する業務委託者1名が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明し、より万全な感染予防策を講じるため、7月30日(木)、31日(金)のバレエ公演『竜宮 りゅうぐう』は中止されることになりました。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017698.html
新国立劇場バレエ団「竜宮 りゅうぐう」〜亀の姫と季(とき)の庭〜
5か月ぶりの公演再開!
新国立劇場バレエ団の公演は、2月に上演された『マノン』が予定されていた5公演のうち3公演が終わった段階で残りの2公演は上演が中止となったため、今回の公演は5か月ぶりの上演再開となりました。
3月下旬に予定されていた『DANCE to the Future 2020』も中止となり、第3部<コンポジション・プロジェクトによる作品>のみ無観客でライブ・ストリーミング配信されましたが、5月の『ドン・キホーテ』、6月の『不思議の国のアリス』は全公演がキャンセルされていました。
ステイ・ホーム期間中には、プリンシパルの福岡雄大さんが新国立劇場バレエ団ダンサーと「Insta Live」を配信してくださり、自粛期間中のダンサーの様子を楽しんだファンも多かったようです。
新国立劇場バレエ団ダンサーによるInstagramライヴトーク「#雄大の部屋」(4/28〜6/4)
「竜宮 りゅうぐう」〜亀の姫と季(とき)の庭〜(全2幕)
新国立劇場バレエ団の5か月ぶりとなる公演は世界初演・新作バレエの「竜宮 りゅうぐう」〜亀の姫と季(とき)の庭〜(全2幕)です。
新国立劇場は、夏休みの恒例として「こどものためのバレエ劇場 2020」を開催し、こどもにも楽しめるバレエ作品を上演しています。
今までに、『しらゆき姫』『シンデレラ』『白鳥の湖』の3作品をレパートリーとして上演してきましたが、今回、「『竜宮 りゅうぐう』〜亀の姫と季(とき)の庭〜」が新制作され新たにレパートリーに加わりました。
バレエ「竜宮 りゅうぐう」は、御伽草子(おとぎぞうし)の「浦島太郎」をモチーフとし、これまでに『サーカス』『NINJA』など、大人から子どもまで楽しめるダンス作品を新国立劇場に提供してきた森山開次さんが、初めてバレエ作品の演出・振付を行った作品です。
「『竜宮 りゅうぐう』〜亀の姫と季(とき)の庭〜」の感想
バレエ「竜宮 りゅうぐう」は、クリストファー・ウィールドンの『不思議の国のアリス』を思い出させる、映像やバラエティ豊かなキャラクターと昔話をモチーフとした様々なエピソードを備え、彩り豊かで高いエンターテインメント性を感じさせる作品でした。
森山開次さんの御伽草子「浦島太郎」から膨らませる世界観の構成力とダンサーやスタッフの皆さんが一丸となりそれを形にしていく共同作業による賜物ではないでしょうか。
何よりもこの困難な状況の中にあって、観客を前に舞台に立てることの歓びを全身で表すように生き生きと踊るダンサーたちに心動かされ、同じ劇場という空間で素晴らしい時間を共有できたことに感慨深いものがありました。
会場に入ると、いつもとは異なる様子に気づきました。
約半数に抑えられた客席、会話を控えた会場は、オーケストラがいないこともあり、もの静かで、いつもの会場とは異なる不思議な雰囲気を感じます。
また、開演前から流れている、日常とは異なる空気感を漂わせるかのような印象的な音楽による効果もあったのだと思います。
子ども向けということもあり、さまざまな演出状の工夫が見て取れました。
公演が始まると、羽織袴に山高帽を被った歌舞伎役者と思われる「時の案内人」が登場し、舞台を進行させていくようです。
また、舞台上の太陽や月を思わせる円盤状の装置に説明文を映写させることにより、ストーリーの理解を助けてくれました。
舞台は、プロジェクション・マッピングを効果的に使い、波の動きやそれぞれの場面に応じて色鮮やかに彩り、舞台空間に豊かな表情を与えています。
この鮮やかな演出を楽しむには上階の座席の方が有利かもしれません。
音響面では、今回の舞台では録音音源が使用されており、生のオーケストラではないことを残念に思っていましたが、客席の後方から音を出したり、迫力の重低音を出したりするなど、録音音源だからこそできる臨場感のある良い演出だと感じました。
個性豊かな海の生物がたくさん登場し、彩り豊かな衣装も相まって豪華絢爛なステージは見るものの胸を躍らせるように感じました。
竜宮城のシーンでは、サメ用心棒による切れ味鋭い踊りやイカす3兄弟によるタンゴ風の踊りなど、海の生物たちによるさまざまな踊りをディベルティスマンのように楽しむことができ、大きな見どころになっています。
森山開次さんが振り付けたということでコンテンポラリー色が強いの方思いきや、クラシック・バレエのボキャブラリーを用いた振付が主体でした。
これは、振付補佐として、貝川鐵夫さんと湯川麻美子さんが参画し、クリエーションにはダンサーにも意見を求めて作品作りを進めていったためではないでしょうか。
白兎、エイポン、フグ接待魚、サメ用心棒、タイ女将(おかみ)、金魚舞妓、サザエ、ウニ、タコ八、マンボウ、クラゲ、天女、織姫と彦星、祭り男、竜田姫、どんぐり、雪の花嫁、雪の花婿など、多くのユニークなキャラクターが登場し、子どもが喜ぶ工夫が施されています。
タツノオトシ吾郎、イカす3兄弟、アジ面コ(メンコ)など、ネーミングにもこだわり、さらに子どもたちを喜ばせています。
2020年7月26日ソワレ公演のハイライト映像です。
主演はポスターなどのメインビジュアルにも登場している池田理沙子さんと奥村康祐さんです。
キレッキレのサメ用心棒は木下嘉人さんと速水渉悟さんです。
新型コロナウイルス感染予防、拡散防止対策
新国立劇場では「with コロナ時代」のバレエ公演として新型コロナウイルス感染予防、拡散防止対策が講じられていました。
具体的には次のような対応です。
・マスク着用と咳エチケット(マスクを着用していないと入場できません)
・来場者カードの記入・提出(緊急連絡先を把握するため)
・赤外線サーモグラフィカメラによる来場者の体温確認
・座席ブロックごとの入退場
・出演者等へのプレゼント(花束、お手紙などを含む)のお預かりを中止。
・「こまめな手洗い」と「アルコール消毒」の励行
・ブラボーなどの声援の自粛(拍手はウェルカム)
公演では、出演者等へのプレゼントを預ける方もいらっしゃるかと思いますが、新型コロナ対策としてプレゼントの預かりを中止していますのでご注意ください。
また、クローク、オペラグラス、ひざ掛けの貸し出し、物販、ブッフェ、託児サービス、給水機の使用などのサービスが休止されています。
思わぬことで慌てないように、時間に余裕を持った行動をおすすめします。
新国立劇場が実施している新型コロナウイルス感染拡大予防への取り組みと、来場者へのお願いが公式サイトにまとめられていますので、事前にご確認ください。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017576.html
公演情報
スタッフ
音楽:松本淳一
演出・振付:森山開次
美術・衣裳デザイン:森山開次
映像:ムーチョ村松
照明:櫛田晃代
振付補佐:貝川鐵夫、湯川麻美子
■上演時間:約2時間(休憩1回含む)
■音源:録音音源を使用
東京公演
■日程:2020年7月24日(金・祝)〜7月31日(金)(全8公演)
(注)新型コロナウイルス感染拡大予防を目的とした混雑緩和のため、座席階ごとに来場目安時間を定めた分散来場にご協力ください。(詳細は公式サイトをご確認ください)
■会場:新国立劇場 オペラパレス(東京・初台)
■アクセス:京王新線(都営新宿線直通)「初台駅」中央口直結
■チケット(税込):
こども(4歳~小学生):2,200円
大人(中学生以上):3,300円
(注)4歳未満のお子様は入場できません。
(注)アトレ会員割引を含め、各種割引はありません。
(注)適切な間隔を保つため、前後左右をあけた席配置(全指定席)となっています。
(注)託児サービスは当面休止しています。
■キャスト
7月24日(金・祝)13:00
プリンセス 亀の姫:米沢 唯/浦島太郎:井澤 駿
7月25日(土)13:00
プリンセス 亀の姫:池田理沙子/浦島太郎:奥村康祐
7月25日(土)19:00
プリンセス 亀の姫:木村優里/浦島太郎:渡邊峻郁
7月26日(日)13:00
プリンセス 亀の姫:米沢 唯/浦島太郎:井澤 駿
7月26日(日)19:00
プリンセス 亀の姫:池田理沙子/浦島太郎:奥村康祐
7月29日(水)13:00
プリンセス 亀の姫:木村優里/浦島太郎:渡邊峻郁
【中止】7月30日(木)13:00
プリンセス 亀の姫:米沢 唯/浦島太郎:井澤 駿
【中止】7月31日(金)13:00
プリンセス 亀の姫:木村優里/浦島太郎:渡邊峻郁
■公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/
全国公演
【長崎県】
■日程:2020年9月19日(土)14:00
■会場:アルカスSASEBO 大ホール
■キャスト:プリンセス 亀の姫:米沢 唯/浦島太郎:井澤 駿
■チケット:
S席4,500円
A席3,500円
こども(4才~高校生)各席2,000円
(当日500円増)
■関連イベント:
8月30日(日)には、「アルカスSASEBO文化茶話」に森山開次さんを招いて、作品の魅力、見どころをお聞きします。
■公式サイト:https://www.arkas.or.jp/?a10=a10_40056
【富山県】
■日程:2020年9月22日(火・祝)14:00
■会場:オーバード・ホール(富山県)
■キャスト:プリンセス 亀の姫:池田理沙子/浦島太郎:奥村康祐
■チケット:
一般 3,000円
ジュニア(4歳~高校生) 2,000円
(注)3歳以下は入場できません。
■公式サイト:http://www.aubade.or.jp/events/event/新国立劇場-こどものためのバレエ劇場2020「竜宮-り/