2021年1月24日(日)午後11時20分(23:20)からのNHK BS プレミアムシアターでは、オーストラリア・バレエの『スパルタクス』と新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』【再】が放送されます。
新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』は日付が変わった25日の01:21:00から放送されます。
『ニューイヤー・バレエ』は新年を寿ぐ華やかな演目を揃えた公演で、バランシン振付『セレナーデ』、ガラ公演で人気の『ライモンダ』と『海賊』からはパ・ド・ドゥ、クリストファー・ウィールドン初期の作品『DGV』(日本初演)と非常に興味深い構成です。
今回は、実際に生の舞台を鑑賞した感想も含めて新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』(2020)を紹介します。
(注)オーストラリア・バレエ『スパルタクス』の紹介記事はこちら。
NHK BS プレミアムシアター
2021年1月24日(日)放送概要
■日程:2021年1月24日(日)午後11時20分~午前4時10分
■チャンネル:NHK BS プレミアム
■放送内容:
◇本日の番組紹介(23:20:00~23:23:30)
◇オーストラリア・バレエ『スパルタクス』(23:23:30~01:19:00)
◇新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』【再放送】(01:21:00~02:46:00)
◇オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー
飯守 泰次郎指揮 仙台フィルハーモニー管弦楽団演奏会(2:47:00~4:10:00)
新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』(2020)上演演目
『セレナーデ』
『ライモンダ』から パ・ド・ドゥ
『海賊』から パ・ド・ドゥ
『DGV』(日本初演)
新国立劇場バレエ団
『ニューイヤー・バレエ』(2020年)
例年、新国立劇場バレエ団は新年最初の公演として「ニューイヤー・バレエ」と題したミックス・プログラムを上演しており、2020年は1月11日(土)から13日(月・祝)の3日間に全3公演を上演しました。
2部構成の第Ⅰ部では、バランシン振付によるチャイコフスキーの音楽とダンサーが一体化した様子が美しい『セレナーデ』に加え、ガラ公演で人気の『ライモンダ』と『海賊』の2演目からはパ・ド・ドゥを上演しました。
第Ⅱ部では、2018/2019シーズンの開幕を飾り大好評を博した『不思議の国のアリス』の振付家であるクリストファー・ウィールドンの初期作品から1幕のアブストラクト・バレエ『DGV』を日本初演しました。
セレナーデ
『セレナーデ』は、ジョージ・バランシンがスクール・オブ・アメリカン・バレエの上級クラスの生徒のために振り付け、1934年6月9日に初演されました。
ストーリーのないアブストラクト・バレエで、あたかもダンサーが音楽と一体となったかのようです。
しかし、ダンサーが整然と立ち並ぶところに、後から来た一人のダンサーが何かを探しているかのようにさまよう場面などがあったり、女性ソリストには愛人や妻、母といった表立っては出てこない役名もあったりするそうで、ストーリーが全くない訳でもないようです。
イマジネーションが刺激され、ストーリーが浮かび上がってくるように感じられるかもしれません。
ステージングのパトリシア・ニアリーは、カナダ国立バレエ、ニューヨーク・シティ・バレエ、ジュネーヴ・バレエでダンサーとして活躍した後、ベルリン・バレエのアシスタント・ディレクターを経てジュネーヴ・バレエ、チューリヒ・バレエ、ミラノ・スカラ座バレエでは芸術監督を務めた、1988年からはバランシン財団に所属し、バランシン作品の指導者として活躍しています。
初日のカーテンコールでは、ステージングを担当されたパトリシア・ニアリーも赤いパンツ・スーツ姿で登場しており、出演していたダンサーの今村美由起さんのブログでは、彼女を囲んで撮影した写真を見ることができます。
ライモンダ
『ライモンダ』はプティパ最後の傑作といわれ、中世十字軍の時代の物語をグラズノフの音楽に振り付け、1898年にサンクトペテルブルクの帝室マリインスキー劇場で初演されました。
新国立劇場バレエ団では、プティパの原振付をもとに改訂振付を行った牧阿佐美版が2004年に初演され、レパートリーに入っていますが、2009年2月を最後に長らく上演されていません。
『ライモンダ』の全幕を生の舞台で鑑賞したい、と思った方に朗報です!
牧阿佐美版『ライモンダ』が、2021年6月に上演されることになりました。
全5公演が上演予定で、米沢 唯&福岡雄大、小野絢子&奥村康祐、木村優里&井澤 駿といった今までの新国ではあまり見なかった新鮮な組み合わせの3組がキャスティングされています。
なお、出演者が未定の公演もあるため、今後、新たなキャスティングが発表される可能性も残されています。
新国立劇場バレエ団(2020/2021シーズン)『ライモンダ』
それまで待てない!という方には、2009年収録の映像が、『新国立劇場バレエ団 オフィシャルDVD BOOKS バレエ名作物語 Vol.2 ライモンダ』として世界文化社から発売されています。
主演は、なんと!スヴェトラーナ・ザハロワ&デニス・マトヴィエンコのペアという超贅沢なキャストですので、ぜひ、鑑賞してみてください!
『海賊』よりパ・ド・ドゥ
「『海賊』よりパ・ド・ドゥ」は、超絶技巧がちりばめられたガラ公演では定番の人気演目です。
次代の新国立劇場バレエ団を背負って立つであろう若手ダンサーの木村/速水ペアは超絶技巧が求められる難しい役を、期待通り、いやそれ以上の完成度で華麗に決め、会場を大いに盛り上げています。
若さと疾走感に満ちた二人の演技は、『ライモンダ』で貫禄すら感じさせた小野/福岡ペアの優雅な踊りと好対照をなし、プログラム構成とキャスティングの妙でも楽しませてくれたように思います。
木村優里さんは新国立劇場バレエ研修所時代から抜きん出た実力で注目を集めていましたが、研修所を修了した2015年にソリストとして鳴り物入りで新国立劇場バレエ団に入団し、次々と主役を任され、2019年にはファースト・ソリストに昇格しています。
速水渉悟さんはジョン・クランコ・バレエ学校からヒューストン・バレエを経て2018年に新国立劇場バレエ団にソリストとして入団しました。
2015年に「Youth America Grand Prix Finals 2015」では男性シニア部門で金賞、審査員特別賞を受賞し、同年開催のローザンヌ国際バレエコンクールではファイナリストになった実力の持ち主で、今回の舞台ではその実力を如何なく発揮しています。
速水さんは、2020年10月31日(土)には米沢 唯さんとペアを組み、待望の全幕主演デビューを果たしました。
DGV
『DGV』を振り付けたクリストファー・ウィールドンは現在最も人気のある振付家の一人で、新国立劇場バレエ団では2018年に上演された『不思議の国のアリス』に続き、2作品目の上演です。
今回上演されたのはストーリーのない1幕バレエで、フランス高速鉄道TGV(Train à Grande Vitesse)のパリ ー リール間の開通を記念してマイケル・ナイマンが作曲した『MGV: Musique à Grande Vitesse(高速音楽)』に合わせ、「旅」をテーマとして創作されました。
第1区から第4区までで構成され、それぞれのテーマ、音楽、照明により異なる時間帯を表現しているかのようでした。
『不思議の国のアリス』とは趣が異なりますが、クリストファー・ウィールドンらしさを感じる振り付けがなされた作品で、新たな魅力を紹介する機会となりました。
舞台装置は、鉄道車両とも山々とも思えるメタリック・アートを思わせる大きなオブジェと太陽と月を現しているのであろう一つの照明のみの非常にミニマルなものです。
メタリック調でありながら半透明なオブジェを効果的に用い、照明は色と明るさと高さを変えることにより一日の時間の流れを生み出しています。
これだけのミニマルな舞台装置で様々な状況を表現できるものかと思うほど、舞台上の印象は様々な表情に変化します。
終盤には2階バルコニー席の最も舞台よりに配置された打楽器が突然鳴り出し舞台を盛り上げましたが、テレビ放送ではこの臨場感が伝わりにくいのが残念です。
初日のカーテンコールには、振付をしたクリストファー・ウィールドンを含め4人のスタッフも登場しました。
振付指導のジェイソン・ファウラーは分かりましたが、残りの二人は美術・衣装のジャン=マルク・ピュイサンと照明のジェニファー・ティプトンではないかと思います。
美術・衣装のジャン=マルク・ピュイサンも世界で活躍しており、日本でも2019年9月に初演されたK-BALLET COMPANY 熊川哲也版『カルミナ・ブラーナ』で衣装・美術デザインを担当しています。(K-BALLETではジャン=マルク・ピュイッソンと表記)
演目・クレジット・出演
「セレナーデ」
■音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
■振付:ジョージ・バランシン
■ステージング:パトリシア・ニアリー
■出演:
寺田亜沙子、柴山紗帆、細田千晶
井澤 駿、中家正博
渡辺与布、飯野萌子、川口 藍、中田実里、赤井綾乃、今村美由起、加藤朋子、菊地飛和、北村香菜恵、小村美沙、関 晶帆、中島春菜、原田舞子、土方萌花、廣川みくり、山田歌子、横山柊子
宇賀大将、清水裕三郎、趙 載範、浜崎恵二朗
「ライモンダ」から パ・ド・ドゥ
■音楽:アレクサンドル・グラズノフ
■振付:マリウス・プティパ
■改訂振付・演出:牧阿佐美
■出演:
・ライモンダ:小野絢子
・ジャン・ド・ブリエンヌ:福岡雄大
「海賊」から パ・ド・ドゥ
■音楽:リッカルド・ドリーゴ
■振付:マリウス・プティパ
■出演:
・メドーラ:木村優里
・アリ:速水渉悟
『DGV Danse à Grande Vitesse © by Christopher Wheeldon 』(日本初演)
■音楽:マイケル・ナイマン
■振付:クリストファー・ウィールドン
■美術・衣装:ジャン=マルク・ピュイサン
■照明:ジェニファー・ティプトン
■振付指導:ジェイソン・ファウラー
■出演:
第1区(ソリスト):本島美和、中家正博
第2区(ソリスト):小野絢子、木下嘉人
第3区(ソリスト):米沢 唯、渡邊峻郁
第4区(ソリスト):寺田亜沙子、福岡雄大
池田理沙子、木村優里、奥田花純、玉井るい、広瀬 碧、益田裕子、朝枝尚子、廣田奈々
井澤 諒、福田圭吾、速水渉悟、原 健太、小柴富久修、中島駿野、中島瑞生、渡邊拓朗
管弦楽:東京交響楽団
指揮:マーティン・イェーツ
収録:2020年1月11・12日 新国立劇場 オペラパレス
(参考)新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」(2019/2020シーズン)
ダンサーのサイン入りオリジナルグリーティングカード
新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」(2019/2020シーズン)では、上演した全ての公演(全3公演)で、「ダンサーのサイン入りオリジナルグリーティングカード」が来場者全員にプレゼントされました。
グリーティングカードに入っているサインは公演ごとに異なり、下記のとおり、それぞれのカードに5名のサインが入っています。
【サインをしているダンサー一覧(敬称略)】
■1月11日(土):奥村康祐、小野絢子、福岡雄大、柴山紗帆、中家正博
■1月12日(日):井澤 駿、木村優里、寺田亜沙子、速水渉悟、細田千晶
■1月13日(月・祝):本島美和、米沢 唯、渡邊峻郁、池田理沙子、木下嘉人