新国立劇場のオペラ研修所とバレエ研修所とが、研修所を開所して以来、初めてとなる合同ガラ公演を2020年9月12日(土)・13日(日)に新国立劇場のオペラパレスにて開催しました。
コロナ禍で舞台活動が制限される状況において、「今出来る最善を尽くし」て開催することとなった研修施設再開後のはじめての実践的なガラ公演です。
今回は、13日(日)のバレエ公演を中心に舞台鑑賞レポートをお届けします。
「新国立劇場研修所 ヤングアーティスト オペラ&バレエ ガラ」の感想
新国立劇場オペラパレスでは、2020年9月12日(土)・13日(日)の二日間、当初は「バレエ・アステラス・スペシャル2020 世界バレエ学校フェスティバル&アステラス・ガラ(仮)」が上演される予定でした。
例年、夏に、海外で活躍する日本人ダンサーを招いて上演している「バレエ・アステラス」の拡大企画として、オリンピックイヤーとなるはずであった今年は、海外で活躍する日本人ダンサーに加えて海外のバレエ学校を招待して上演する予定でした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により「バレエ・アステラス・スペシャル2020」は中止となり、思いがけず、オペラパレスにおいてオペラ研修所とバレエ研修所の初めての合同公演となり、第1部はバレエ研修所、第2部はオペラ研修所により、素晴らしい舞台が披露されました。
第1部最初の演目『トリプティーク~青春三章~』は、作家 芥川龍介の三男であるという芥川也寸志さんが28歳のときに作曲した『弦楽のための三楽章』から「トリプティーク」に牧阿佐美さんが振り付けたという作品でした。
研修所修了生である中島瑞生さんと渡邊拓朗さんをゲストに迎え、服部由依さん、菅沼咲希さんら研修生・予科性が総出演する華やかな舞台でした。
『海賊』第2幕より パ・ド・ドゥは、ゲストに第11期修了の阿部裕恵さんを迎え、石山 蓮さんが出演しました。
石山さんの滞空時間が長く感じられピタッと決まる着地が心地良い跳躍が印象的です。
研修所を終了して現在は牧阿佐美バレヱ団のソリストとして『ドン・キホーテ』や『白鳥の湖』『ロメオとジュリエット』にも主演している阿部さんにとって、若いダンサーとペアを組む機会は少ないのではないかと思います。
サポートにも慣れているトップダンサーとの共演に比べると研修生を相手としたパ・ド・ドゥでは、阿部さんがリードする機会も増え、コミュニケーションにも工夫が必要など、これからのプロダンサー人生に役立つ経験になったのでは、などと考えながら見てしまいました。
『眠れる森の美女』第3幕より パ・ド・ドゥは、小野絢子さん(新国立劇場バレエ団プリンシパル/第3期修了)と福岡雄大(新国立劇場バレエ団プリンシパル)さんがゲスト出演し、日本を代表するトップダンサーとしての貫禄ある踊りを披露しました。
今や日本を代表するプリマに成長した小野さんですが、バレエ研修所の第3期修了生であり、現役の研修生にとっては憧れの大先輩の踊りに大いに刺激を受けたのではないでしょうか。
この演目では、指揮の井田勝大さんとの息が抜群に合っていたように感じます。
もともと音楽性に高い小野さんですが、この日は音楽と一体化した踊りのその才能の卓越性を再認識し、また、福岡さんのマネージュには井田マエストロの奏でる音楽の中で遊んでいるかのようにさえ見えました。
マエストロとダンサーが見えない何かでコミュニケーションをしているかのような感覚を味わえた素晴らしい舞台でした。
バレエ研修所最後の演目は、『パキータ』より グラン・パ・クラシックで、小柴富久修さん(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト)をゲストに迎え、この春に研修所を修了したばかりの岸谷沙七優さんと松宮里々子さんも賛助出演しました。
第15期修了生は新型コロナウイルス感染症の影響で修了公演が中止されただけに、岸谷さんと松宮さんを舞台で見ることができて感慨深いものがありました。
小柴さん演じるリュシアン相手にパキータを吉田朱里さんが演じ、加藤里佳さん、安達美苑さん、土屋文太さん(「土」の右上に「、」が正式表記)がパ・ド・トロワを披露しました。
研修生・予科性も大勢出演し、華やかな演目で第1部を締め括りました。
第2部はオペラ研修所の研修生6組・7名がアリア・重唱を披露しました。
オペラ研修所の応募資格は、大学院修士課程(声楽専攻)修了程度が基本となるため、出演者はバレエ研修所の研修生に比べて少しお姉さんとお兄さんです。
オペラについては全くのド素人のため、詳しいことは分かりませんが、全員が「プロではないの?」と思って疑わないほど素晴らしい歌声でした。
公演概要
文化庁委託事業「令和2年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
新国立劇場研修所 ヤングアーティスト オペラ&バレエ ガラ
NNTT Young Artists’ Opera & Ballet Gala
2020年9月12日(土)14:00開演、9月13日(日)14:00開演(全2公演)
新国立劇場 オペラパレス
9月13日(日)公演
第1部 バレエ研修所
出演:バレエ研修所 第16期生、第17期生、予科生 ほか
■『トリプティーク~青春三章~』/ゲスト:中島瑞生(第11期修了)、渡邊拓朗(第12期修了)
■『海賊』第2幕より パ・ド・ドゥ/ゲスト:阿部裕恵(牧阿佐美バレヱ団ソリスト/第11期修了)
■『眠れる森の美女』第3幕より パ・ド・ドゥ/ゲスト:小野絢子(新国立劇場バレエ団プリンシパル/第3期修了)、福岡雄大(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
■『パキータ』より グラン・パ・クラシック/ゲスト:小柴富久修(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト)、賛助出演:岸谷沙七優(新国立劇場バレエ団アーティスト/第15期修了)、松宮里々子(新国立劇場バレエ団登録アーティスト/研修所第15期修了)
第2部 オペラ研修所
■W.A. モーツァルト『魔笛』よりアリア「なんと美しい絵姿」/増田貴寛
■P. チャイコフスキー『エフゲニー・オネーギン』よりアリア「恋に年齢は関係ない」/湯浅貴斗
■W.A. モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』より二重唱「私は黒髪のほうをとるわ」/内山歌寿美、杉山 沙織
■W.A. モーツァルト『魔笛』よりアリア「娘か可愛い女房が一人」/森 翔梧
■V. ベッリーニ『清教徒』よりアリア「あなたの優しい声が」/和田悠花
■G. ヴェルディ『ファルスタッフ』よりアリア「これは夢か? まことか?」/井上大聞
【公式サイト】
12日(土)の上演プログラムや公演の詳細は公式サイトでご確認ください。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/opera-ballet-gala/index.html
今後の公演
今回の公演で出演した新国立劇場オペラ研修所、新国立劇場バレエ研修所、新国立劇場バレエ団の皆さんが出演予定の公演をお知らせします。
ぜひ、劇場で鑑賞してください!
新国立劇場オペラ研修所
新国立劇場オペラ研修所 Young Opera Singers of Tomorrow 2020
■日程:2020年12月23日(水)
■会場:新国立劇場 オペラパレス
(詳細未定)
新国立劇場オペラ研修所 修了公演
■日程:2021年3月5日(金)・6日(土)・7日(日)
■会場:新国立劇場 中劇場
(詳細未定)
新国立劇場バレエ研修所
新国立劇場バレエ研修所公演「バレエ・オータムコンサート2020」
■日程:
・2020年11月7日(土)15:00開演
・2020年11月8日(日)15:00開演
(全2公演)
■会場:新国立劇場 中劇場
■チケット(税込):2,200円(全席指定)
■チケット発売:
・アトレ会員先行発売日: 9月16日(水)10:00~9月18日(金)
・一般発売日:9月23日(水)10:00~
(注)未就学児は入場できません。
新国立劇場バレエ研修所公演「エトワールへの道程(みち)2021 新国立劇場バレエ研修所の成果」
■日程:2021年3月20日(土)・21日(日)
■会場:新国立劇場 中劇場
(詳細未定)
新国立劇場バレエ研修所第18期研修生・第13期予科生(令和3年4月入所)募集
公演ではありませんが、新国立劇場バレエ研修所の研修生・予科性募集のお知らせです。
今回の舞台で見事な踊りを披露されていた若手ダンサーのように、新国立劇場バレエ研修所で学びプロのバレエダンサーを目指したい方はぜひご検討ください。
願書の受付期間は、10月1日(木)〜10月21日(水)です。
【第18期研修生】
■募集人数:男女あわせて6名程度
■研修期間:令和3年4月から2年間
■対象年齢:入所時点で、17歳以上19歳以下であること。
【第13期予科生】
■募集人数:男女あわせて若干名
■研修期間:令和3年4月から2年間
■対象年齢:入所時点で、15歳または16歳であること。
新国立劇場バレエ団
新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』(2020/2021シーズン開幕公演)
【「チコちゃんといっしょに課外授業」特典付オンライン有料配信決定!】
■日程:2020年10月23日(金)~11月1日(日)(全7公演)
■予定上演時間:約2時間35分(休憩含む)
■会場:新国立劇場 オペラパレス
今回の研修所公演にゲスト出演し、『眠れる森の美女』からグラン・パ・ド・ドゥを披露した小野絢子さんと福岡雄大さんのペアは10月24日(土)19:00と11月1日(日)14:00の公演に主演します。
チケットの売れ行きは非常に好調ですが、イベント収容率の制限緩和が決まれば、間隔を空けるために売り止めていた席の追加販売があるかも知れません!