2019年3月16日(土)、17日(日)の二日間、新国立劇場中劇場にて、「エトワールへの道程2019 新国立劇場バレエ研修所の成果」が上演されました。
第14期生(2年次)の6人にとっては、研修の成果を披露する機会であり、研修生としては最後の舞台です。
会場には、14期生の成長した姿、研修生として最後の舞台を見ようと大勢の観客が詰めかけ、研修生たちは観客の期待に応える熱気のある舞台を繰り広げました!
エトワールへの道程2019 新国立劇場バレエ研修所の成果 鑑賞レポート
新国立劇場バレエ研修所 第14期生最後の公演は、研修生たちの踊ることを心底楽しんでいる様子がヒシヒシと伝わってくる舞台ことでした。
皆、踊ることが大好きで、とにかく楽しそうに踊っている、そんな舞台であり、観ているこちらまで楽しくなってくる舞台でした。
そんな舞台の模様、感想などを紹介したいと思います。
鑑賞レポート
幕開きは、バレエ研修所 牧 阿佐美所長がショパンのピアノ曲の中から小品7曲に振り付けた、その名も『ダンス ダンス ショパン』です。
第14期生の多田そのかさん、山根くるみさんとともに第15期生、予科生も加わり、クラシック・バレエの基礎を重視した牧先生らしい作品をとても丁寧に踊っている印象でした。
舞台上にピアノを設置し、中川 彩さんの伴奏に合わせて踊りました。
この演目が終わると、オーケストラメンバーがピットに入場し、そのタイミングで司会を務める演劇研修所第12期生の永井茉梨奈さんが舞台に登場し進行していきました。
ここからは3組のパ・ド・ドゥが上演されます。
まず、岡田百音さんはゲストの清水裕三郎さんと組んで『ジゼル』を踊り、岡田さんらしいほのぼのとした雰囲気の舞台を作り出しました。
髙井惠里さんと仲村 啓さんの14期生ペアは『ラ・バヤデール』の幻想のシーンのパ・ド・ドゥを踊りました。
仲村さんは大きな体を生かしたダイナミックな踊りを披露し、いつもは華やかな笑顔が魅力的な髙井さんは幻想的なニキヤの表情で驚かせました。
パーキンソン赤城 季亜楽さんは、ゲストの小柴富久修さんと『白鳥の湖』から黒鳥のパ・ド・ドゥを披露しました。
華やかな表情でダイナミックに黒鳥を演じ、32回グラン・フェッテを決め、とくに17日(日)の公演では本公演並の盛り上がりを見せました。
この後、第14期生を中心に研修風景をまとめた映像が上映され、今年度から開始された「ANAスカラシップ」によるA.Y.ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーにおける研修の様子も含まれていました。
歴史ある世界最高峰のワガノワ・アカデミーでの3週間にわたる研修はとても刺激に満ちた経験となったようです。
このような機会を提供してくださった全日本空輸様に心から感謝いたします。
この映像は、いずれYouTubeで公開されるものと思います。
その後、第1部の最後の作品として、ドイツのザ・フォーサイス・カンパニーでも活躍したダンサー・振付家であり、バレエ研修所でコンテンポラリー・ダンス講師も務める島地保武さんが今回の公演のために振り付けた『彩雲―Iridescent clouds-』を上演しました。
「かわいい」をテーマとした作品とのことですが、それぞれのダンサーに合った個性的で面白みのある(?)動きで観客からは好意的に受け止められていたようです。
黒いリノリウムの床に原色に近い黄色の衣装がとても映える舞台でした。
髙井惠里さんの表情がとても楽しげで、また、音楽性の高い踊りと相まって視線を奪われてしまいました。
彼女の表現力と音楽性は、筆者がバレエを始めたときに感じていたバレエを踊ることの根源的な楽しさをいつも思い出させてくれます。
この第1部は90分と長丁場でしたが、演目構成が良かったこともあり、あっという間に時間が過ぎていきました。
第2部は『コッペリア』第3幕より上演し、フランツ役にはゲストの芳賀 望さんをお招きし、スワニルダは山根くるみさんと多田そのかさんが日替わりで出演しました。
二人ともとても端正な踊りで、素晴らしいダンサーに成長したことをあらためて実感しました。
「仕事」を踊った阿部純花さん、岸谷沙七優さん、安達美苑さん、菅沼咲希さんの第15期生、予科生も驚くほど揃ったアンサンブルで魅せてくれました。
日本ジュニアバレヱからも、たくさんのちびっこダンサーが出演し、とても華やかな舞台でした。
第14期生の挨拶
公演の最後は、これが最後の舞台となる修了生からの挨拶です。
研修所での生活を振り返りそれぞれのことばで感謝の気持ち、これからの抱負などを述べました。
第14期生6人のうち4人が予科生から研修所に入所しており、4年間の研修所生活を送ったそうです。
パーキンソン赤城 季亜楽さんは、この公演の2週間前に肉離れになったそうです。
( ゚д゚)
絶望的な状況にも諦めず、驚異的な回復を見せて舞台に立つ事ができました。舞台で踊り切っただけでなく、32回グラン・フェッテを見事に決めたとは驚きです!
(@_@)
彼女は、「10ヶ月で歩き始め、19歳になった今、32回、回れるようになりました」と語り、笑いを誘いました。
(´▽`)
仲村さんにとって劇場は特別な場所だったそうです。
舞台を鑑賞した後はワクワクし地に足がついていないようなフワフワした気持ちにさせてくれたと言います。
これからは、自分がそんな気持ちを持ってもらえるダンサーになれるよう精進したいと語りました。
見終えた感想
終了公演のあった週末、筆者は気分が優れない状況でしたが、舞台を鑑賞した後は高揚感に包まれていました。
第14期生を中心に、しっかりとした基本を習得し、ときに驚くほど美しい踊りを披露した舞台でした。
もちろん、プロのダンサーに比べると物足りない部分もありましたが、第14期生の皆さんの踊りからはバレエを愛する強い気持ちが感じられました。
この気持を胸にこれからのダンサー人生を邁進していかれることを期待しています。
舞台上で輝く第14期生の姿に再開できる日が待ち遠しくてたまりません!
公演概要
公演概要
文化庁委託事業「平成30年度 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
「エトワールへの道程2019 新国立劇場バレエ研修所の成果」
■日程:2019年3月16日(土)18:00、17日(土)15:00
■会場:新国立劇場 中劇場
■上演時間:2時間30分(第1部90分、休憩25分、第2部35分)
プログラム・キャスト
第1部
『ダンス ダンス ショパン』〔新作〕振付:牧 阿佐美
多田そのか、渡邊拓朗、山根くるみ
山内優奈(17日)、加藤里佳(16日)、服部由依(16日)、吉田朱里(両日)、安達美苑(16日)、菅沼咲希(17日)、根本真菜美(17日)
※( )内第4曲出演日
『ジゼル』より ペザントのパ・ド・ドゥ
岡田百音、清水裕三郎
『ラ・バヤデール』より 幻想のシーンのパ・ド・ドゥ
髙井惠里、仲村 啓
『白鳥の湖』より 黒鳥のパ・ド・ドゥ
パーキンソン赤城 季亜楽、小柴富久修
『彩雲―Iridescent clouds-』〔新作〕振付:島地保武
岡田百音、髙井惠里、パーキンソン赤城 季亜楽、仲村 啓
阿部純花、岸谷沙七優、松宮里々子、井上興紀
第2部
『コッペリア』第3幕より
スワニルダ:山根くるみ(16日)、多田そのか(17日)
フランツ:芳賀 望
時のワルツ:多田そのか(16日)、山根くるみ(17日)
曙:吉田朱里
祈り:髙井惠里、岡田百音、服部由依
仕事:阿部純花、岸谷沙七優、安達美苑、菅沼咲希
道化:井上興紀、松宮里々子、山内優奈、加藤里佳、根本真菜美
ほか 日本ジュニアバレヱ
青字:第14期生