2019年4月7日(日)から4月17日(水)まで、新国立劇場 オペラのダブルビル公演『フィレンツェの悲劇』/『ジャンニ・スキッキ』(新制作)が新国立劇場 オペラパレスにて上演されます。
4月5日(金)には舞台稽古見学会が開催されました。
本番さながらのリハーサルの様子などについて報告します。
【4/25追記】初日(4/7)公演の動画を追加しました。
新国立劇場 オペラ フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ(新制作)舞台稽古見学会
舞台稽古見学会の開会に当たり、新国立劇場支援業務室長の四元様からご挨拶がありました。
大野和士さんが芸術監督に就任し、今シーズンから1年おきに行うダブルビルの新制作公演で、イタリアで生まれ育った粟國 淳さんが両作品ともに演出しています。
両演目ともにフィレンツェを舞台とした上演時間約1時間の1幕もので、初演は『フィレンツェの悲劇』が1917年、『ジャンニ・スキッキ』が1918年とほぼ同時期です。
しかしながら、言語は『フィレンツェの悲劇』はドイツ語、『ジャンニ・スキッキ』はイタリア語であり、『フィレンツェの悲劇』はタイトルどおり悲劇、『ジャンニ・スキッキ』は喜劇と対照的な面もあります。
このような組み合わせの妙をお楽しみください、といった内容のご挨拶だったかと記憶しています。(間違えていたらごめんなさい)
短い言葉に的確にまとめられたご挨拶をいただき、オペラに疎い筆者の頭は一気に整理されました。(´▽`)
『フィレンツェの悲劇』の感想
前奏が比較的長く感じましたが、映画音楽を聴いているかのような感覚で、この後に展開される物語への期待が高まってくる気がしました。
登場人物は3人で、旅から戻ってきた織物商人シモーネが、妻ビアンカとフィレンツェ公爵の息子グイード・バルディの浮気を疑い、3人のやりとりが続きます。
オペラのことを全く知らず、『フィレンツェの悲劇』という演目についての知識もまったくない筆者にとっては、3人が浮気についてネチネチと言い合っているとしか思えませんでした。
筆者は、オペラとは内容は二の次で歌唱と音楽の演奏を楽しむものだ、と浅はかに考えていました。
しかし、あまりにも腑に落ちないので、鑑賞後になって今さらながら紹介記事などを読み、音楽的・美術的な要素に加え文学的な理解が必要なものだと感じ、一気に興味が湧きました。
あらすじだけを読めばグロテスクな終わり方ですが、オペラ『フィレンツェの悲劇』のテーマを理解するには、原作がオスカー・ワイルドであることや、舞台となった16世紀当時のフィレンツェの政治的背景などについても考慮する必要があることを知りました。
文学作品を理解するのも通じ、バレエに比べ言語を介する分、左脳的な要素も強く求められるのだと思い知った気がします。
今までまったく攻略不能であったオペラに少しだけ親近感を持てた体験でした。
シモーネを演じたのはロシア出身の名バリトン、セルゲイ・レイフェルクスさんです。
サンクトペテルブルク(生まれた当時はレニングラードと呼ばれていた)のご出身で、キーロフ・オペラ(現マリインスキー劇場)で初めてオペラを鑑賞したそうです。
レニングラードの文化的環境と両親の音楽に対する愛がオペラ歌手セルゲイ・レイフェルクスさんを育んだのですね。
そんなセルゲイ・レイフェルクスさんも奥様も大の親日家で、前世は日本人だったのではないかと二人で話すほどのようです。
セルゲイ・レイフェルクスさんの歌唱はもちろんのこと、インタビュー記事によりオペラへの手ほどきをしていただいた思いがします。
『ジャンニ・スキッキ』の感想
舞台は大富豪ブオーゾの邸宅の部屋のようですが、登場人物は小人のように小さく、部屋がとても大きいセットで、衣装は少し前の時代のような印象でした。
このような舞台に設定した理由を粟國さんはインタビューで「ミクロの世界に入ったような舞台セットで、人間のちっぽけさを表現したいです。」と述べています。
時代は1950~55年くらいに設定しているそうです。
1300年、1400年くらいにしてしまうと衣装の見え方の問題で、1時間という短い上演時間のなかでそれぞれの登場人物の性格を把握するのが難しくなるからだそうです。
また、戦後、復興が進み余裕が出てくると人間のエゴが出てくるという時代背景にもこの物語は合うと思ったからのようです。
タイトル・ロールを演じたのはスペインを代表するバリトン歌手 カルロス・アルバレスさんでした。
臨終の床にある大富豪ブオーゾのふりをして一人の人物が他人のふりをしていましたが、声色を変えながら演技・歌唱する様子は、素人から見ても面白く感じ、また、とても高度なテクニックが必要なのだろうと感じました。
カルロス・アルバレスさんの新国立劇場登場は、2005年の『マクベス』のタイトル・ロール以来とのことです。
この4月には舞台活動30周年を迎えるそうです。
そんな節目となる舞台を鑑賞できたことはとても有り難いことでした。
カルロス・アルバレスさんは、この来日で「桜の花」に会えることを楽しみにしていたようですが、運良く東京は満開の時期です。
帰りに見かけた満開の桜は、カルロス・アルバレスさんの舞台活動30周年を祝うかのように咲き誇っていました!
オペラトーク『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』映像(ダイジェスト版)
2019年3月31日(日)には『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』の魅力に迫るトークショーが開催されています。
音楽ジャーナリストの井内美香さんの司会により、指揮の沼尻竜典さんと演出の粟國 淳さんをゲストに迎えたトークです。
粟國さんからはコンセプトや時代設定などの演出面での解説がありますが、オペラ初心者にとっては「なるほど、そういうことか」と一気に理解が深まるお話をしていただいています。
粟國さんは登場人物の背景を物すごく考えているそうで「ジャンニとツィータの秘められた過去?」の設定にはマエストロも井内さんも非常に感心していましたので、コアなオペラファンにとっても興味深い話なのではないかと思います。
マエストロご自身によるピアノ演奏と作品解説や大沼 徹さん(シモーネ)、宮里直樹さん(リヌッチョ)、三宅理恵さん(ラウレッタ)の3人のカバー歌手による歌唱も聴くことができます。
新国立劇場 オペラトーク『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』(ダイジェスト版)
(YouTube / 新国立劇場 New National Theatre Tokyo 公式チャンネル)
新国立劇場 オペラ フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ(新制作) 公演情報
公演概要
新国立劇場 2018/2019シーズン
オペラ「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」
Eine florentinische Tragödie / Gianni Schicchi
■日程:2019年4月7日(日)14:00、4月10日(水)19:00、4月14日(日)14:00、4月17日(水)14:00
■会場:新国立劇場 オペラパレス(京王新線・都営新宿線「初台駅」中央口直結)
■指揮:沼尻竜典
■演出:粟國 淳
■管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
フィレンツェの悲劇
『フィレンツェの悲劇』/アレクサンダー・ツェムリンスキー
全1幕<ドイツ語上演/字幕付>
Eine florentinische Tragödie / Alexander ZEMLINSKY
■キャスト:
– グイード・バルディ:ヴゼヴォロド・グリヴノフ
– シモーネ:セルゲイ・レイフェルクス
– ビアンカ:齊藤純子
ジャンニ・スキッキ
『ジャンニ・スキッキ』/ジャコモ・プッチーニ
全1幕<イタリア語上演/字幕付>
Gianni Schicchi / Giacomo PUCCINI
■キャスト:
– ジャンニ・スキッキ:カルロス・アルバレス
– ラウレッタ:砂川涼子
– ツィータ:寺谷千枝子
– リヌッチョ:村上敏明
– ゲラルド:青地英幸
– ネッラ:針生美智子
– ゲラルディーノ:吉原圭子
– ベット・ディ・シーニャ:志村文彦
– シモーネ:大塚博章
– マルコ:吉川健一
– チェスカ:中島郁子
– スピネッロッチョ先生:鹿野由之
– アマンティオ・ディ・ニコーラオ:大久保光哉
– ピネッリーノ:高橋正尚
– グッチョ:水野秀樹
【4/25】初日(4/7)公演の動画を追加しました。
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より(2019年4月)
(YouTube / 新国立劇場 New National Theatre Tokyo 公式チャンネル)
公演の詳細は新国立劇場公式サイトをご確認ください。
舞台鑑賞に役立つインタビュー記事やリブレット対訳などのコンテンツが満載です!
>>> 新国立劇場 オペラ フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ[新制作]