【鑑賞レポ】英国ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』(シネマシーズン2017/18アンコール上映)

2018年9月14日(金)から19日(水)の期間、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18」のバレエ6作品全てが日替わりでアンコール上映されました。

見逃していた『不思議の国のアリス』をこの機会に鑑賞することができました。

ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』を鑑賞した感想や新国立劇場バレエ団上演による『不思議の国のアリス』の鑑賞に向けて感じたことなどを記したいと思います。

英国ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』(シネマシーズン2017/18アンコール上映)鑑賞の感想

鑑賞の目的と感想

今回の鑑賞の主な目的・理由は、新国立劇場バレエ団での上演に先立つ予習をするためです。

もちろん、演目自体に関心はありましたが、新国での上演が迫りつつあり、予習の必要性を強く感じていました。

クリストファー・ウィールドン振付による英国ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』はすでにDVD・Blu-rayが発売されており、それを鑑賞すれば事足ります。

しかし、現在、発売されているものは初演時の全2幕のバージョンのため、最新版の全3幕のバージョンを鑑賞するには、シネマシーズンを映画館で鑑賞する必要がありました。

…と思っていたところ、なんと、2018年10月上旬に全3幕バージョンのDVD・Blu-rayが発売されることが決まりました!

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『不思議の国のアリス』を鑑賞した感想は後述しますが、鑑賞してみて強く思ったことは、やはり予習が必要な作品である、ということです。

ルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』について知識を持たず、ディズニー映画などの他の映像化された作品もほとんど見た記憶がない筆者の感想は次のようなものでした。

個性的なキャラクターが数多く登場し、舞台美術・衣装や照明などは色鮮やかで、たくさんのエピソードが登場するエンターテイメント性の高い作品。
ドタバタ劇のように支離滅裂なエピソードが展開され、一つの作品としてはよく分からない。

『不思議の国のアリス』がノンセンス(ナンセンス)文学と呼ばれていることから支離滅裂な印象を持つのは当然なことかもしれません。

しかし、『不思議の国のアリス』の世界を知る人であれば、感想はかなり異なったものになったのではないかとも思います。

主人公アリスが「不思議の国」へと紛れ込み、冒険をしていくなかでさまざまな個性的なキャラクターと遭遇し、いろいろなエピソードを体験します。

そういった登場人物(キャラクター)やエピソードについての予備知識があると、眼前の舞台で演じられているシーンが、原作のどのシーンなのかすぐに一致し、不思議の国の中に自然と入り込めたのではないでしょうか。

また、原作の世界観の再現性の高さには驚嘆する出来映えだと感じるのではないでしょうか。

舞台美術は、原作に用いられたジョン・テニエルの挿絵をもとに制作されていると思われますので、可能であれば他の作家の挿絵などではなく、原作の挿絵を見て予習しておくと、舞台美術の素晴らしさを理解できるのではないかとも感じました。

筆者には原作の予備知識がなく、不思議の国の世界観に入り込めず、置いてけぼりにされた格好で、その意味では残念な思いをしました。

しかし、予備知識がない人でも素直に笑えて楽しめるエンターテイメント性の非常に高い作品であったことは間違いありません。

Alice’s adventures in Wonderland – Live in cinemas 23 Oct 2017

(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)

作品のカギを握るキャラクター アリス、ハートの女王、マッド・ハッタ―

とにかく主人公アリスが最初から最後まで出ずっぱりで、大活躍します。

シネマシーズンでアリスを演じたのは、初演キャストでもあるローレン・カスバートソンさんですが、彼女のバレエ・テクニック、演技力は想像以上に素晴らしく、さらに体力、集中力には驚嘆させられます!

カスバ―トソンさんのデキが素晴らしすぎて、筆者のなかでの「アリス像」が彼女に固定化されてしまったと感じるほど、カスバ―トソンさんのハマり役でした。

こうなってくると、新国立劇場バレエ団でアリスを演じる小野絢子さんと米沢唯さんにはハードルが上がってしまうとも感じます。

しかし、小野さんと米沢さんの実力やキャラを考えれば、二人ならではのアリス像を提案してくれるに違いないと頼もしく思う気持ちも湧いてきます。

この作品には本当に個性の強いキャラクターが数多く登場します。

なかでも、主人公アリス、マッド・ハッタ―、ハートの女王の三役はインパクトが強く、舞台を鑑賞した際の印象を大きく左右する重要な役だと感じました。

もちろんアリスのパートナーであるハートのジャックは重要でアリストのパ・ド・ドゥも大きな見せ場ではありますが、他のキャラに比べると印象は薄かったように感じます。

ハートの女王は、当初、ゼナイダ・ヤノウスキーさんがキャスティングされていましたが、何らかの理由によりラウラ・モレーラさんに変更されたようです。

第3幕は、ハートの女王の独壇場ですが、『眠れる森の美女』の「ローズ・アダジオ」へのオマージュである「タルト・アダジオ」などは抱腹絶倒すること間違いありません。(´▽`)

案内役のアレクサンダー・キャンベルさんがケビン・オヘア監督に、第3幕の好きな場面を質問していました。

オヘア監督のお気に入りは、なんといっても「ハートの女王」だそうです。

「何度も観ているが、それでもラウラには笑わせられる」という内容のことを語られていました。

「タルト・アダジオ」の動画が公開されていますが、ネタバレが嫌な方は飛ばしてください。

The Tart Adage from Alice’s Adventures in Wonderland (The Royal Ballet, 2017)

(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)

さらに、もう一人の印象的なキャラクターであるマッド・ハッタ―はタップ・ダンスを披露します。

案内役のダーシー・バッセルさんがリハーサル・スタジオに赴き、マッド・ハッタ―役を演じたスティーヴン・マックレーさんにタップ・ダンスの苦労話を聞いていました。

バレエとタップは逆のことが求められます。

例えば、バレエは音を立てずに静かに踊らなければいけませんがタップは音を出します。

バレエは身体を引き上げますがタップは重心を下にします、といった具合に。

この二つの異なる技術を融合させねばならず、頭のなかではバレエ、タップ、バレエ、タップと切り替えるのが大変だそうです。

有り難いことにこの動画は公開されています。

マックレーさんに振付をするクリストファー・ウィールドンさんも少し出演しています。

Becoming The Mad Hatter: Steven McRae on Alice’s Adventures in Wonderland (The Royal Ballet)

(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン『不思議の国のアリス』を鑑賞して感じた予習の必要性

クリストファー・ウィールドンの『不思議の国のアリス』は、ルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』をバレエにしたため、感想にも記したように、登場するキャラクターやエピソードを知らずにいると、置いてけぼりにされてしまいます。

そのような事態を避け、バレエを楽しむためには、原作を読んだり、映像化されている作品に親しんだりして『不思議の国のアリス』について知識を持ってバレエ鑑賞に臨んだ方が良いと感じます。

また、舞台美術制作に当たり、ジョン・テニエルによる原作の挿絵を元にしていますので、可能であれば原作の挿絵をご覧になっておいた方が、より楽しめるのではないでしょうか。

ディズニーのアニメ映画のキャラは可愛すぎて、バレエに登場するキャラには違和感を覚えるかもしれません。

また、本によっては、ジョン・テニエルによる挿絵ではなく、新たに描いたものもありますので確認が必要です。

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18(アンコール上映) 『不思議の国のアリス』上映概要

【日時】 2018年9月16日(日)10:00~(上映時間:3時間13分)

【場所】 TOHOシネマズ日比谷(TOHOシネマズ日本橋でもアンコール実施)

【振付】クリストファー・ウィールドン

【音楽】ジョビー・タルボット

【指揮】クン・ケセルス

【出演】

ローレン・カスバートソン(アリス)
フェデリコ・ボネッリ (ハートのジャック)
ジェームズ・ヘイ(ルイス・キャロル/白ウサギ)(エドワード・ワトソンから変更)
ラウラ・モレーラ(ママ/ハートの女王)(ゼナイダ・ヤノウスキーから変更)
スティーヴン・マックレー(マジシャン/マッドハッター)

【案内役】

ダーシー・バッセル(元英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)
アレクサンダー・キャンベル(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)