【鑑賞レポ】新国立劇場 第3回避難体験オペラコンサート(2018年9月26日)

新国立劇場では、2018年9月26日(水)、災害時・非常事態への対応力強化を目的に「第3回避難体験オペラコンサート」を開催しました。

この企画は、2017年につづいて3回目の実施となりました。

避難体験の様子とオペラコンサートについて報告します。

第3回避難体験オペラコンサート

新国立劇場では、災害時・非常事態への対応力強化を目的とした「第3回避難体験オペラコンサート」を開催しました。

第1回は2014年8月に第2回は2017年9月に開催し、今回が3回目の開催でした。

会場は、第1回、第2回がオペラハウスでしたが、第3回は異なる劇場でということで中劇場で初めて実施されました。

中劇場(第3回避難体験オペラコンサート)

第3回避難体験オペラコンサートの概要

【日時】 2018年9月26日(水)15:00

【場所】 新国立劇場 中劇場

【プログラム】 PIVOT!(新国立劇場オペラ研修所修了生)によるオペラコンサート

コンサート中に災害(訓練時まで非公表)が発生しコンサートが中断。
中断後、実際に避難行動を取り、その後、客席へと戻ってコンサートを再開。
オペラコンサートのプログラム、出演者等は、最下段に記載しています。

【参加方法】 インターネットもしくは往復はがきでの申し込み

【参加費】 無料

この避難体験(避難訓練)は国立研究開発法人産業技術総合研究所の協力を得て、最新の技術により、避難訓練の様子を計測・分析しています。

過去2回の実施により多くの知見を蓄積し、新国立劇場同様の大型劇場施設などへの横展開も検討しているそうです。

当日はメディア関係者の取材もありました。各メディアでの報道をご覧になった方もいらっしゃるのでは。

避難体験

冒頭、公益財団新国立劇場運営財団関係者から注意事項などの説明がありました。

コンサート中に何らかの非常事態が発生し、避難が必要な状況となり、観客は実際に避難行動を取るとのことです。

その非常事態の内容はあらかじめ告知されず、観客はどのタイミングでどのような非常事態が発生するのか、緊張感を持ちながらオペラコンサートを鑑賞しました。

新国立劇場オペラ研修所修了生で結成されている「PIVOT!」によるオペラコンサートが始まり、何曲目かの上演中に「非常事態」が発生しました。

今回は、入場時にテロ対策強化のための手荷物検査実施(試行)があったため、設定される非常事態がテロの可能性もあるかもしれないと緊張感を保っておりましたが、非常事態は火災でした。

状況確認ができるまでの間、しばらくは客席で待機し、その後、中劇場から外に避難する案内がありました。

当日は、昨年同様、あいにくの雨模様で、屋外ではなく、劇場入口から少し先の屋内の空間に避難しました。

全員の避難が確認された後、中劇場に戻ってからオペラコンサートが再開されることが説明され、避難訓練は終了しました。

手荷物検査(第3回避難体験オペラコンサート)

オペラコンサート

オペラコンサートは、第Ⅱ部の「PIVOT! ミニオペラ W.A.モーツァルト オペラ『フィガロの結婚』ハイライト」から再開されました。

林よう子さん演じる伯爵夫人がある事件の顛末を語りかける設定となっており、オペラの素人でもよく分かる内容でした。

林よう子さんの機転を利かせた軽妙なおしゃべりは会場をなごませ、楽しい時間を過ごすことができました。

オペラ歌手の皆さんは素晴らしい歌声と驚くほどの声量、それからそんなテクニックもあるんだと驚愕した歌唱法を披露してくださいました。

スザンナ役の種谷典子さんは、昨年(2017年)、イタリア、リーヴァ・デル・ガルダで行われた第24回リッカルド・ザンドナイ国際コンクールにおいて特別賞・東京メトロポリタン財団賞を受賞された実力派で、加えて、とても美しい方でした!

しかし、高尚なイメージのオペラとは裏腹に「フィガロの結婚」とはとても下世話なストーリーなんだと不思議な感覚を抱きました。

役員挨拶

公益財団法人新国立劇場運営財団の常務理事様からご挨拶がありました。

今回、試行で入場時に手荷物検査がありましたが、昨今の国際的な情勢からいっても将来的には手荷物検査を実施せざるを得なくなるかもしれないという内容のご発言がありました。

世界的に見ても、不特定多数の人が集まる場所がテロの標的になっており、安全のためには仕方ないと思います。

劇場に到着するのが遅れがちの方は、これからは、早めに到着するようにされた方が良いかもしれませんね。

また、将来的には3劇場(オペラパレス、中劇場、小劇場)同時実施の避難訓練についても言及するなど、劇場の安全対策に万全を期す意気込みがうかがえました。

参加した感想

非常事態発生後、客席から「はやく逃げろ!年寄りが先!」などと大声を発する年配の男性がいましたが、これは演出によるものだったのか一参加者のアドリブだったのかは不明です。

避難する際、やはり真実味がなく、ほとんどの参加者がおしゃべりをしていました。

関係者の誘導もあり、スムーズな避難ができましたが、本当の非常事態の場合にはこのように上手くいくものか考えさせられました。

非常事態が発生した際に、なかなか冷静な行動を取れる自信がありません。

こういう機会は何度でも体験して、少しでも普段と異なる状況に慣れることも重要だと感じます。

天候が良かった場合の避難場所は不明でしたが、振り返ってみると、それも知りたかったなと、思います。

劇場に行く機会が多ければそれだけ劇場において被災するリスクも高まりますので、万が一に備えたい心境です。

また、将来的にはオペラパレス、中劇場、小劇場の3つの劇場で避難訓練が実施されるとしたら、それぞれの劇場では、オペラ、バレエ、演劇が上演されるのだろうかと考えました。

そのときには是非、バレエの会場で参加したいと思います。(´▽`)

オペラコンサート プログラム / 出演者

第Ⅰ部 オペラ・アリア集

ヴェルディ「椿姫」”乾杯の歌” 全員

ビゼー「カルメン」”ハバネラ” 藤井麻美

ヴェルディ「マクベス」”何という暗闇が” 松中哲平

モーツァルト「魔笛」”復讐の炎は地獄のように我が心に燃え” 宮地江奈

シュトラウス「こうもり」”シャンパンの歌” 宮地江奈、藤井麻美、松中哲平、岸浪愛学

第Ⅱ部 PIVOT! ミニオペラ W.A.モーツァルト オペラ「フィガロの結婚」ハイライト

アルマヴィーヴァ伯爵:小林啓倫

伯爵夫人:林 よう子

フィガロ:後藤春馬

スザンナ:種谷典子

ケルビーノ:宮地江奈

マルチェッリーナ:藤井麻美

ドン・バルトロ:松中哲平

ドン・バジリオ/ドン・クルツィオ:岸浪愛学

ピアニスト:高田絢子

アンコール

シュトラウス「こうもり」”シャンパンの歌”

【追記】

新国立劇場 オペラ 公式サイトにニュースが掲載されました。

⇒ https://www.nntt.jac.go.jp/opera/news/detail/6_012935.html