2019年5月21日、「バレエ界のオスカー」として知られる国際的なバレエの賞「ブノワ賞」の授賞式がモスクワのボリショイ劇場にて開催されました。
スウェーデン王立バレエの栁澤郁帆(やなぎさわ・かほ)さんが最優秀女性ダンサー賞にノミネートされていましたが、惜しくも受賞はなりませんでした。
今回は、ブノワ賞2019受賞者について紹介します。
ブノワ賞2019受賞者
特別賞(FOR LIFETIME ACHIEVEMENT)
■イリ・キリアン(Jiri Kylian)
振付家(CHOREOGRAPHERS)(2名)
■フレデリック・ベンケ・ライドマン(Fredrik Benke Rydman)
『産業ロボットとのデュエット(Duet with an Industrial Robot)』
Johan Lilje Dal, Karl Johan Rasmusson
ストックホルム・シティ・シアター(Stockholm City Theatre)
■クリスティアン・シュプック(Christian Spuck)
『冬の旅(Winterreise)』
ハンス・ツェンダー(Hans Zender), フランツ・シューベルトFranz Schubert
チューリヒ・バレエ(Zurich Ballet)
女性バレエダンサー(BALLERINAS)(2名)
■アシュリー・ボーダー(Ashley Bouder)
スワニルダ(『コッペリア』/レオ・ドリーブ/ジョージ・バランシン)
ニューヨーク・シティ・バレエ(New York City Ballet)
■エリサ・カリーリョ・カブレラ(Elisa Carrillo Cabrera)
ジュリエット(『ロミオとジュリエット』/セルゲイ・プロコフィエフ/ナチョ・ドゥアト)
ベルリン国立バレエ(State Ballet Berlin)
男性ダンサー(DANCERS)
■ワディム・ムンタギロフ(Vadim Muntagirov)
ジークフリート王子(『白鳥の湖』/ピョートル・チャイコフスキー/リアム・スカーレット)
英国ロイヤル・バレエ
作曲家(COMPOSERS)
受賞者なし
舞台美術(SCENOGRAPHER)
■ジョン・マクファーレン(John Macfarlane)
『白鳥の湖』(ピョートル・チャイコフスキー/リアム・スカーレット)
英国ロイヤル・バレエ
THE RUSSIAN-ITALIAN PRIZE BENOIS-MASSINE
■アンナ・ラウデール(Anna Laudere)
ブノワ賞2019審査員
■審査員長:ユーリー・グリゴローヴィチ(Juri Grigorovich)
■副審査員長:スヴェトラーナ・ザハロワ(Svetlana Zakharova)
■審査員:
-Dirk Badenhorst
-テッド・ブランセン(Ted Brandsen)
-アナ・ラグーナ(Ana Laguna)
-アニエス・ルテステュ(Agnès Letestu)
-ウラジーミル・マラーホフ(Vladimir Malakhov)
-レイチェル・ムーア(Rachel Moore)
ブノワ賞2019受賞者の紹介
特別賞:イリ・キリアン
1947年、チェコスロバキア(現チェコ)のプラハ出身。
プラハ・コンセルヴァトワール、英国ロイヤル・バレエ・スクールで学び、1968年にドイツ・シュツットガルト・バレエに入団。
1978年から1999年までネザーランド・ダンス・シアター(NDT)の芸術監督を務め、芸術監督退任後も振付家・芸術顧問としてNDTに残りました。
キリアンの作品は、パリ・オペラ座バレエやシュツットガルト・バレエなど、世界を代表するバレエ団のレパートリーに入っています。
NDTで指導するキリアンの映像です。
Jiří Kylián in the Studio (NDT 1 | Programma I)
(YouTube / Nederlands Dans Theater (NDT) 公式チャンネル)
振付家:フレデリック・ベンケ・ライドマン
フレデリック・ベンケ・ライドマンのプロフィールなど、彼に関する情報は限定的でした。
受賞作は、世界的な産業用ロボットメーカー ABBのロボットとの共演です?!
ABBは、スウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが合併した重電、重工系メーカーとでもいいましょうか。
産業用ロボットでは、日本のファナック、安川電機、ドイツのクーカ(中国企業に買収)と並ぶ4大メーカーです。(クーカ製産業ロボットと踊っている人もいましたね)
Renowned Swedish choreographer’s new dance partner is one of the world’s largest industrial robots
(YouTube / ABB 公式チャンネル)
振付家:クリスティアン・シュプック
チューリッヒ・バレエ芸術監督・振付家
クリスティアン・シュプックは、ジョン・クランコ・スクール卒業後、シュツットガルト・バレエなどでダンサー、コレオグラファーとしてキャリアを積み、2012/13シーズンからチューリッヒ・バレエ芸術監督・振付家に就任しています。
チューリッヒ・バレエには、『ロメオとジュリエット』や『くるみ割り人形とねずみの王様』、ブノワ賞受賞作となった『冬の旅(Winterreise)』などを振り付けています。
2018年12月にはNHK BS プレミアムシアターで『くるみ割り人形とねずみの王様』が放送され、日本でも注目されるきっかけになりました。
クリスティアン・シュプック『冬の旅(Winterreise)』の予告編映像です。
Trailer – Winterreise – Ballett Zürich
(YouTube / Opernhaus Zürich 公式チャンネル)
女性バレエダンサー:アシュリー・ボーダー
ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB) プリンシパル
アシュリー・ボーダーは、米国・ペンシルベニア州出身。
6歳からバレエを始め、NYCBの公式スクールであるスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)を経て、2000年にNYCBの研修生となり、同年、コール・ド・バレエとして正式に入団します。
2004年にソリスト、2005年にプリンシパルに昇格しています。
アシュリー・ボーダーが踊るスワニルダ(コッペリア)の動画がないため、バランシン『セレナーデ』の動画を紹介します。
NYC Ballet’s Ashley Bouder on Balanchine’s SERENADE
(YouTube / nycballet 公式チャンネル)
女性バレエダンサー:エリサ・カリーリョ・カブレラ
ドイツ・ベルリン国立バレエ プリンシパル
メキシコ出身。
スカラシップを得て英国のイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学。
1999年にドイツ・シュツットガルト・バレエに入団し、2006年にソリストに昇格。
2007年にデミ・ソリストとしてベルリン国立バレエに移籍し、2011年にプリンシパルに昇格。
母国語であるスペイン語の他に、英語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語が話せるそうです。
受賞作となったナチョ・ドゥアト版『ロミオとジュリエット』のリハーサル動画が、エリサ・カリーリョ・カブレラさんのツイッターに投稿されています。
Very excited after tonight’s performance as Juliette in #RomeoundJulia by Nacho Duato at @Staatsballett_B, with my colleague Cameron Hunter as Romeo. pic.twitter.com/vxhYnEV6cQ
— Elisa Carrillo Cabrera (@ElisaCarrilloC) 2018年5月26日
男性ダンサー:ワディム・ムンタギロフ
英国ロイヤル・バレエ プリンシパル
ロシア・チェラビンスク出身。
ロシア国立ペルミバレエ学校を経て、ロイヤル・バレエスクールで学び、2009年にイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)に入団。
2012年にリード・プリンシパルに昇格。
2014年、英国ロイヤル・バレエにプリンシパルとして移籍。
日本では新国立劇場バレエ団にゲスト・プリンシパルとして数多くの舞台に主演しています。
下の映像は、ジークフリート王子演じるワディム・ムンタギロフさんが、オディール演じるマリアネラ・ヌニェスをパートナーに踊ります。
超絶技巧をいとも簡単に決めています。
Swan Lake – Coda from the Black Swan pas de deux in Act III (The Royal Ballet)
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
舞台美術:ジョン・マクファーレン
ジョン・マクファーレンは、新進気鋭の振付家リアム・スカーレットが英国ロイヤル・バレエのケヴィン・オヘア芸術監督から『白鳥の湖』の新制作を打診された際、ジョンと一緒なら引き受けると言ったほど厚い信頼を寄せている美術家です。
新制作の過程で議論を重ね、過去の『白鳥の湖』で嫌なことをリストアップしたそうです。
どんなものがリストアップされて新作に活かされたのか想像するのも楽しいですね。
ジョン・マクファーレンさんが、英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』新制作の際に美術について語っている映像です。
Designing a classic: How Swan Lake’s set and costumes were created (The Royal Ballet)
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
THE RUSSIAN-ITALIAN PRIZE BENOIS-MASSINE
:アンナ・ラウデール
ドイツ・ハンブルク・バレエ プリンシパル
1983年、ラトビアのスィグルダ出身。
リガ・バレエスクール、ハンブルク・バレエスクールで学び、2001年にハンブルク・バレエに入団。
2008年にソリストに昇格し、2011年にプリンシパルに昇格。
ANNA LAUDERE – Hamburgas baleta vadošā soliste
(YouTube / Latvijas Dejas informācijas centrs 公式チャンネル)
ブノワ賞について
ブノワ賞の概要
ブノワ賞は1992年から開催され、今年(2019)は第27回目の開催となりました。
世界的な振付家、重要なバレエ団の芸術監督、バレエ・スター、バレエ指導者らで構成される審査委員会が年間候補者を選定し、審査します。
授賞式は、ユネスコの下部組織である国際NGO団体「国際ダンス協議会」が制定した国際ダンスデーである4月29日に発表されます。
日本人では、過去に、木田真理子(2014年)、オニール八菜 (2016年)が受賞しています。
今回、惜しくも受賞を逃した栁澤郁帆さんは、英国ロイヤル・バレエ・スクールを優秀な成績で卒業し、スウェーデン王立バレエに進みました。
スウェーデン王立バレエといえば日本人初のブノワ賞受賞ダンサー木田真理子さんが受賞時に在籍していたカンパニーですね。