英国ロイヤル・バレエ団 日本公演で『ドン・キホーテ』に主演予定だった高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんが怪我のために降板することが、5月22日に発表されました。
5月31日には、キャスト変更が発表され、日本では主演予定のなかったマヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんが主演することが発表されました。
今回は英国ロイヤル・バレエ団 日本公演『ドン・キホーテ』キャスト変更のニュースと新たに主演することが決まったマヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんを紹介したいと思います。
高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんの怪我による降板に伴う『ドン・キホーテ』キャスト変更
キャスト変更について
高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんは日本でも大人気のダンサーであり、とくに英国ロイヤル・バレエ団の全幕公演に主演する高田 茜さんの舞台を日本で鑑賞できる機会とあって楽しみにしていた方も多いかと思います。
これに伴う『ドン・キホーテ』の主演キャストの変更が発表されました。
新たなキャスティングは、降板する二人に単に代役を立てるのではなく、他の公演のキャスト変更も含めたキャスト変更になりました。
具体的には、高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんが主演予定だった6月22日(土)18:00開演と6月25日(火)18:30開演の公演で主演するのは、ヤスミン・ナグディさんとマルセリーノ・サンベさんのペアが主演します。
当初ヤスミン・ナグディさんが主演予定だった6月22日(土)13:00開演の公演は、代わりマヤラ・マグリさんキトリ役を踊ります。
ヤスミン・ナグディさんのキトリを楽しみに、6月22日(土)13:00開演の公演チケットを購入したファンにとっても残念な結果になってしまいました。
しかし、英国ロイヤル・バレエ団のケヴィン・オヘア芸術監督は、「芸術的に最善の解決策を提供しようと試みた」とコメントしており、本場ロンドン公演でもマヤラ・マグリさんとアレクサンダー・キャンベルさんのペア、ヤスミン・ナグディさんとマルセリーノ・サンベさんのペアはともに高い評価を得ていることを説明しています。
説明にもあるように、マヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんはロンドン公演の『ドン・キホーテ』の主役デビューを果たしています。
『ドン・キホーテ』主要キャスト
6月21日(金)18:30
キトリ:マリアネラ・ヌニェス
バジル:ワディム・ムンタギロフ
メルセデス:ラウラ・モレーラ
エスパーダ:平野亮一
ドリアードの女王:金子扶生
6月22日(土)13:00
キトリ:ヤスミン・ナグディ → マヤラ・マグリ
バジル:アレクサンダー・キャンベル
メルセデス:イツィアール・メンディザバル
エスパーダ:ニコル・エドモンズ
ドリアードの女王:崔由姫(チェ・ユフィ)
6月22日(土)18:00
キトリ:高田茜 → ヤスミン・ナグディ
バジル:スティーヴン・マックレー → マルセリーノ・サンベ
メルセデス:ラウラ・モレーラ
エスパーダ:平野亮一
ドリアードの女王:金子扶生
6月23日(日)13:00
キトリ:ローレン・カスバートソン
バジル:マシュー・ボール
メルセデス:クレア・カルヴァート
エスパーダ:リース・クラーク
ドリアードの女王:崔由姫(チェ・ユフィ)
6月25日(火)18:30
キトリ:高田茜 → ヤスミン・ナグディ
バジル:スティーヴン・マックレー → マルセリーノ・サンベ
メルセデス:ラウラ・モレーラ
エスパーダ:平野亮一
ドリアードの女王:金子扶生
6月26日(水)18:30
キトリ:ナターリヤ・オシポワ
バジル:ワディム・ムンタギロフ
メルセデス:ベアトリス・スティックス=ブルネル
エスパーダ:ヴァレンティノ・ズッケッティ
ドリアードの女王:クレア・カルヴァート
マヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんの紹介
主役変更が生じた二組のペアで、アレクサンダー・キャンベルさんとヤスミン・ナグディさんについては、すでにプリンシパルの地位にあり、日本でもよく知られた存在かと思います。
ここでは、日本ではあまり知られていないと思われる、マヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんについて紹介したいと思います。
マヤラ・マグリさん
マヤラ・マグリ(Mayara Magri)
ファースト・ソリスト
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ出身。
2011年、ユース・アメリカ・グランプリ シニアの部グランプリ、ローザンヌ国際バレエコンクール2011スカラシップ賞とオーディエンス賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエ・スクールに入学しています。
2012年、英国ロイヤル・バレエ・スクールを卒業し、英国ロイヤル・バレエ団に入団。
2015年にファースト・アーティスト、2016年にソリスト、2018年にファースト・ソリストに昇格しました。
レパートリーには、アシュトン『二羽の鳩』ジプシー・ガール、『眠れる森の美女』元気の精/鷹揚の精、『ドン・キホーテ』メルセデスなど。
2019年には『ラ・バヤデール』ガムザッティ、『ドン・キホーテ』キトリにキャスティングされるなど、最も期待されるダンサーの一人です。
マヤラ・マグリさんは、ダーシー・バッセルさんが『ラ・バヤデール』でガムザッティを踊っているDVDを観て、ロイヤルに行きたいと思ったそうですが、そのガムザッティを自分が踊り感慨深かったのではないでしょうか。
2018年には、海外で活躍している日本人バレエダンサーを迎えて東京の新国立劇場にて上演された『バレエ・アステラス2018』において、アクリ瑠璃さんのパートナーとして『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥを披露しました。
当時、筆者はマヤラ・マグリさんの存在を全く知らずに舞台を鑑賞しましたが、バルコニーにたたずむ姿だけで魅了されてしまい、それ以来、動向に注目していたダンサーです。
踊りはもちろんですが、演技力、存在感も魅力です。
下の映像は、『マイヤリング(うたかたの恋)』ミッツィ・カスパー(ルドルフの馴染みの高級娼婦)役で出演しています。
なお、マルセリーノ・サンベさんも四人のハンガリー高官(ルドルフの友人)役の一人として出演しています。
Mayerling – Tavern scene (The Royal Ballet)
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
下の映像は、アレッタ・コリンズ新作のリハーサル映像です。
金子扶生さんも出演していますね!
Aletta Collins rehearses new ballet Blue Moon with an all-female cast (The Royal Ballet)
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
マルセリーノ・サンベさん
マルセリーノ・サンベ(Marcelino Sambé)
ファースト・ソリスト
ポルトガルのリスボン出身で、National Conservatory of Lisbon を経て、英国ロイヤル・バレエ アッパー・スクールを卒業し、2012/13 シーズンから英国ロイヤル・バレエ団に入団しました。
2014年にファースト・アーティスト、2015年にソリスト、2017年にファースト・ソリストに昇格しています。
レパートリーには、『リーズの結婚~ラ・フィーユ・マル・ガルデ~』のコーラス、『真夏の夜の夢』オベロン、『くるみ割り人形』ハンス・ピーター/くるみ割り人形、『ロメオとジュリエット』マキューシオ、『白鳥の湖』パ・ド・トロワなどがあります。
2019年には『ロメオとジュリエット』ロメオ、『ドン・キホーテ』バジルにキャスティングされ、次々と大役を射止めています。
高い技術を持ち、まるでゴムまりが弾むようなバネを生かした跳躍は大きな魅力です。
下の映像は、『ドン・キホーテ』のリハーサル映像です。
マルセリーノ・サンベさんが日本公演でペアを組むことになったヤスミン・ナグディさんと一緒にリハーサルに取り組んでいますが、サンベさんのピルエットがあまりにも素晴らしく、カルロス・アコスタさんらしき人が “Yes” と感嘆する声を挙げています!
The Royal Ballet rehearse the Act III Pas de deux Variations and Coda from Don Quixote
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
下の映像は、マリウス・プティパ関連の企画で、超絶技巧で場をさらう『ラ・バヤデール』のブロンズ・アイドルの踊り披露しています。
Ballet Evolved – Marius Petipa 1818-1910
(YouTube / Royal Opera House 公式チャンネル)
【6月7日追記】マルセリーノ・サンベさんは、2019/20シーズンからプリンシパルに昇格することが発表されました。
最後に
今回は、高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんの怪我による降板とキャスト変更のニュース、新たに主演が決定したマヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんを紹介しました。
キャスト変更で残念な思いをしたファンも多いかと思います。
ヤスミン・ナグディさんは怪我をした訳でもないのに出演する日程とパートナーが代わり、やりきれない思いのナグディさんファンもいらっしゃるかと思います。
この点は、ケヴィン・オヘア芸術監督も悩んだ末の大英断だったのだと思います。
ケヴィン・オヘア芸術監督が「芸術的に最善の解決策を提供しようと試みた」とコメントしているとおり、本場ロンドン公演でも好評だったマヤラ・マグリさんとアレクサンダー・キャンベルさんのペア、ヤスミン・ナグディさんとマルセリーノ・サンベさんのペアが素晴らしい舞台を披露してくれることを信じています。
このようなキャスト変更が決まった以上それを受け入れ、マヤラ・マグリさんとマルセリーノ・サンベさんという新たな才能の開花を応援したいですね。
筆者も高田 茜さんが英国ロイヤル・バレエ団の全幕舞台に主演する姿を楽しみにしていたので、ショックは大きいのですが、これも何かの縁だと思い気持ちを切り替えてヤスミン・ナグディさんとマルセリーノ・サンベさんのペアの演技を心底楽しみたいと思います。
高田 茜さんとスティーヴン・マックレーさんの二人の回復と復帰を祈るとともに、次回の英国ロイヤル・バレエ団日本公演で素晴らしい踊りを披露してくれることを待っています!
なお、6月29日、30日上演の「ロイヤル・ガラ」の配役については、調整が済み次第に発表されることになっています。
詳細は、公益財団法人日本舞台芸術振興会の公式サイトをご確認ください。
>>> 英国ロイヤル・バレエ団キャスト変更について、および「ドン・キホーテ」主要キャスト決定のお知らせ