新国立劇場バレエ団 2018/2019シーズン『ラ・バヤデール』が3月2日(土)に開幕しました。
新国立劇場バレエ団では2015年2月の上演以来、4年ぶりの上演です。
会場の様子、主要キャスト以外も含めたキャスト、感想など、新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』の鑑賞レポートをお届けします。
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』(2018/2019シーズン)開幕
初日の簡単な感想
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』の初日を飾った主要キャストは、ニキヤ:小野絢子、ソロル:福岡雄大、ガムザッティ:米沢 唯でした。
小野さんと福岡さんは新国立劇場バレエ団の看板ペアとしてすっかり定着していますが、ニキヤとソロルで共演するのは2011年1月の上演以来、8年ぶりになります。
前回2015年の上演では、小野さんはワディム・ムンタギロフさんとペアを組み、米沢さんが福岡さんとペアを組んでいました。
ニキヤを演じた小野絢子さんとソロルを演じた福岡雄大さんの表現が幕ごとに見事に演じ分けられており観る側も歓びの絶頂から苦悶、絶望へと導かれる舞台でした。
第1幕での逢瀬を楽しむ二人の歓びに溢れた表情は、音楽と見事に調和し、観ている者の気持ちをも高揚させました。
第2幕では、ニキヤを裏切ってしまったソロルの罪悪感や苦悩の表情と裏切られたニキヤの絶望感とが、第1幕の幸せの絶頂との対比により一層深い悲しみを感じさせます。
第3幕ではニキヤの表情が絶望の中で冥界へと旅立ったためか、どころ捉えどころがなく、それ故にソロルの悲しみは癒やしようのないものである感じさせました。
エンディングは、神の怒りにより寺院が崩壊し、重い傷を負ったソロルはニキヤに導かれながら息絶え、深い余韻を残すものでした。
シリアスにいろいろなことを考えさせるエンディングではありましたが、幕ごとに全く異なる雰囲気のニキヤを演じた小野絢子さん、勇壮な兵士を見事な超絶技巧を軽々と決め猛々しく演じる福岡雄大さん、そして二人のパートナーシップに感じ入る見事な舞台に非常に満足度の高い舞台鑑賞となりました。
この世界観は二人ならではのものだと感じます。
それ故、他のキャストがどのように演じるのか、楽しみがさらに増してきました。
みどこも満載で、何と言っても第3幕の影の王国は新国立劇場ならではの超一流のコール・ド・バレエが見事でした。
ニキヤの幻想が行進する名場面は、新国立劇場 オペラパレスの広い舞台を活かした3段のつづら折りとなっており、32名のダンサーがアラベスク・パンシェを繰り返してスロープを降りてくる様は圧巻です!
影の王国 第3ヴァリエーションの木村優里さんは、強靭なテクニックと優れた音楽性で見事な踊りを披露し、ガムザッティ役で出演する3月3日の公演に大きな期待を抱かせました。
『ラ・バヤデール』は古典の中ではそれほど人気があるとは言えないかと思います。
実際、それはチケット販売面にも現れているようですが、とても残念なことです。
今回の鑑賞で、『ラ・バヤデール』では演劇性の高さと古典の様式美が見事に融合した演目だと再認識し、一層好きになりました。
一人でも多くの方に観ていただきたい作品です!
会場の様子
来場者は他の演目と比べてお子様が少なかったように感じました。
やはり愛憎劇ということで親御さんがお子様の鑑賞には向かないとお考えなのでしょうか。
また、お子さんも「『ラ・バヤデール』が見たい」とは言い出さないのかも知れませんね。
会場でもお子様向けの企画などが用意されている訳ではなく、新国立劇場としても大人向けと考えているのかも知れません。
筆者の意見としてはもったいないと思います。
確かに『眠れる森の美女』や『シンデレラ』のような華やかでハッピーな演目ではありませんが、意外とお子様にも楽しめる見せ場がたくさんあります。
とくに第2幕 ラジャーの宮殿の中庭で開催されるガムザッティとソロルの婚約披露宴はさまざまな踊りが用意されています。
第3幕の影の王国でのバレエ・ブラン(白いバレエ)は、これぞコール・ド・バレエの真骨頂という名場面です。
お子様にとってストーリーは難しいかも知れませんが、バレエを習っているお子様であれば、ストーリーを抜きにしても食い入るように観るのではないかと思います。
一般的にはお子様向けと言える演目ではないかもしれませんが、本物の素晴らしさはきっとお子様の心にも響くのではないでしょうか。
【上演時間】
第1幕 14:00~14:40
(休憩25分)
第2幕 15:05~15:40
(休憩25分)
第3幕 16:05~16:45
新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』(2018/2019シーズン)のキャスト
キャストは公演リーフレットに掲載している内容をもとにしています。
変更などもあり得ますので、最新の情報は会場に掲示されるキャスト表をご確認ください。
3月2日(土)14:00
ニキヤ:小野絢子
ソロル:福岡雄大
ガムザッティ:米沢 唯
ハイ・ブラーミン(大僧正):菅野英男
ラジャー(王侯):貝川鐵夫
マグダヴェヤ:宇賀大将
トロラグヴァ:中家正博
アイヤ:今村美由起
ジャンペの踊り:広瀬 碧、朝枝尚子
黄金の神像:福田圭吾
つぼの踊り:柴山沙帆
アダジオ(ソロルの友人):木下嘉人、腹 健太
パ・ダクション ブルー・チュチュ:木村優里、寺井七海、細田千晶、廣田奈々
パ・ダクション ピンク・チュチュ:池田理沙子、奥田花純、五月女 遥、飯野萌子
影の第1ヴァリエーション:寺田亜沙子
影の第2ヴァリエーション:池田理沙子
影の第3ヴァリエーション:木村優里
3月3日(日)14:00
ニキヤ:米沢 唯
ソロル:井澤 駿
ガムザッティ:木村優里
ハイ・ブラーミン(大僧正):貝川鐵夫
ラジャー(王侯):中家正博
マグダヴェヤ:福田圭吾
トロラグヴァ:渡邊峻郁
アイヤ:中田実里
ジャンペの踊り:渡辺与布、益田裕子
黄金の神像:木下嘉人
つぼの踊り:原田舞子
アダジオ(ソロルの友人):速水渉悟
パ・ダクション ブルー・チュチュ:寺田亜沙子、寺井七海、玉井るい、廣田奈々
パ・ダクション ピンク・チュチュ:池田理沙子、飯野萌子、広瀬 碧、廣川みくり
影の第1ヴァリエーション:五月女 遥
影の第2ヴァリエーション:奥田花純
影の第3ヴァリエーション:細田千晶
3月9日(土)13:00
ニキヤ:柴山沙帆
ソロル:渡邊峻郁
ガムザッティ:渡辺与布
ハイ・ブラーミン(大僧正):菅野英男
ラジャー(王侯):貝川鐵夫
マグダヴェヤ:宇賀大将
トロラグヴァ:中家正博
アイヤ:今村美由起
ジャンペの踊り:広瀬 碧、朝枝尚子
黄金の神像:奥村康祐
つぼの踊り:玉井るい
アダジオ(ソロルの友人):木下嘉人、腹 健太
パ・ダクション ブルー・チュチュ:寺田亜沙子、木村優里、寺井七海、細田千晶、玉井るい、廣田奈々(交替出演)
パ・ダクション ピンク・チュチュ:池田理沙子、奥田花純、五月女 遥、飯野萌子、広瀬 碧、廣川みくり(交替出演)
影の第1ヴァリエーション:寺田亜沙子
影の第2ヴァリエーション:池田理沙子
影の第3ヴァリエーション:木村優里
3月9日(土)18:00
ニキヤ:小野絢子
ソロル:福岡雄大
ガムザッティ:米沢 唯
ハイ・ブラーミン(大僧正):菅野英男
ラジャー(王侯):貝川鐵夫
マグダヴェヤ:宇賀大将
トロラグヴァ:中家正博
アイヤ:今村美由起
ジャンペの踊り:広瀬 碧、朝枝尚子
黄金の神像:速水渉悟
つぼの踊り:柴山沙帆
アダジオ(ソロルの友人):木下嘉人、腹 健太
パ・ダクション ブルー・チュチュ:寺田亜沙子、木村優里、寺井七海、細田千晶、玉井るい、廣田奈々(交替出演)
パ・ダクション ピンク・チュチュ:池田理沙子、奥田花純、五月女 遥、飯野萌子、広瀬 碧、廣川みくり(交替出演)
影の第1ヴァリエーション:寺田亜沙子
影の第2ヴァリエーション:池田理沙子
影の第3ヴァリエーション:木村優里
3月10日(日)14:00
ニキヤ:米沢 唯
ソロル:井澤 駿
ガムザッティ:木村優里
ハイ・ブラーミン(大僧正):貝川鐵夫
ラジャー(王侯):中家正博
マグダヴェヤ:福田圭吾
トロラグヴァ:渡邊峻郁
アイヤ:中田実里
ジャンペの踊り:渡辺与布、益田裕子
黄金の神像:奥村康祐
つぼの踊り:原田舞子
アダジオ(ソロルの友人):速水渉悟
パ・ダクション ブルー・チュチュ:寺田亜沙子、木村優里、寺井七海、細田千晶、玉井るい、廣田奈々(交替出演)
パ・ダクション ピンク・チュチュ:池田理沙子、奥田花純、五月女 遥、飯野萌子、広瀬 碧、廣川みくり(交替出演)
影の第1ヴァリエーション:五月女 遥
影の第2ヴァリエーション:奥田花純
影の第3ヴァリエーション:細田千晶
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