新国立劇場バレエ団『ジゼル』鑑賞に向けての予習の続きです。
前回のブログ(新国立劇場バレエ団『ジゼル』鑑賞に向けての予習(2013年公演の復習))では、2013年上演の『ジゼル』において小野絢子さんと福岡雄大さんの名前をキャストの中に見つけることができないが、新国看板ペアが主演しないことは考えにくく、一体どういうことなのか、という問題提起で終わりました。
今回は、その事情について明らかにしたいと思います。
『ジゼル』(2013年)に小野さんと福岡さんが出演していない理由
2013年2月、東京初台の新国立劇場において『ジゼル』が上演されている頃、イギリスのバーミンガム・ヒポロドーム劇場では、重大な出来事がありました。
それはデヴィッド・ビントレー氏が創作した全幕バレエ『アラジン』の英国初演です。
そのときのことが、新国立劇場バレエ団の公式サイトに小野さんと福岡さんからのメッセージという形で掲載されています。
そのメッセージはこちら
『アラジン』は、当時、バーミンガム・ロイヤルバレエの芸術監督であり、新国の芸術参与(次期芸術監督予定者)であったデヴィッド・ビントレーさんが新国立劇場バレエ団のために振付け、2008年11月に新国立劇場で世界初演された記念すべき作品です。
個人的には、2008/2009シーズンのラインナップが発表された際、「バレエで『アラジン』・・・って、どうなんだろう?」と正直言ってかなり否定的に受け止めていました。
実際に舞台を観てみると、音楽、舞台装置、踊り、展開とそのどれもが非常に完成されたエンターテイメント作品で、一気に、個人的に好きな演目の上位に食い込んできました。
『アラジン』について書きたいことはたくさんありますが、今回の本題とは異なりますので、あらためてご紹介したいと思います。
話題を戻します。
2013年2月に英国初演されましたが、ちなみに、このとき初日の主役を踊られたのは、前回のブログにも登場した佐久間奈緒さんとセザール・モラレスさんのペアです。
英国におけるバレエ事情は日本と比べるとかなり異なるようで、このときは7キャストもあったようですが、何を隠そう、小野絢子さんと福岡雄大さんペアもこの公演にゲストダンサーとして出演していたのです!!!
今や新国のみならず日本を代表するプリマである小野絢子さんですが、彼女の主役デビューはこの『アラジン』なのですが、記念すべき英国初演の舞台に本家本元として招聘されたため、日本にはいなかったのです。
そのため、この二人は新国立劇場で上演する『ジゼル』には出演することができなかった訳です。
これが、小野絢子さんと福岡雄大さんが『ジゼル』に出演していないことの理由です。
(なお、『アラジン』世界初演時の主役は、本島美和さんと山本隆之さんのペアが務めています)
小野絢子さんと『ジゼル』
さて、小野さん自身が『ジゼル』に出演できなかったことをどのように思われているのでしょうか?
小野さんの考えは分かりませんが、非常に残念に思っていることは間違いないでしょう。
英国バーミンガム・ロイヤルバレエにおける客演は非常に名誉なことであり、英国における舞台出演ということもダンサー人生にとっては、とても得難い貴重な経験であったはずです。
しかし、多くのダンサーが踊りたい役として『ジゼル』を挙げていることから想像すると、小野さんもこの役はぜひ踊りたかったのではないでしょうか。
そう考えるのには他にも理由があります。
実は、小野さんは17才のときに出場したアデリン・ジェニー国際バレエコンクールで金賞を受賞しています。
なんと、そのとき踊られていたのが『ジゼル』でした!
コンクールで踊られた演目にはきっと思い入れがあるのではないでしょうか。
コンクールでは一部だけですが、いつか全幕を踊りたいと、夢見る少女は思っていたのではないでしょうか。
真相は分かりませんが、このときの踊りが非常に素晴らしく、すでにプロとして十分通用するのではないかと思えるほどのレベルです。
この映像を観ると2017年6月末に開幕する新国立劇場バレエ団での公演が、さらに待ち遠しくなってきました。