【鑑賞レポ】新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』2019/2020シーズン(その2)

新国立劇場バレエ団は、2019/2020シーズンのオープニングを飾る『ロメオとジュリエット』(全7公演)を10月19日(土)から27日(日)に新国立劇場オペラパレスにて上演し、演劇性に力を入れてきた大原永子芸術監督のラストシーズンが開幕しました。
この公演で、木村優里さん、井澤 駿さん、渡邊峻郁さんが待望のケネス・マクミラン『ロメオとジュリエット』初主演を果たしています。

《鑑賞レポート》
新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』2019/2020シーズン

3組のロメオとジュリエット

2019/2020シーズンの新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』は、円熟の域に入った小野絢子/福岡雄大ペア、ともに初役となった木村優里/井澤 駿ペア、円熟と初役のミックスとなった米沢 唯/渡邊峻郁ペアの3組が演じ、それぞれの『ロメオとジュリエット』の世界を描きました。
どのペアがもっとも本物のロメオとジュリエットっぽいのか、といった視点で見てしまいがちでしたが、今回の鑑賞を通して、それぞれの『ロメオとジュリエット』があって良いのだ、いかにロメオとして、また、ジュリエットとして生き切ったのかが問われるのではないか、と思うようになりました。
一言でそれぞれのペアの感想を述べると、小野/福岡ペアにはさすがだと唸らされ、木村/井澤ペアの舞台にはその世界の中に引き込まれ、米沢/渡邊ペアには舞台を通して重層的なストーリーの展開を感じさせられた気がします。
そう感じた内容や理由を詳細に述べるだけの力量が筆者にはないことを悔やみます。
また、それぞれのペアが伝えたかったことが何であったのかを汲み取る鑑賞眼も残念ながらありません。
しかし、全ての鑑賞が、それぞれのペアが作り上げる世界に引き込まれ、心を動かされた時間であり、何度も思い出しながらそれぞれの演技について思いを馳せる経験でした。
『ロメオとジュリエット』は、多くのダンサーが演じてみたい役として挙げていますが、鑑賞者としてはその魅力になかなか追いつけないもどかしさ感じるほど奥の深い作品であることを再確認する機会となりました。

注目キャスティング

■福岡雄大さんのティボルト
今回の公演では、『ロメオとジュリエット』の主役デビューを果たした木村さん、井澤さん、渡邊さんに注目が集まっていましたが、それに負けずに注目されたのがティボルトを演じる福岡雄大さんのキャスティングです。
筆者もこのキャスティングが発表されたとき、福岡さんがティボルトを演じる公演のチケットを購入していなければ追加購入しようと考えたほどです。(幸い購入していました)
福岡さん演じる
ティボルトが登場するや、その存在感は期待をはるかに超えるものだと感じました。
主役を演じる福岡さんと同じくらい、いや、それ以上に各段に格好良いのです。(*’▽’)
入団直後こそ主役以外の役を演じていましたが、最近では主役以外を演じる機会はほとんどなく、今回のようなキャスティングは多くのファンを楽しませてくれたように思います。
福岡さんのダンサーとしての器の大きさを感じ、活躍の場がさらに広がることを期待した好演でした。

■速水渉悟さんのベンヴォーリオ
ヒューストン・バレエを経て2018年に新国立劇場バレエ団にソリストとして入団した速水さんは、Youth America Grand Prix 2015 男性シニア部門で金賞、審査員特別賞、ローザンヌ国際バレエコンクールでファイナリストなど、実力は申し分なく、高度な技術が求められる『アラジン』のジーン役に抜擢されるなど、入団直後から活躍が期待されているダンサーです。
それだけに『ロメオとジュリエット』では、主要な役であるベンヴォーリオ役にキャスティングされたことを喜んだファンも多いはずです。
さらに、『ロメオとジュリエット』開幕前日の10月18日には、2020年5月に上演予定の『ドン・キホーテ』でキトリ演じる米沢唯さんを相手にバジル デビューを果たすことが発表され、入団2年目にして初主演が決まりました!

■その他の印象的なキャスト・演技
『ロメオとジュリエット』ではロメオとジュリエットの重要性が高くかつ出番も多いため、タイトルロールの二人に神経が集中しがちです。
鑑賞回数も増えるにつれ、今シーズンの鑑賞では、主役以外のキャストや演技についても目で追うことができる余裕が生まれてきました。
そのなかで個人的に印象的だったのが、キャピュレット夫人役の本島美和さん、ロザライン役の関 晶帆さん、ジュリエットの友人役の池田理沙子さんと渡辺与布さんです。

本島美和さんは、第1幕「舞踏家」冒頭における階段でのポーズだけですら、あたかも重厚な絵画のような圧倒的な美しさと存在感を放っていました。
本来であれば、ジュリエットを踊るダンサーですが、本島さんの唯一無二の存在感により舞台に深みを与えていることは新国立劇場バレエ団にとっての財産だと感じます。

関 晶帆さんの演じるロザラインも同様に存在感を示していました。
舞踏会で、踊るたびにパートナーが代わり「あらやだ!あんた誰?」といった様子や、ロミオと友人たちのちょっかいをあしらう姿の雰囲気に気が取られてしまい、思わず見入ってしまうほどでした。

ジュリエットの友人もジュリエットを踊っても良いくらいのダンサーが配される非常に贅沢な布陣でしたが、演技面でも個性が光り、とくに池田理沙子さんと渡辺与布さんの演技に注目しました。
池田理沙子さんは、ジュリエットを見つめるときの眼差しが本当に憧れに満ちた表情をしており、また、渡辺与布さんは晴れやかなジュリエットを見て喜びの感情が内から湧いてくる様が伝わってきて、観ている側の表情も思わず綻んできました。

また、どなただったのかは確認できませんでしたが、舞台下手でソード・ファイトの後、もんどりを打って倒れたダンサーの迫力に満ちた演技には圧倒されました。

『ロメオとジュリエット』は名もない登場人物も多く、その演技もとても重要だとされますが、目がいくつあっても足りません。
気づくことのできなかった名演もまだまだあったかと思うと、とても惜しい気がします。

新国立劇場バレエ団の新たな取り組み

キャンペーンの実施

『ロメオとジュリエット』公演初日の10月19日(土)からは、同じ振付家の作品で2020年2~3月に上演予定の『マノン』に関連したキャンペーンが始まりました。
Twitter新国立劇場バレエ団アカウント(@nntt_ballet)をフォローし、『マノン』公演への期待のコメントを「#新国マノン楽しみ」とともにツイートすると抽選で5名様に『マノン』主役ダンサー(米沢 唯、小野絢子、ワディム・ムンタギロフ、福岡雄大、井澤 駿)全員のサイン入りポスターをプレゼントするというものです。
『ロメオとジュリエット』公演中のオペラパレス ホワイエでもキャンペーンの告知が行われており、多くのファンが関心を示していました。
キャンペーンは11月10日(日)23:59までです。
興味のある方はお早めに!
→ 新国立劇場バレエ団『#新国マノン楽しみ』キャンペーン!【Twitter】

千穐楽公演閉幕後のステージを生配信

今回の公演期間中の10月23日にワールド・バレエ・デー2019があり、新国立劇場バレエ団も参加し、YouTubeやFacebookで『ロメオとジュリエット』のリハーサル風景もライブ配信されました。
その映像の最後で『ロメオとジュリエット』千穐楽公演閉幕後のステージをインスタグラムで生配信することが告知されましたが、このような試みは新国立劇場バレエ団としては恐らく初めてであり、楽しみにしていた方も多いかと思います。
そして、その生配信されている閉幕直後の舞台上において、ロメオを演じた渡邊峻郁さんのプリンシパル昇格が発表されたようです。
新国立劇場バレエ団の昇格等は、通例シーズン終了後に行っており、このタイミングでのプリンシパル昇格の発表は異例です。
渡邊さん本人をはじめ、多くの方にとって嬉しいサプライズになったのではないでしょうか。
ご本人も何が起きたのか理解できずに、発表直後はキョトンとしていたようです。(笑)
海外のバレエ団では舞台の終演後に舞台上でプリンシパル昇格を発表することもあり、最近では、ヒューストン・バレエの飯島望未が『シルヴィア』の終演後にプリンシパル昇格が発表されましたね。
「日本のバレエ団でもやれば良いのに」と思ってた方も多いかと思いますが、新国立劇場バレエ団でも良いことはどんどん取り入れていこうという姿勢が感じられて、嬉しい出来事でした。
配信後にも動画はストーリーズにてシェアされており、写真も連投されていますので、当日ご覧になれなかった方も是非確認してみてください。
→ 新国立劇場バレエ団公式インスタグラム

『ロメオとジュリエット』2019/2020シーズン 関連リンク

新国立劇場バレエ団の福岡雄大さんが語る『ロメオとジュリエット』の魅力《家庭画報.com》
日本のバレエ団ではここだけ!主要役を踊る3人が語る新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』《エンタメ特化型情報メディア スパイス

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新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』リハーサルレポート~3組の主役ダンサーの魅力に迫る~《おけぴ》
余りにも悲しく美しい恋の悲劇。新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』リハーサル《チケットぴあ》
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【動画レポート】新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」③〜小野絢子×福岡雄大リハーサル&インタビュー《バレエチャンネル》
大原永子舞踊芸術監督 ファイナルシーズン幕開け!新国立劇場バレエ 2019/2020シーズン『ロメオとジュリエット』10月19日開幕!《シアターテイメントNEWS》

『ロメオとジュリエット』2019/2020シーズン 関連動画

ダンサーが語る「ロメオとジュリエット」の魅力|新国立劇場バレエ団

新国立劇場バレエ団World Ballet Day 2019 LIVE

前半は、小野絢子/福岡雄大ペアによる『ロメオとジュリエット』から「バルコニー・パ・ド・ドゥ」のリハーサル映像です。
33:58頃からは『ロメオとジュリエット』初日の公演の様子と終演後の関係者パーティーの様子です。
後半は『くるみ割り人形』花のワルツのリハーサルです。

新国立劇場バレエ団公式Twitter

10月20日(日)18:30 公演から寝室のパ・ド・ドゥの舞台映像です。
ジュリエットは木村優里さんが 、ロメオは井澤 駿さんが演じています。

Twitter

新国立劇場バレエ団 今後の上演予定

『くるみ割り人形』北海道公演(札幌文化芸術劇場)

■日程:
2019年11月9日(土)14:00開演(13:15開場)
2019年11月10日(日)14:00開演(13:15開場)

■予定上演時間:約2時間15分
■会場:札幌文化芸術劇場 hitaru(札幌市営地下鉄東西線、南北線、東豊線「大通駅」30番出口から西2丁目地下歩道直結 徒歩約2分)

【公演情報】新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』北海道公演/札幌文化芸術劇場 hitaru(2019年11月)
北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruは、2019年11月9日(土)・10日(日)の二日間、新国立劇場バレエ団によるウエイン・イーグ...

新国立劇場 ダンス公演「中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』」

■日程:
2019年11月30日(土)14:00開演(13:30開場)
2019年12月1日(日)14:00開演(13:30開場)
■予定上演時間:約2時間(休憩含む)
■会場:新国立劇場 中劇場(京王新線・都営新宿線「初台駅」中央口直結)

新国立劇場ダンス「中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』」2019年11月30日・12月1日上演
新国立劇場ダンス公演「中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』」が、2019年11月30日(土)・12月1日(日)の二日間、新...

『くるみ割り人形』

■日程:2019年12月14日(土)~22日(日)(全9回公演)
■予定上演時間:約2時間15分(休憩含む)
■会場:新国立劇場 オペラパレス(京王新線・都営新宿線乗入「初台駅」中央口直結)

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(2019/2020シーズン)握手会開催も決定!
新国立劇場バレエ団は『くるみ割り人形』を2019年12月14日(土)から22日(日)まで、新国立劇場 オペラパレスにて上演します。年末恒例の主演ダンサー握手会の開催も早々に発表されました!

その他 川越市民文化祭 川越市バレエ連盟10周年記念公演 『ジゼル』(全幕)ほか

■日程:2019年11月16日(土)17:00開演(16:30開場)
■会場:ウェスタ川越 大ホール
■概要:
新国立劇場バレエ団の公演ではありませんが、プリンシパルの福岡雄大さんが演出・出演する川越市バレエ連盟10周年記念公演『ジゼル』(全幕)が、2019年11月16日(土)にウェスタ川越で上演されます。
新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子さんと福岡雄大さんが主演し、ヒラリオン役として東京バレエ団プリンシパルの柄本 弾さんが出演します。
また、新国立劇場バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、NBAバレエ団、スターダンサーズバレエ団などからも大勢のダンサーが出演するほか、公募オーディションで選ばれたダンサーも出演し、新国立劇場バレエ団ソリスト 五月女 遥さんがバレエミストレスを務めます。

福岡雄大演出『ジゼル』川越市バレエ連盟10周年記念公演/2019年11月16日(土)ウェスタ川越で上演
新国立劇場バレエ団 プリンシパルの福岡雄大さんが演出・出演する川越市バレエ連盟10周年記念公演『ジゼル』(全幕)が、2019年11月16日(...

【鑑賞レポ】新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』2019/2020シーズン開幕
新国立劇場バレエ団は、2019年10月19日(土)に『ロメオとジュリエット』を上演し、大原永子芸術監督にとってのラスト・シーズンとなる201...