『くるみ割り人形』新国立劇場バレエ団(2017.10.29)

新国立劇場バレエ団2017/2018シーズン『くるみ割り人形』2017年10月29日(日)の公演を観ました。

昨日の、今シーズン開幕公演であり、イーグリング版の初演の観劇に続き、本日の公演も観劇しました。

まだご覧になっていない方のためにネタバレにならないように注意しながら、個人的な感想のようなものを記したいと思います。

若干ですが、観劇のご参考になるかもしれません!?

本日のキーワードはこちらの3つです。

①ダンサーによって異なる細かい演出・印象

②コール・ド・バレエ

③私は観た!米沢唯のスーパテクニックにして超ファインプレーを!

順番に説明いたします。

①ダンサーによって異なる細かい演出・印象

同じ演目でも踊るダンサーによって演出が少し変わることがあります。

例えば、ピルエットなどの回転技の回転方向が右回転であったり、左回転であったりといったものです。
また、細かい演技等も変わることがあります。

バレエの制作現場のことは分かりませんが、例えばピルエットの回転方向が人によって逆であることはよくありますが、演技などは、リハーサルで偶然出た動きが、そちらの方が良いと採用されたり、といったこともあると思います。

今回の新制作『くるみ割り』についても初日(10/28)と二日目(10/29)で若干異なるところに気づきました。

いくつか挙げると、気球からの降り方が小野さんと米沢さんでは異なりました。
『くるみ』で気球?と思わる方のためにネタはバラしませんので、劇場でご確認を!

渡邊峻郁さん演じる「ねずみの王様」のカーテンコールも初日の奥村康祐さんとは異なりました。
渡邊さんはまじめそうな方だと思っておりましたが、とてもお茶目なカーテンコールでの登場でした。
「ねずみの王様」の全体的な踊り・雰囲気もやはり奥村さん演じる「ねずみの王様」とは異なる印象でした。
こうしたキャストによって異なる細かい違いを観るのも舞台鑑賞の楽しみだと思います。

②コール・ド・バレエ

ご存じの通り、新国のコール・ド・バレエは世界に誇るべき美しさです。

「雪の国」と「花のワルツ」の群舞は非常に有名ですが、今回の新制作によるものも非常に素晴らしい出来に仕上がっています。
とくにフォーメーションの変化が抜群に美しく、感動的ですらあります。

初日は1階席から、二日目は2階席から鑑賞しましたが、やはり2階席からの方が、フォーメーションの変化の美しさを堪能できます。
もちろん、「雪の国」の一糸乱れぬ群舞であれば1階席のセンターブロック、なかでも左右対称に観ることができる中心寄りの席がもっとも美しく見えるでしょうが、2階席以上の視点の高くなる席でなければ見えない世界もあります。
もちろん、個人の好みの問題もありますが、この作品では2階席をお勧めします。

また、一糸乱れぬ動きの他にも、飛行機の編隊の陣形変化のように時間差で陣形を変化させる様子なども美しく、ウエイン・イーグリングさんの振付家としての才能を感じました。
この群舞は本当に特筆すべき素晴らしさですが、忘れてはいけないのは、それを踊る新国ダンサーの実力です!!!

③私は観た!米沢唯のスーパテクニックにして超ファインプレーを!

第2幕が始まったあたりで、井澤駿さん演じる「くるみ割り人形」の帽子が後ろの方にずれていることに気づきました。
踊りのなかでずれたものだと思いますが、軍隊の帽子ですから目深に被らないと様になりません。後ろの方にずれていると間抜けな感じがしてしまいます。また、激しい踊りのなかで落としてしまう可能性も出てきます。

そんなことを思いながらも踊りに集中して観ようと気持ちを取り直して踊りに注意の焦点を戻しました。

そのとき、私は目撃者となったのです。

米沢唯さんのスーパーテクニックを!超ファインプレーを!!!

2幕の冒頭はクララと王子(くるみ割り人形)の二人の他にドロッセルマイヤーも加わり、3人での掛け合いになります。

クララ役の米沢さんを井澤さん演じるくるみ割り人形と貝川鐵夫さん演じるドロッセルマイヤーの二人が抱える場面があります。
そのときクララは二人の方に腕を回すようにして支えられているのですが、そのくるみ割り人形の肩に回した手でさり気なく帽子の位置を直したのです!

あの激しい流れの中で、帽子のずれに気づき、踊りの自然な動きを利用して、さり気なく直したのです。

これは、角度的に、私の席からは偶然見えてしまったのだと思いますが、他の観客は誰一人として気づかなかったと思います。(思い上がり?)

恐るべし米沢唯!!!

少しだけ表現が大げさになりましたが、これはスーパーファインプレーだったと思います。

開場以来の「名プレー・珍プレー集」を選んだら上位に来ること間違いないと思います。
このような素晴らしい場面に立ち会えたことを感謝するとともに、米沢唯さんというダンサーのただならぬ実力を再認識しました。

その後、くるみ割り人形がりりしさを取り戻したのは言うまでもありません。

少しだけ、ふざけた内容になってしまいましたが、2日目の舞台も初日と比べて引けを取らないくらい素晴らしい舞台であったことを最後に記したいと思います。