【鑑賞レポ】英国ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(英国ロヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19)

英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』(英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19)の上映が、2019年8月23日(金)から全国のTOHOシネマズなどで始まりました。

シーズン・ラストを飾ったヤスミン・ナグディさんとマシュー・ボールさんの若いプリンシパル・ペアによる素晴らしい舞台を紹介します!

英国ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(英国ロヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19)鑑賞レポート

感想

主演は、ヤスミン・ナグディさんとマシュー・ボールさんの英国ロイヤル・バレエ団が誇る若手プリンシパルのペアです。
ヤスミン・ナグディさんは今年の日本公演以来の大ファンになり、マシュー・ボールさんは人気ダンサーにも関わらずきちんと鑑賞したことがないダンサーだったので、とても楽しみにしていました!

ヤスミン・ナグディさんは技術的に申し分なく本当に美しいラインを描くダンサーです。
初めて観たマシュー・ボールさんは
しなやかな身体を滑らかにコントロールし、予想以上に上手いダンサーだという印象でした。
比較的控えめなロメオの印象で、観る側としては、より自然に舞台の世界に入り込めた気がします。
二人は、踊りの質が似ており、パートナリングも申し分ありません。
とても相性が良い印象で、これからの成長がとても楽しみです。

舞台を鑑賞して、踊りは予想以上に、しかも、かなり上手いと思いました。
しかし、面白いことに、最も印象に残っているのは、ジュリエットが肩で息をしているシーンやベッドに腰掛け思案に暮れているシーン、ロミオの表情など、踊りとは関係ないシーンでした。
自分でもバレエを観ているはずなのに踊っていないところで心を動かされていることに気づき、いつもとは異なるバレエ鑑賞になったことに驚きました。
これがドラマティック・バレエの醍醐味なのでしょうか。
ドラマティック・バレエというものを少しだけ理解しはじめることができたのかも知れません。
「何を語りたいのか、何を伝えたいのか」といった内容のことを指導者がダンサーに対して語る場面は多いと思います。
そういった言葉を本当に理解することは難しいかと思いますが、この舞台を観て、少しだけ近づけた気がします。

このような鑑賞体験で、いつにも増して感想が支離滅裂になっておりますが、とても強く心を動かされたことは間違いありません。
鑑賞後、しばらくの間、放心状態にも似た状態でした。
主なテーマは若い二人の短くも熱い恋だと思いますが、そのほかにもいろいろと考えさせられることがあったように感じます。
「何について考えさせられたか」という思考内容よりも、心の奥まで何かが響いてきたという現象が不思議でした。

この作品は主役の二人以外にも多くの出演者が登場し、それぞれ素晴らしい演技で舞台を盛り立てました。
一例を挙げれば、冒頭にロザライン役で登場した金子扶生さんの存在感には驚きました。
歩くだけでも高貴で気品に溢れた様子は、演劇の国である英国でも称賛されているのではないでしょうか。

鑑賞するかどうかを決めかねている人には是非とも鑑賞することをお勧めします!
バレエの舞台としては非常に高い完成度であるうえに、心に訴える何かがあることがその理由です。
原作、音楽、振付、演技・踊りの全てが高次元で調和し心に響いた舞台でした。

解説・インタビュー

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」のお楽しみの一つが開幕前、幕間、終演後に上映される解説とインタビュー映像ですね!
お馴染み英国ロイヤル・バレエ団元プリンシパルのダーシー・バッセルさんの登場を楽しみにしている人も多いと思います。

今回は、ケヴィン・オヘア芸術監督のインタビューと主役らが作品を語る映像、舞台で使用される剣などを制作している小道具さんのインタビューと決闘シーンのリハーサル映像、マクミランミューズであり伝説的ダンサーのアレッサンドラ・フェリさんの生インタビューとレスリー・コリアさんが主役の二人を指導する現場を訪ねる映像がありました!
なんと、アレッサンドラ・フェリさんは19歳で初めてジュリエットを踊り、最後に踊ったのは54歳のときだそうです!
ケネス・マクミランさんとのエピソードを語っていました。

下の映像は、振付家ケネス・マクミランさんの妻デボラ・マクミラン(Deborah MacMillan)さん、ロミオ役のマシュー・ボールさん、ジュリエット役のヤスミン・ナグディさん、ティボルト役のギャリー・エイヴィスさんが作品について語る映像です。

Why The Royal Ballet love performing Romeo and Juliet

Why The Royal Ballet love performing Romeo and Juliet

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

ロミオ役のマシュー・ボールさんとティボルト役のギャリー・エイヴィスさんが剣での決闘シーン(Sword fighting)について語ります。
かなりハードでリハーサル後には剣を握っている手が固まってしまい反対の手で広げなければならないほどだそうです。
順番を覚えるのも大変なだけに、上手くいったときには “YES!” と言いたくなるそうです。(´▽`)

Sword fighting in Romeo and Juliet (The Royal Ballet)

Sword fighting in Romeo and Juliet (The Royal Ballet)

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

ケネス・マクミランさんからも直接指導を受けた英国ロイヤル・バレエ団元プリンシパルのレスリー・コリア(Lesley Collier)さんが主役二人のリハーサルを指導している現場にダーシー・バッセルさんが訪れます。
ジュリエット役について聞かれた
ヤスミン・ナグディさんは「『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』のようにクレイジー・テクニック(超絶技巧)(笑)はないのでバランスを心配したりすることはない反面、ストーリーを物語ることが大切」と答えています。
吉田 都さんや高田 茜さんも指導しているレスリー・コリアさんですが、年齢を重ねてもとてもキュートですね!

Darcey Bussell joins Yasmine Naghdi for a rehearsal of Romeo and Juliet (The Royal Ballet)

Darcey Bussell joins Yasmine Naghdi for a rehearsal of Romeo and Juliet (The Royal Ballet)

(YouTube / Royal Opera House  公式チャンネル)

公演概要

公演概要

英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』
The Royal Ballet / Romeo and Juliet
■日程:2019年6月11日(火)19:30
■会場:ロイヤル・オペラ・ハウス メイン・ステージ
■振付:ケネス・マクミラン Kenneth MacMillan

■音楽:セルゲイ・プロコフィエフ Sergey Prokofiev
■舞台美術:ニコラス・ジョージアディス Nicholas Georgiadis
■照明:ジョン・B・リード John B. Read
■指揮:パヴェル・ソロキン Pavel Sorokin

■管弦楽:英国ロイヤル・オペラハウス管弦楽団 Orchestra of the Royal Opera House

出演

◆ジュリエット Juliet:ヤスミン・ナグディ Yasmine Naghdi
◆ロミオ Romeo:マシュー・ボール Matthew Ball
◆マキューシオ Mercutio:ヴァレンティノ・ズケッティ Valentino Zucchetti
◆ティボルト Tybalt:ギャリー・エイヴィス Gary Avis
◆ベンヴォーリオ Benvolio:ベンジャミン・エラ Benjamin Ella
◆パリス Paris:ニコル・エドモンズ Nicol Edmonds
◆キャピュレット卿 Lord Capulet:クリストファー・サウンダース Christopher Saunders
◆キャピュレット夫人 Lady Capulet:クリスティナ・アレスティス Christina Arestis
◆ヴェローナ大公(エスカラス) Escalus:トーマス・ホワイトヘッド Thomas Whitehead
◆ロザライン Rosaline:金子扶生 Fumi Kaneko
◆乳母 Nurse:クリステン・マクナリー Kristen McNally
◆ローレンス神父 Friar Laurence:ジョナサン・ハウエルズ Jonathan Howells
◆モンタギュー卿 Lord Montague:ジョナサン・ハウエルズ Jonathan Howells
◆モンタギュー夫人 Lady Montague:タラブリギットバフナニ Tara-Brigitte Bhavnani
◆ジュリエットの友人 Juliet’s Friends:
 レティシア・ディアス Leticia Dias
 イザベラ・ガスパリーニ Isabella Gasparini
 ミーガン・グレース・ヒンキス Meaghan Grace Hinkis
 桂 千里 Chisato Katsura
 アナ・ローズ・オサリバン Anna Rose O’Sullivan
 ジェンマ・ピッチリ―=ゲイル Gemma Pitchley-Gale
◆三人の娼婦 Harlots:
 ベアトリス・スティクス=ブルネル Beatriz Stix-Brunell
 ミカ・ブラッドベリ Mica Bradbury
 ロマニー・パジャック Romany Pajdak
◆マンドリン・ダンス Mandolin dancers:
 マルセリーノ・サンベ Marcelino Sambé
 アクリ・瑠嘉 Luca Acri
 テオ・ディブロー Téo Dubreuil
 デヴィッド・ユーズ David Yudes
 トーマス・モック Tomas Mock
 カルヴィン・リチャードソン Calvin Richardson

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/20」ラインナップ発表!バレエ6演目を紹介!
【5/7追記】5月4日の緊急事態宣言の延長を受け、映画館の休館が続き、5月以降に上映が予定されていた作品の公開が延期となりました。詳細は公開...