新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』5月12日の感想

新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』 5月12日の公演は、唯一の平日開催ということで、開演時間は18:30です。
新国の平日夜の公演は19:00開演ということが多いのですが、『眠り』は休憩時間も合わせると3時間を超えるため、18:30開演なのでしょう。
仕事帰りの方にとってはギリギリ間に合うかどうか、というような時間で、急な残業が入らないかと肝を冷やした人も少なくないのではないでしょうか。
そういったことで、劇場に入ると、ホワイエ等のベンチに腰掛けて食事をしている方が多かったように思います。

さて、本日は、いよいよ、木村優里さんのオーロラ姫デビューの日です。木村さんのファンで終業時間が遅くて間に合わずに涙を飲んだ方も少なくないことと思います。(/ω\)

木村さんのオーロラ姫は当然のことながら素晴らしい踊りでした。ものすごい汗をかかれていたことが印象的で、オーロラ姫を踊ることの大変さを垣間見た気がします。あの木村さんでも簡単なことではないんだな、なんだか少し安堵した気持ちですが、私は木村さんのことを何者だと思っているのでしょうか?(^^♪オーロラ姫を簡単に踊れるダンサーなんてどこにもいる訳ないことは少し考えればわかることなのに。

第1幕で老婆に変装したカラボスから受け取った花束に隠されていた糸巻き(?)を落としてしまうアクシデントもありましたが、そこは慌てることなくフォローし、その後の踊りへと繋げられていました。
ダンサーは舞台で育つと言いますが、こういった経験もそうなのだと思います。
以前、『ドン・キホーテ』に出演していたキューピッドの子役の一人が小道具の矢を落としてしまったことがありましたが、そのとき、落とされた矢を拾って上手い具合に処理された吉本泰久さんのことを思い出しました。詳細は覚えていませんが、頃合いを見計らって自然なタイミングでさり気なく矢を拾い上げ、自然な感じで矢を自分の小道具に仕立て直し、悪戯するような素振りで演技をされていたように記憶しています。さすがはベテランダンサーの余裕だと感じ入ったことを覚えています。

木村さんに対する私の印象は、勝手ながら天才肌のクールな方というものでした。しかし、今回のオーロラ姫を拝見して変わりました。各国の王子に手を取られて片足ポアントでバランスを取る際、真剣な表情でバランスを探り、王子の顔を見つめて本当に自然な笑顔をされているところが、初々しい16才のオーロラ姫を感じさせました。本人も「舞台ごとに成長する姿をお見せできる様…」と言われるように、発展途上でまだまだ伸びしろのあるダンサーだと思いますし、まだまだ成長していくことを期待させるダンサーだと感じます。

クールな印象は、研修所を修了したばかりでバレエ団入団前にもかかわらず、いきなり『白鳥』のルースカヤに抜擢され、新人らしからぬ素晴らしい踊りを見せつけられたところからきているのかもしれません。踊りの技術的な完成度の高さばかりに気を取られていましたが、演技力や役作りにおいても魅力的なダンサーであることを今さらながら今回の公演で再認識しました。
そういえば、2月の『コッペリア』でもクールな印象を覆す役作りに驚いたことを思い出しました。6月の『ジゼル』でも主役が決まっています。ジゼルではどのように演技されるのか、今から楽しみになってきました。