新国立劇場バレエ団2018/2019シーズンのオープニングを飾った『不思議の国のアリス』は、11月11日(日)に終演しました。
英国ロイヤル・バレエ団が初演し、世界中の有力カンパニーがこぞってレパートリー化している話題作ということもあり、筆者もとても楽しみにしていたプロダクションだったため、終演した今、喪失感を抱えています。
今回は、新国立劇場バレエ団の『不思議の国のアリス』初演について振り返ってみたいと思います。
新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』の感想
新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』の感想
新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』の鑑賞に先立ち、飲み込みの悪い筆者は予習を兼ねて英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズンで上映された映像を鑑賞しました。
一度だけの鑑賞ではよく分からず、新国立劇場バレエ団の初演に向けてさらなる予習の必要性を痛感しました。
原作を読み、関連動画や記事を観たり、公開リハーサルに足を運んだりして少しでも作品を理解しようと努めました。
その甲斐もあり、新国立劇場バレエ団で上演したときには、内容を把握したうえで気持ち的にも余裕を持って鑑賞することができました。
しかし、多くの場面とキャラクターが登場し、「目がいくつあっても足りない!」という思いがありました。
この点は多くの方が同じ感想を持たれたのではないでしょうか。
作品全体の感想としては、現代的でエンターテイメント性の高い作品でありながら、原作の世界を上手く表現していて、素直に楽しい作品だと感じました。
場面が多いだけに舞台装置の種類も多いでしょうし、それを適切に展開するスタッフの方たちの苦労も計り知れなかったと思います。
また、どの衣装も素晴らしく、不思議の国へと自然に誘ってくれました。
そして、それらを最大限に引き立たせたのはジョビー・タルボットによる音楽ではないでしょうか。
打楽器を多用した特徴的な音楽は、それぞれのキャラクターに命を吹き込んだように感じます。
また、原題『Alice’s Adventures in Wonderland』に「冒険」とあるように、冒険をイメージさせる勇壮な音楽もワクワクさせてくれました。
キャスティング面では、全8回公演にも関わらず、主要な役ががダブルキャストかトリプルキャストしかなかったのはもったいない気がします。
かなり難しい役であるように見受けられましたので、筆者としては、全員が初役という状況では十分な指導ができないという考えからキャストを絞り込んだのではないかと推察しました。
この考えが正しければ、今回二組だった主役ペアは、再演時には四組くらいになってもおかしくないと思っています。
しかし、一人のダンサーがいくつもの役をこなさなければいけない作品ですので、ダンサーのやりくりが難しいのも事実でしょう。
再演はいつ?
新国立劇場バレエ団による『不思議の国のアリス』初演は大成功だったといえるでしょう。
チケットは完売し、新国立劇場バレエ団公式サイトでは終演後に「満員御礼」のコメントを出しているほどです。
筆者が新国のバレエを鑑賞するようになってから約10年が過ぎましたが、このようなことは今までなかったように記憶しています。
今回、チケット完売により鑑賞できなかった方も少なくないことからも早期の再演が望まれます。
また、出演したダンサーにも非常に好評だったようで、ダンサーも再演を心待ちにしているようです。
新国立劇場バレエ団が昨シーズン(2017/2018シーズン)に新制作したウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』は、2017年、2018年と2年連続で上演されます。
このことを考えれば、来シーズン(2019/2020シーズン)の再演も十分にありえると思います。
新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』関連イベント
世界的な大ヒット作であるクリストファー・ウィールドン『不思議の国のアリス』を新国立劇場バレエ団で上演するにあたり、新国立劇場としてもPR活動に力が入ったのではないでしょうか。
9月には新国立劇場の中劇場にて公開リハーサルを行いました。
また、上演期間中には、来場者の気分を盛り上げるために、さまざまな取り組みが見られました。
『不思議の国のアリス』における重要なモチーフであるトランプを有効活用して劇場内を装飾したり、新国ダンサーの舞台写真を使ったトランプを制作・販売したりしていました。
上記に加え、巨大ポスターを掲示したり、撮影スポットを設置したり、舞台の模型を展示したりするなど、インスタ映え・SNS映えする装飾も用意され、会場の気分を盛り上げることや集客面で非常に効果的だったのではないでしょうか。
とは言っても、チケットは開幕前に完売でしたが・・・劇場側としては嬉しい悲鳴だったのでは。
11月10日(土)の公演(おそらくソワレ公演)には、アルゼンチン、欧州連合、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、トルコ、フランス、メキシコなど15ヵ国の大使、公使らが鑑賞されたそうです。
大使、公使らの鑑賞は珍しいことではありませんが、15ヵ国というのは非常に多い数字ではないでしょうか。
それだけ、関心が高かったものと思います。
《Drink Me》《Eat Me》など 『不思議の国のアリス』関連グッズ
『不思議の国のアリス』上演期間中、オペラパレスの入口近くの出店では、バレエ『不思議の国のアリス』にも登場する《Drink Me》《Eat Me》などの『不思議の国のアリス』関連グッズが販売されており、連日、売り切れるほどの人気でした!
販売されていた《Drink Me ミニサイダー》、《Eat Me クッキー》などは、「水曜日のアリス」の商品でした。
「水曜日のアリス」は、福岡(福岡市中央区大名)、東京(渋谷区神宮前)、大阪(大阪市中央区西心斎橋)、愛知(名古屋市中区大須)の四都市に店舗があります。
お住まいの近くにない場合にもオンラインショップもご利用いただけますので便利です。
劇場で買いそびれた人は是非!
詳細は水曜日のアリスの公式サイトをご確認ください。
>>> http://www.aliceonwednesday.jp/
クリストファー・ウィールドン『不思議の国のアリス』を観た人にお薦めの映像、本など
映像作品(DVD・Blu-ray など)
クリストファー・ウィールドン『不思議の国のアリス』の映像としては、DVD・Blu-rayが発売されています。
初演時の全二幕のバージョンと現在上演されている全三幕のバージョンがあります。(新国で上演されたのは全三幕)
初演時のジャックはセルゲイ・ポルーニンがキャスティングされており貴重な映像です。
【全二幕】(収録:2011年3月)
アリス:ローレン・カスバートソン
庭師ジャック/ハートのジャック:セルゲイ・ポルーニン
ルイス・キャロル/白ウサギ:エドワード・ワトソン
アリスの母/ハートの女王:ゼナイダ・ヤノウスキー
アリスの父/ハートの王:クリストファー・サンダース
手品師/マッドハッター:スティーヴン・マクレイ
【全三幕】(収録:2017年9・10月)
アリス:ローレン・カスバートソン
庭師ジャック/ハートのジャック:フェデリコ・ボネッリ
ルイス・キャロル/白ウサギ:ジェームズ・ヘイ
アリスの母/ハートの女王:ラウラ・モレーラ
アリスの父/ハートの王:クリストファー・サンダース
手品師/マッドハッター:スティーヴン・マクレイ
原作(翻訳、英語学習用など)
鑑賞にあたっては、原作を知っていた方が舞台をより楽しめることは間違いないと感じました。
筆者は飲み込みが悪いため、事前に英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズンでの鑑賞や原作などで予習しましたが、それらが有益であったことを実感しています。
また、原作は「ことば遊び」を多用しているため、原作の理解には英語の知識はかかせません。
バレエの舞台鑑賞にはそこまでの知識は必要ないでしょうが、バレエの舞台をより深く理解するには、英語の知識があったに越した事はありません。
英語の勉強にもなる参考書、CDブック、DVDブックも数多く発売されていますので、関心を持たれた方は英語学習に挑戦してみてはいかがでしょうか。
次に代表的なものを少し挙げたいと思います。
◆『ふしぎの国のアリス』を観るだけで英語の基本が身につくDVDブック (映画観るだけマスターシリーズ)
◆『不思議の国のアリス』で英語を学ぶ―完全新訳 (CDブック)
◆「不思議の国のアリス」を英語で読む (ちくま学芸文庫)
◆不思議の国のアリス (角川文庫)
クリストファー・ウィールドン『不思議の国のアリス』を観た人にお薦めする今後のイベントなど
【TV放送】新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』特集(WOWOW)
2018年11月18日(日)16:15から、WOWOWの『バレエ☆プルミエール # 13』において新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』特集が放送されます。
大貫勇輔さんと本田望結さんが進行役を務める番組では、公演の様子に加えて、米沢 唯さん、渡邊峻郁さん、本島美和さん、奥村康祐さんら主要キャストのトークやリハーサル映像が放送されるようですよ。
【放送日】
2018年11月18日(日)16:15~
2018年12月4日(火)深夜3:40~
放送時間:約58分
共同制作したオーストラリア・バレエでの再演
新国立劇場バレエ団と共同制作したオーストラリア・バレエでは、既に2019シーズンでの再演が決まっています。
2019年2月25日(月)~3月2日(土)はブリスベンにて、6月8日(土)~22日(土)はメルボルンにて上演予定です。
オーストラリア在住もしくは旅行の予定がある方は要チェックです!
オーストラリア・バレエ公式サイト
>>> https://australianballet.com.au/the-ballets/alices-adventures-in-wonderland
ウィールドン演出・振付ミュージカル『パリのアメリカ人』(劇団四季上演)
バレエ『不思議の国のアリス』を振り付けたクリストファー・ウィールドンさんの演出・振付作品であるミュージカル『パリのアメリカ人』が2019年1月から劇団四季により上演されます。
バレエ『不思議の国のアリス』を観て、ウィールドンさんの作品に関心を持たれた方は、トニー賞振付家賞を受賞した『パリのアメリカ人』を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
新国立劇場バレエ団 次回公演
『不思議の国のアリス』は閉幕したばかりですが、バレエ団には次の公演が待っています。
2018年11月23日(金・祝)、24日(土)には、北海道「札幌文化芸術劇場 hitaru」にて小野絢子さんと福岡雄大さん主演による『白鳥の湖』の上演があります。
こちらのチケットも早々に完売したようで、残念なが、当日券の販売もないそうです。
本拠地・新国立劇場での上演は、12月16日(日)に開幕する『くるみ割り人形』です。
『くるみ割り人形』では、主演ダンサーの握手会の開催も予定されおり、『不思議の国のアリス』上演期間中のホワイエにも掲示されていました。
新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』は昨シーズン(2017/2018シーズン)に新制作されたウエイン・イーグリング版です。
一年間、頑張ったご褒美に極上にバレエ鑑賞はいかがでしょうか!